株式会社 eumo(ユーモ)が「共感資本社会」の実現に向けて本格的に動き出している。金融資本主義が限界を迎え、共感という見えないものに重きを置く「価値経済」が必要とされてくる中、eumoではいち早く、「価値経済」を可視化・定量化する新サービスに取り組んでいる。今回は、「第2回eumo world」で発表された内容を元に本格始動した新サービスと活動の全貌をまとめてみた。
(第2回eumo world は2019年6⽉25⽇開催 @株式会社FiNC Technologies 東京都千代⽥区有楽町1丁⽬12-1 新有楽町ビル7F)
共感資本の精神とは?~eumo代表取締役新井和宏さん
新井:eumoの社名はユーダイモニア(Eudaimonia)が語源です。ユーダイモニアとは持続的幸福という意味になります。わかりやすく言えば、一次的な喜びよりも、人間の成長によって辿り着くことができる生きがいを探すということで、eumoはその仕組みづくりを行っています。
我々が提唱する共感資本の精神は何かというと、一言で言えば「本当に大切にしたいものを大切にする、それが大切だ」ということです。これはネッツトヨタ南国の横田さんの言葉です。しかし、まことに残念ながら今は本当に大切にするものが大切にできない世の中になっています。私たちは無意識のうちに、今の資本主義社会のシステムに従っているわけですが、そういった効率性やお金を追求する今の仕組みの中では、気づかないうちに大切なものを失っているのです。そこで、本当に大切にすべきものを大切にするためには、どうすればよいのか?どのように仕組み化を図ればよいのか?ということをずっと考えてきました。
この共感というあいまいなもの、見えないものの価値を、どうしたら資本に変えられるか?そして、共感という価値を経済活動として生かして行く社会をどのように作るか?これこそが、我々eumoのチャレンジなのです。
それでは、いよいよスタートした我々の具体的な活動を紹介していきましょう。
お金を配る投資事業
新井:まず、共感資本社会を創るにあたっての事業の3本柱の一つ、投資事業では、共感で資本を集め、それを配る活動を行っています。本日、このフォーラムの前に株主総会が開かれましたので、株主や投資先の方々もいらっしゃっています。
ここで、我々の投資先の第一号となった池内オーガニック代表の池内さんをご紹介します。前職時代からお付き合いのあった池内オーガニックさんですが、オーガーニックタオルという名をつけた商品は数多世の中に出ています。しかし、池内オーガニックさんの商品はタオルの表面だけでなく、糸の中の芯地なども含めたすべてがオーガニック素材でできている本物のオーガニックタオルなのです。
池内:当社では、赤ちゃんが口に含んでも大丈夫な、世界で一番安全なタオルを製造しています。したがって、通常繊維製品メーカーではありえないISO22200の食品規格を取得しています。ここまでやっているのは私どもだけです。
新井:ちなみに池内オーガニックさんは、ミレニアル世代が選ぶ企業サイト5位に選ばれていて、この事実は企業の社会性がますます重視されるような時代になってきたことを反映しているかと思います。
次に、2社目の投資先を紹介しましょう。ウェルモ代表取締役CEO鹿野 佑介さんです。
鹿野:学生時代から公益資本主義の考えに出会ったことにより、企業の公益的活動に感化されました。eumoの共感資本社会を作る動きに我々も尽力したいと思っています。当社の事業としてはICTと先端技術で様々な問題解決を行うことに取り組んでいます。単なる儲け話はすべてお断りし、社会的に必要か?日本の構造的な問題を解決するか?といった観点から事業を選別し行っています。
新井:次に、投資事業の連携先で、ソーシャルベンチャー支援者会議という団体を一緒に立ちあげ、地域金融機関を束ねる第一勧業信用組合の連携企画部部長 篠崎研一さんです。
篠崎:我々は地域金融機関として利益よりも地域の課題解決を優先して経営して参りました。ただ、地域金融機関なので東京の中だけで活動するのでは限界もあり、日本中で他の地域金融機関と組み、志の連携を作りました。
続いて、金融行政を所管する金融庁地域金融生産性向上支援室長 地域金融企画室長(兼)の日下智晴さんです。
日下:場違いと思われるかもしれませんが、我々が国として、地域金融機関の持続可能性を考える時、地域社会の持続可能性がまずあって、その先が国や地球の持続可能性につながっていっているという事実があります。それを裏側から支えているのが金融行政なのだということを意識して今回参加しています。
新井:さて、ここからはいよいよ、水野さんより新商品についてお話ししていきます。
オープンイノベーションプラットフォーム ecowe (エコウ)について~⼀般社団法⼈ユーダイモニア研究所 代表理事/株式会社 eumo 取締役 ⽔野貴之さん
水野:私からは2本目の柱であるプラットフォーム事業において、オープンイノベーションプラットフォーム ecowe (エコウ)について紹介していきます。簡単に言うとecoweとは、組織を超えてプロジェクトを実践し、人間の共感を可視化・定量化することで地域及び組織の社会関係資本をより豊かにし、個々⼈の成⼈発達を⽀援するSNSです。
さて、今回のecoweを作るベースとなった構想自体は1999年から温めていたものでした。しかし、当初は持続的幸福社会、ポスト資本主義における価値を創出しようといったときに、どう作り上げれば良いか具体的な策がありませんでした。そこでユーダイモニア研究所で研究を積み重ね、今回、幸福度及び成人発達度を測定する仕組みを作ることができました。
その仕組みを説明するにあたり、まず幸福の話からしていきましょう。幸福をアカデミックに言うと、ウェルビーングという言葉になります。その柱はへドニア、フロー、ユーダイモニアの3つに分かれます。へドニアは一次的で続かないものです。また、お金で買うことができるものでもあります。次の、フローは好きなことに熱中しているときに訪れる状態をいいます。例えばバスケットが好きな人が、やっているうちに気付いたら3時間経っていたとかです。外的な環境に左右されるこれらに対して、ユーダイモニアはその影響を受けません。自分の生まれた目的に従い日々活動することで、自己実現に向かっていくといった性格のものです。
実験の結果、この3つの中で人間の発達段階と相関関係があるのが、ユーダイモニアであることがわかりました。へドニアと、フローは成人発達に関係はありませんでした。人間は誰もが、美味しいものを食べたら幸せを感じますし、フロー状態になっても幸福感が得られるのです。ユーダイモニアだけは成人発達を進めていかないと幸福を感じることができません。
さてそれでは、持続的幸福であるユーダイモニアを実現するために、成人発達理論から見ていきましょう。それによると人間の意識構造は真善美の柱によって構成されていると言われます。つまり、人間は真善美といった意識を高めていくことでこころが発達していくことになります。
先ず、「真」とは、考える心のことです。このとき「心で考える」について、考えるという行為は2種類あり、まず一つはロジカルシンキングやクリティカルシンキングのように、テキストを数冊読めばわかるといったもの。これは「頭で考える」ものです。そしてもう一つは、例えばコンステレーションと言われるもので、多くの体験をしたとき、はじめて気づき、考えることができるようになり、そのことに意味を見出していくもの、これを心で考えると言います。
次に、「善」とは社会的意識で仲間を思う心です。人間は発達にともない仲間の範囲がだんだん広がっていき、家族から会社、地域社会から世界へと、関係者が多いほど「善」の水準は高くなります。そして、美は感じる心。真善美の中では、この感じる心の豊かさを上げるのが一番難しいとも言えるでしょう。
次に、持続的幸福である生きがいに到達する道筋を示したものが、自身の存在目的と成人発達段階レベルの組み合わせによる「生きがいベン図」です。人は、得意な仕事、儲かること、役に立つこと、好きなことが重なっているときに最も生きがいが感じられるようにできています。
これを細かく分けると、全部で15種類のタイルがありまして、人は人生を通じて、それぞれにあっちに行ったり、こっちに来たりして遍歴を繰り返しながら、最終的に真ん中の生きがいに辿り着いていくものなのです。
それでは、生きがいに到達する人生の工程をどうやって進めば確実に辿り着いていけるものなのか?これを今検証しているところです。わかってきたこともいろいろあります。例えば、15種類の半分ぐらいまで経験しないと生きがいに辿り着けないといったことです。
また、「天命=calling」タイルの体験がターニングポイントになるらしいということ。ここを通ることが生きがいにつながっているようです。この天命とは何かというと、例えば、社会の役に立って給料はもらえるけれども、好きでも得意でもない仕事をやることです。人間はどうしても好きな事や得意な事だけやっていると、スキルや人脈が極めて限定的になってしまいますが、天命タイルを体験する事で飛び地的なスキルや人脈を得られ、それが人間の器の大きさにも反映される。どうやら天職タイルに辿り着くためには幅広いスキルや人脈が必要である事がわかってきました。
社会の成人発達の段階
さて、次に社会全体の成人発達の段階はどうなっているのでしょうか?個人レベルでは昔から欲求段階説もありますが、社会全体としても自己承認段階から、自己実現段階へと向っていくという段階を踏みます。
今、資本主義によって、社会は生存、安全、帰属、承認という発達段階に至っています。その時に、承認欲求を満たすものが、お金、権力といったものです。これが、今次第に評価主義に移行しており、最近は、欲求を満たす道具がお金から、「いいね」に変わりました。ただ、これらはすべて外発的動機付けによるものであり、成人発達段階でいう進化ではありません。しかし、次の段階の共感資本社会、ユーダイモニア社会へと移っていくと、自己実現、自己超越という内発的動機付けに変わっていくのです。
ところで、共感資本社会、ユーダイモニア社会に至る道は、オムロン創業者立石さんが1970年に予言をしていたSINIC理論が参考になります。それによると2005~2024年は最適化社会、2025年からは自律社会(=共感資本社会)、2033年から自然(じねん)社会(=ユーダイモニア社会)になると言われています。これからは生きがいの道の実践により、内発的動機付けによって生き、自己実現から自己超越に向かって活動する時代になっていくのです。
このようなプロセスを、見えざる社会の価値といった観点から改めて眺めてみますと、共感社会に至る以前はエコノミックキャピタルのみが注目されてきましたが、これからはヒューマン・ファンダメンタルズ・キャピタルとソーシャルキャピタルを可視化し、高めていくことが重要となってきていると言えます。
実際にお金だけでは幸福になれないことに多くの人は気づいています。現実の社会はモノとカネ、幸福、仲間から成り立っているのですが、可視化しないと、これらが見えないのです。そこでこの度、これを定量化することにしたというわけです。
幸福発達モデル
このとき人間の幸福は、どうも当人の発達段階とつながっていそうだということで、成人発達理論などの発達心理学とポジティブ心理学を統合しました。そしてこのオリジナルな幸福発達モデルをつくったのです。
色で分けると、レッド、アンバー、オレンジ・・全部で10段階の人間の心の成長があります。例えば、ステージ2Bのレッドは行動分類では利己的。行動原理としては、善悪正誤の二元論、突発的。人生の意味については、短絡的に生きる。欲求や願望を率直に表現する。それが、ステージ2Aのアンバーになると、報酬や権利、金融資産を獲得したい、自分の相対優位を守るといったものに変わってきます。
ステージ3Bのオレンジになると利己から、非利己に移る。つまり、人様に迷惑をかけることはしないという感覚で生きる段階です。利己ではないのですが、かと言って利他でもない。この段階の人は企業人に多いと言えます。他者や慣習にしたがい、帰属する組織の上司から言われたことをやり遂げるといったステージです。
次に、ステージ4Bになると、自分のロジックに基づく理論運用型ものさしができる。そのものさしに従うと、「そのオーダーは僕の考えでは受けられない」といったことが起こります。いわゆる有能なマネジメント階層は4B、グリーンが多いです。ただ、4Bになると、いったん利己的に戻ります。なぜなら、自分のものさしを盲信してしまうからです。
次の4Aティールにいくと、同じ目的を持つ仲間のために動き、また、多様な他者と交流を始めます。そして5段階ターコイズにいくと・・・現状ほぼ存在しないと言ったレベルになります。
ここで重要なのは、下がよくて、上が悪いではありません。これは単に各人のOSが違うだけなのです。つまり価値観に基づいた幸せが違うということです。だから支援し合うことができるわけであり、組織で業務を割り振るときにカニバることがありません。
資料を作ることに幸せを感じる人、戦略を立てることに幸せを感じる人、ビジョンを創ることに幸せを感じる人、等々・・・価値観に応じて各自バラバラです。つまり、多様性に富んだ虹色のメンバー構成が理想的な組織と言え、実際に可視化させた全ての組織は自然とそうなっています。
人間の生きる目的をどのように達成していくか
さて、成人発達を求め、生きがいを高めていくにあたっての目的の設定や、目標の持ち方はどうあるべきでしょうか?それにはキーネシスとエネルゲイアを両輪として回していく必要があります。今まで多くの組織はキーネシス的、目的手段思考によってのみ動いてきました。
目標を設定し、ひたすらそれの達成に向かう。実際に、ほとんどの企業はキーネシスだけで経営されています。一方、エネルゲイアは自体目的志向の性質があり、目標を設定してそれに向かうのではなく、日々起こる出来事について、喜怒哀楽の感情をもって、今この瞬間を味わい尽くすという志向です。こうすると、創造のエネルギーが生れてきます。
そして、そのエネルギーをキーネシスに向かわせるといった2つ相互的な関係によって、より大きな力が生れるようになります。キーネシスだけだと、あと半期で200億円数字を上げてくださいよと言われると、プレッシャーにしかなりません。が、エネルゲイアにより喜怒哀楽を味わい尽くすという姿勢になると、エネルギーが生れる。そして、さらに上乗せして400億円くらいの達成が十分可能ではないかとも思えてくる。この後、キーネシスに戻り、もっと高い目標を設定し、達成してしまうこともある。つまり両方同時にマネジメントすることが必要なのです。
組織の生きがい度を上げる
それでは、いよいよキーネシスとエネルゲイアを上手くコントロールして、組織の生きがい度を上げるといったときに、組織のマネジメントはどのようなストラクチャーになるのか説明していきましょう。
生きがいの構造は、先ほどの説明のようにキーネーシス、とエネルゲイアでできています。これらは真・考える心、善・想う心、、美・感じる心、ウェルビーングによって構成されています。考える心、想う心、ウェルビーングを高めるとキーネシスが向上します。また、感じる心とウェルビーングを高めると、エネルゲイアが高まります。このように意識構造が変わっていくと、キーネシスとエネルギゲイアが向上し、その結果、生きがい度が高まるということになります。
このように考えて、サステナブルな会社をつくろうといったとき、今回、企業の生きがい度を「本源的人的資本」として測定可能にし、それを構成するあらゆる要素のスコアを出せるようになりました。そして、得点に応じてカラーリングできるようにしています。組織カラーリングの使い方は実に奥深いですが、全社員の「フロー」の最大化の支援について、具体的にマネジメントできる事が大きなポイントの1つです。「フロー」は個人の幸福、成人発達のみならず、組織の創造力等の飛躍的な向上を促す極めて重要な戦略的要素です。
さて、ここで根本的な質問ですが、そもそも我々は成長しないといけないのでしょうか?これについては、もともと世界は、有為転変、自然界には変わらないものはない。同様に人間は、変化せずにいられません。そう考えると、人間はさまざまな経験を通じて結果的に、成長するものなのです。人生は何が起きようとすべて順調なんですよということもできます。
つまり、この瞬間、どの意識構造にいようが、日々を主体的、意識的に生きることではじめて、今を味わうことができ、結果として人間は進化できる。他の動物と違い、意識的に進化できるのは人間のみなのです。この素晴らしい冒険をみんなで味わいましょう。
さて、こういった理論体系をもとに、オープンイノベーションプラットフォームecowe(エコウ)を作ったわけですが、共感、幸福を可視化し、所属する組織を越えてプロジェクトを実践することが大切です。イノベーションを起こしたいといっても、実際には会社の中だけではできない。わくわくしながら外の人達と取り組むことが重要なのです。そこで、内外すべての人が、社会的に自立し協働することで、個々人の成人発達を支援するFacebookのような仕組みを作りました。これにより、ビジョンや価値観、共感し合うメンバーでプロジェクトを実践していくことができます。
共感を可視化する仕組みとしては、「共感アイコン」を作りました。いいねと仕組みは同じですが、どんな人なのか組む相手が見つかりやすいように、何に対して共感するのかがより具体的にわかるようにしました。視点が面白いなのか、思いやりなのか、知恵なのか、美しいと感ずる、信頼できるといった、いろいろなタイプの共感の中からアイコンを選ぶ。そして、選んで押したものがマイページに貯まり、レーダーチャートでわかるようになります。これによって、会ったことがない人でも、どんな人かがわかるようになるので、ワクワクプロジェクトを実践する仲間を見つけやすくなります。
ecoweは、最後に新井さんからも説明がありますが、地域通貨eumoとの連動において活用することで、共感資本社会のインフラとなっていきます。
⼈財教育事業eumo Academy について~株式会社ワークハピネス co-founder/株式会社 eumo eumo Academy ディレクター 岩波直樹さん
岩波:eumoでは三つの事業の柱の一つ、人財育成事業として共感資本主義社会を共に創っていく人を増やして行くために、ユーモアカデミーを運営しています。
先ほども水野さんから言及があったSINIC理論は、オムロンの立石一真さんが、1970年に人類の未来予測理論として学会で発表したものです。それによると、14世紀までの社会を「農業社会」と位置づけ、その基盤の上に「工業社会」が実現しました。その後、2006年から「最適化社会」の段階に入り、そのあと2026年からは「自律社会」へ移行すると予測されています。
SINIC理論では、文明は技術と科学と社会が3つどもえで進化していくと指摘しています。社会性だけが上がっても科学が進歩していないと文明の発達は起こりませんし、科学や技術だけ発展しても人間の社会性が伴っていないと、新たな技術を他者の支配など低次の欲求に使い、文明の進化に向けて使いこなすことが出来ません。まさに、その三つ巴で文明は進化をしていくのです。
2019年現在は、まだ自律社会に向けて最適化社会を進んでいる過程にあります。SINIC理論では「効率や生産性、これまでの工業社会において人類は物質的な豊かさを手にいれました。一方で、エネルギー、資源、食料、人権などのさまざまな問題が未解決のまま取り残されています。最適化社会では、こうした負の遺産が解消され、効率や生産性を追い求める工業社会的な価値観から、次第に人間として生きていく喜びを探求するといった精神的な豊かさを求める価値観が高まる自律社会への過渡期を進んでいる・・」と予測しています。
立石さんは、この最適化社会を「工業化社会モノや、精神的豊かさ自分自身の生き方、豊かな人生、自己実現などの人間的欲求が実現されていき、やがて来るべき自律社会へと移行していく、破壊と創造を繰り返す混沌とする時期」と指摘しました。精度があまりにも高く、今の状況と合っていてタイムトラベラーかと思うくらいです。
そして、次の自律社会は、価値観を自ら決める成熟化社会となると言われています。eumoアカデミーではこの、自律社会以降にどう移行していくかを考え、教育プログラムを作っています。自律社会に移行するためには、人の成長および人の集合が作り出す社会性が鍵となることは言うまでもありません。
その人の成長支援をするときに、人間の成長は二軸あることを知っておく必要があります。まずは、水平方向の成長です。これは知識やスキルの獲得、簡単に言うと、アプリケーションの追加と言ったイメージです。一方、垂直方向の成長は、人間性や認識、意識の拡大、つまりOSのアップデートのようなものです。日頃、我々はこの二軸をあまり意識してはいません。垂直方向の成長を表す概念としては、去年流行ったティール組織という概念です。これは、組織というものに焦点を当てた垂直方向の成長を表しています。
この理論では、現代社会の大企業のほとんどはオレンジ段階だとされています。つまり効率性や合理性、数字化されるものを重視するといったOS ですが、これをずっと続けてきた結果、様々な社会課題が生まれるようになってきてしまった。そしてその社会課題は、このオレンジ領域の水平方向の成長ではもう解決できないということです。なので、ようやく今SDGsやESG投資、ダイバーシティやエンゲージメント、ステークホルダーバランスなどの価値観であるグリーン系の動きがではじめていますが、まさに社会全体として垂直方向の成長、OS のアップグレードが求められているわけです。
そして、水平方向の成長は強制獲得が可能、スキルトレーニングや知識の試験などを通して、ですが、垂直方向の成長は強制獲得ができません。自分のOSのアップデートが必要かなと少し気づき始めた時に、いろいろな人との「出会い」や体験したことのない「場」を経験することでその成長が促されるのです。その成長は、今までの価値観を手放していくことになるので、葛藤を伴います。
人は感性がひらいたときにはじめて、目に見えないもの、お金に換算できない価値を大切にしていこうと思えるようになる。そのときに垂直方向への成長を支援していくことができる。つまり、垂直方向に成長するためには、感性の解放と変わろうと思っているタイミングで、気づきを促す出会いや体験と自らの主体性で行う“実践”が必要なのです。その場とネットワークを提供するのがeumoアカデミーの役割です。
eumoアカデミーは、2019年4月に第1期をスタートしました。まず、知識ベースで成人発達理論、自然科学と生命科学、幸福経営論やSDGs経営論など8講座を勉強します。今、今まで自分が認識ししてきた世界とは違う世界をこれから創造していく必要があるかもしれないという認識を持っていただいた後、飛騨地域でフィールドワークを行っています。現地では、共感資本社会的なあらたな地域社会の創造に取り組んでいる4社の企業と半年間かけてプロジェクトを実施しています。この取り組みは、10月5日に途中経過を発表します。
アカデミーの出口としては、そのまま副業として継続してプロジェクトを推進していただいたり、起業家として起業する場合もあれば、企業派遣で参加の場合は出身母体企業のプロジェクトとしてそのまま取り組んでいただくこともあります。また、地域企業の方々に社員として勧誘される場合もあるでしょう。
今、この本コースは2期の準備も進めており、10月5日から開講の予定です。第2期本コースの舞台は福岡県の八女市になります。また、本コース意外に、経営者コースもあり、1回目は宮崎県で実施、2回目は9月12日から宮城県で復興を進めている女川町で開催します。また、皆さんのニーズに答えてフィールドワークがない座学とディスカッションだけの寺子屋コース、親子コースも実施しており、Webで学習できるオンデマンドコースもリリースしました。eumoアカデミーのwebサイトも立ち上げましたので、是非ご覧ください。
地域通貨eumoの実証実験
新井:最後に、ecoweとともに、eumoのプラットフォーム事業を形づくる地域通貨eumoのお話をします。eumoは都市と地域を繋ぐ電子通貨です。共感資本社会にどのような通貨を作るかを新たな概念で考えた時、地域を中心に置くことにしました。なぜ地域なのか?
実は地域では、今でも物々交換が行われています。例えば海士(あま)町では、朝玄関の扉を空けると、新鮮なイワシ、新鮮な野菜が届けられていたりするそうです。しかし、これらの交換は等価ではありません。片や都会の人は等価交換に慣れすぎて、非等価交換の世界が理解できません。そこで、等価でないといけないのでしたっけということを問いたいのです。
信頼関係や共感が間に内包されているものであれば、非等価でも良い。そのようなものが交換できることによって収益を上げる経済を成り立たせる。どうやってそれを作っていくのか?社会システムにしていくのか?いきなり物々交換と言われても今の常識ではなかなか理解できないでしょう。そこで、段階的に持って行きたいと考えているわけです。
大切なものを大切にするということを理解するためには、一番最初に地域活性化に関わる必要があります。そのためには現地で人と出会って、共感を作り出すにはどうしらよいか?つまり、我々は家にいて、すべてのものが手に入り、誰にも出会わないといった世界とは真逆のことを実現したいと考えています。
地域に行って人と出会うことが価値になり人生を豊かにする。出会い自体が、成人発達段階を上げていく。そういった共感電子通貨ができないのかというチャレンジが、コミュニティ通貨eumoになります。
さてこのeumoのポイントは次の4つがあります。
◆ポイント1
貯められないお金であること。つまり、使うためのお金。使えば使うほど幸せになれる。素晴らしい人に出会う、出会うと成人発達段階が上がっていくお金。蓄財ではなく使う手段としてのお金。使わないと、6か月後に失効するといったお金です。
◆ポイント2
人、もの、場との出会いを創出するお金。出会って何かがうまれる、そこに行くから意味がある。現地にいかないと使えない、決済時に縁がつながる。その関係性が一時的に終わらない。
◆ポイント3
お金に色をつける。今のお金は色がついてないから普及しています。今度は、生産者がお金を選べる、どういう経路で手に入れたかがわかるようにする。そのお金だったら、命懸けで作った作物を提供したいと思えるお金にしたい。共感マネーが循環していくために、お金に色をつけるわけなのです。
◆ポイント4
非等価交換にいく一歩手前にある贈与経済の経験をする。いきなり非等価交換に行くのは難しいです。したがって、まず最初はギフトからはじめる、ギフトをする癖をつける。贈り物のためのお金です。
具体的には、行かなかったので、失効する人が、移動コストをかけて行った人を応援するしくみです。距離を越えていく活動をサポートする。行った人を応援していく。詳しくは、実証実験オフィシャルサイトを設置しましたので参照ください。
これを実行に移すため、9月15日から半年間、2,000名程度で実証実験を行います。さて、ここで、システム面で協力いただける株式会社フィノバレーの代表取締役川田修平さんを紹介します。
川田:当社は飛騨信用組合さんと共に作っているさるぼぼコインをはじめ、地域通貨の共通プラットフォームを提供しています。現在、飛騨だけでなく、木更津でもアクアcoinを提供しています。木更津では、市役所ともいっしょに決済システムや、行政ポイントも付加し、住民の方々の参加を促していっています。基本の仕組みは簡単で、アプリの中のコインにチャージして、QRコードで決済することができるようになっています。当社が得意なのは、位置情報を使っていろいろな仕掛けができることで、今回のようにユーザーが動きながらコミュニケーションを上手くとっていく方法と融合させていくことが可能となります。
新井:さて、たまたまですが、スタートにあたりちょうど2019年9月14日から、第5回貨幣革新・地域通貨国際会議飛騨高山大会が開催されることになっており、そこで地域通貨eumoの実証実験を発表することになっています。
https://sites.google.com/view/ramics-2019-takayama/
なお、この地域通貨の国際会議は、今年、日本ではじめて開催されるそうです。我々は2日目の9月15日に発表し、オープンニングを迎えます。細かいしくみはサイトをご覧ください。
次に、地域の特定の場所に行くといったとき、今、加盟店さんが今20か所で準備を始めています。地域では人が来ると嬉しいわけですが、今回、地域の素晴らしいものを伝えたいと強く思う20か所の皆さんに集まっていただきました。
その中の一つ、株式会社ポケットマルシェ代表取締役の高橋博之さんが花巻からいらっしゃっていますので、ご紹介します。
高橋:8年前、東日本大震災によって生産地と消費地が分断されてしまいました。しかし、震災によって多くのボランティアの皆さんに来ていただき、再度生産地と消費地が繋がったのです。しかし、残念ながら時間がたつにつれて、また分断が起こっています。そこで、当社ではそれを絶やさないため、生産と消費が繋がる活動をやってきました。今回、eumoとの連携により、この活動をさらに活性化していきたいと考えています。
同じく、加盟店で札幌からいらっしゃっている、エコ名刺の丸吉日新堂印刷株式会社代表取締役 阿部 晋也さんをご紹介します。
阿部:エコ名詞とは、再生ペットボトルから作る名刺です。我々はこの名刺により、共感のネットワークを広めたい。エコ名詞を介して、人と人が全員友達になることを目指しています。現在、エコ名詞ユーザー交流会は総勢7万名です。もっと、多くの人がつながる世界を造りたい。eumoポイントをつかってエコ名詞を広げたいと思います。
新井:今回、我々はこのエコ名刺に、勉強会に参加する権利を付与するといった商品開発を行っているころです。具体的には、ネットワークに参加できる体験型商品でして、北海道の経営者と会えるという仕掛けです。
現在、お二人のような熱意ある加盟店の皆様、20か所にお声がけし商品開発を進めています。現地とつながり、商品の購入だけでなく、自分が人の役に立てるということに気付いていただき、副業による支援や、移住定住に至るといった流れになることを期待し、加盟店の皆さんとともに、都会と地域をつなげるというプロダクトを共同開発しています。
まず、今回は20か所でスタート、9月の実証実験のちその後加盟店を増やす計画です。お金を使う、人とのつながりを作っていく。加盟店、地域企業や自治体がeumoを発行し、ecoweとの連携を図っていく。SNSで共感や、感謝を送るとeumoポイントに切り替え可能にしていこうと考えています。
なお、今回、9月15日の実験では、価値が3か月で失効するように設定しています。これを実際に行った人に再配分します。それをやると、人の行動はどう変わっていくのか見て行きたいと思います。さらに今後JRさんANAさんと言った交通機関の皆さまにもご参加いただきたい。なお、今回の実証実験データは、2月29日に集め、来年度以降に生かして行きます。実証実験のプレエントリーを是非してください。
<プロフィール>
株式会社 eumo(ユーモ、英字名 eumo Corporation)
所在地:東京都港区六本⽊ 7 丁⽬ 313 トラスティ六本⽊ビル 7 階
代表者代表取締役: 新井和宏
設⽴⽇:2018 年 9 ⽉ 13 ⽇
資本⾦:12,500 万円(資本準備⾦を含む
事業内容:共感を循環させる情報プラットホーム提供
課題解決しながら成⼈発達を促進する教育
社会貢献性の⾼い企業への投資、等
役員:
左から、代表取締役新井和宏
取締役水野 貴之
取締役竹本 吉輝
取締役榊 正壽
取締役岩波 直樹
監査役小林 洋光