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東リ不正会計、子会社リックで1.1億円超の損失発覚!赤字隠しの「資金還流」その巧妙な手口とは

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東リのコーポレートサイト
東リのコーポレートサイトより

老舗インテリアメーカーを襲った身内の不祥事。名門・東リの連結子会社で発覚した不正会計は、現場社員による孤独な「赤字隠し」から始まった。

 

12月12日、東証スタンダード市場に上場するインテリア業界の雄、東リ株式会社から衝撃的なリリースが発表された。同社の連結子会社である「リック株式会社」において、従業員による不正会計行為が発覚し、社内調査の結果が公表されたのだ。

損失総額は1億1,600万円にも上るというこの事件。一体、堅実な経営で知られる東リグループの内部で何が起きていたのか。その全貌と、明らかになった「自転車操業」の実態に迫る。

東証スタンダード上場「東リ」と子会社「リック」の関係性

 

まずは今回の舞台となった企業について整理しておこう。親会社である東リ株式会社は、兵庫県伊丹市に本社を構えるインテリアの総合メーカーだ。クッションフロアやタイルカーペット、壁紙といった内装材の分野で高いシェアを誇り、創業から100年を超える歴史を持つ老舗企業として知られている。

一方、今回不正の舞台となったリック株式会社は、その東リの連結子会社である。同社はインテリア資材の卸売や、内装仕上工事の管理・施工を担う企業であり、東リグループにおいて製品を市場に届け、実際に現場へ納入・施工する実働部隊としての役割を果たしている。いわばメーカーの「手足」となる重要なポジションにある会社だ。今回の不祥事は、まさにその現場の最前線で発生した。

 

架空取引と資金還流…発覚した「1億円赤字隠し」のカラクリ

公表された調査報告書によると、不正に手を染めたのはリック社の従業員一人であった。その手口は、現場特有のプレッシャーから逃れるための、泥沼のような隠蔽工作だったと言える。

事の発端は2023年3月期にさかのぼる。当該従業員は、自身が担当する工事取引において採算割れ、つまり赤字が見込まれる事態に直面した。通常であれば会社に報告し対策を練るべき場面だが、この従業員が選んだのは禁断の「数字の操作」だった。

具体的には、実際に得意先と合意した金額よりも過大な金額で売上を計上し、帳簿上の見かけを黒字に装ったのである。しかし、当然ながら売上を水増しすれば、あとで入金される金額との間に差額が生じ、いつかはバレてしまう。そこでこの従業員が行ったのが、施工外注先を巻き込んだ「資金の還流」だった。

従業員は外注先に対し、架空の発注や金額を水増しした支払いを行い、会社から現金を流出させる。そして、その資金を再び還流させ、水増しした売上金の回収に見せかけて穴埋めを行っていたのだ。この操作を繰り返すことで、見かけ上の黒字を維持し続けていたが、結果として会社に与えた損失は1億1,600万円にまで膨れ上がってしまった

 

なぜ防げなかったのか?内部統制の甘さと「懲戒解雇」の結末

なぜ、これほど大規模な不正が長期間にわたって見過ごされてきたのか。調査報告書はその原因として、現場管理の杜撰さとチェック体制の形骸化を挙げている。

当該部署では、上長による業務のチェックや承認作業が緩慢であり、従業員の行動を監視・牽制する機能が十分に働いていなかったという。見積もりの段階からどんぶり勘定で赤字受注を繰り返し、それを隠すために帳票類を偽造する。そんな従業員の暴走を、組織として止めることができなかったのが実情だ

会社側の対応は迅速かつ厳正だった。調査の結果、組織的な関与や横領の事実はなかったものの、事実関係が確定したことを受け、東リはこの従業員を懲戒解雇処分とした。さらに、管理責任を問い、リック社の取締役や関係者に対しても減給などの処分を下している

 

業績への影響は軽微も、問われる「再発防止」への本気度

投資家や取引先が最も気にするのは、今後の業績への影響だろう。この点について東リは、2026年3月期第2四半期の決算において、すでに売上総利益の修正として1億1,500万円を織り込み済みであると説明している。そのため、今回の調査完了による通期業績への追加的な影響は軽微であるという

東リは今後、売掛金残高が多い営業担当者への重点的なヒアリングや、業務プロセスの再点検など、内部統制の再整備を進めるとしている。老舗メーカーとして築き上げてきた信頼を取り戻すことができるか。再発防止策の実効性が、今後厳しく問われることになるだろう。

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寒天 かんたろう

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ライター歴26年。月刊誌記者を経て独立。企業経営者取材や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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