
前市長の失職に伴う静岡県伊東市長選は14日、投開票が行われ、無所属新人で元市議の杉本憲也氏(43)が、前職の田久保真紀氏(55)や元職の小野達也氏(62)ら過去最多となる9人による乱戦を制し、初当選を確実にした。
一方、選挙戦のきっかけとなった学歴詐称問題で失職し、出直し選に臨んだ田久保氏は落選が決まった。
「行政書士」の知識と「子育て支援」で支持拡大
初当選した杉本氏は伊東市出身の43歳。元JAふじ伊豆職員を経て、伊東市議を2期目の途中まで約6年間務めた。
今回の選挙戦で杉本氏は、行政書士としての法律知識や市議としての経験を前面に押し出し、「実現可能な政策」をアピール。具体的には、学校給食費の無償化継続や学生の通学費支援など、子育て世代の経済的負担軽減を公約に掲げ、幅広い層からの支持を集めた。
「今回は高卒で出ておりますので…」疑惑の前市長、取材に応じず
今回の選挙戦は、田久保前市長の「学歴詐称疑惑」に端を発する混乱の末に実施された異例の展開だった。
田久保氏は当初、最終学歴を「東洋大学法学部卒業」と公表していたが、実際には除籍されていたことが発覚。6月には疑惑を晴らすためとして、議会関係者に卒業証書とされる書類を提示したが、その時間はわずか「19.2秒」であり、複写も拒否したことから疑惑はさらに深まった。
その後、大学側が「卒業していない者に証書を発行することはない」と声明を発表し、市議会の百条委員会も虚偽認定を下したが、田久保氏は「私の中では本物」「弁護士の金庫にある」と主張し続けてきた。
今回の出直し選において、田久保氏は最終学歴を「伊東城ヶ崎高校卒業」と修正して立候補。報道陣から学歴問題について問われても「今回は高卒で出ている」として取り合わず、疑惑への説明責任を果たさないままの選挙戦となった。
投開票日の夜、落選が決まった田久保氏は、当初予定されていた報道陣への取材対応を急遽キャンセル。陣営関係者によると「きょうは行きたくない」と話し、姿を現さなかったという。疑惑の“卒業証書”が再び公の場に出ることもなく、後味の悪さを残しての幕引きとなった。



