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豊明市「スマホは1日2時間」条例案 市長本人は4時間利用の“お手本破り”

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豊明市「スマホは1日2時間」条例案 全国初の試み、賛否渦巻く

豊明市
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愛知県豊明市が、全国で初めてとなる「スマホ等適正使用推進条例案」を定例議会に提出する。仕事や勉強などを除き、余暇でのスマートフォンやタブレット利用を「1日2時間まで」と促す内容で、18歳未満には午後10時以降の使用を控えるよう求めている。可決されれば10月1日に施行予定だ。

ただし、この“お達し”を出した小浮正典市長本人が、実は平均4時間もスマホを使っていたことが露呈。市民からは「まずは自分から手本を見せてはどうか」と冷ややかな声が飛んでいる。

 

豊明市が舞台となった理由

人口約6万9千人。名古屋市のベッドタウンとして発展してきた豊明市は、共働き世帯の増加とともに子育て家庭の“スマホ依存”が深刻化しているとされる。市の教育関係者からは「授業中に集中力が続かない子が増えている」「夜更かしで寝不足の生徒が目立つ」といった現場の声が上がっており、市長が“全国初”に踏み切った背景には、こうした地域の課題もあるとみられる。

だが、現場の教師からは「条例で子どもの生活習慣が改善するなら苦労はしない」との冷ややかな見方も出ている。

 

SNSで噴出する批判と疑念

市長の「健康と睡眠時間の確保が第一」との美辞麗句は、SNSであっさり切り裂かれた。
「拘束力もなく無駄な条例に議会の時間と税金を費やすのは無能」「自分は4時間使っているくせに2時間制限とはお笑い草」など批判は過熱。

小浮市長が取材で初めて自分の利用時間を知り、「天気予報を確認する必要がある」と言い訳したことも火に油を注いだ。ネット民からは「1日2時間も天気予報を見ているのか?」と総ツッコミが殺到し、条例の中身以上に市長の“弁解力”が話題になっている。

 

著名人からも相次ぐ反応

議論はSNSの炎上を超え、著名人も続々と参戦した。元経産官僚の岸博幸氏は「内容的には正しいが、本来は家庭や本人の自律に委ねるべき」と冷静に指摘。
一方で、人気保育士のてぃ先生は「豊明市は何も分かっていない」とバッサリ。「スマホは学習や子育ての一部を担っており、無闇な制限は親の負担増につながる」と指摘した。

さらに実業家の堀江貴文氏は「頭おかしいな。」と一刀両断。大王製紙元会長・井川意高氏は「底抜けのバカ」と切り捨てた。元乃木坂46の山崎怜奈氏も「今さら言うのは遅すぎる。何も変わらない」と突き放した。条例そのものよりも、市長への皮肉の方が注目を集める異例の展開だ。

 

データが示す「依存」の実態

ただし背景には深刻な現実もある。文科省の調査では、中学生の4割、高校生の6割が「平日に4時間以上スマホを利用」と回答。厚労省の調べでも、睡眠不足や生活リズムの乱れが健康被害に直結していることが分かっている。

つまり、市長の“4時間利用”は、決して特殊なことではなく、むしろ子どもたちの実態に近い。皮肉にも、市長自身が条例の「対象者」に含まれてしまう格好だ。

 

豊明市の釈明と「目安」の強調

批判を受け、市は公式サイトで「誤った理解が広がっている」と釈明。「2時間」はあくまで余暇の“目安”であり、3時間でも4時間でも生活に支障がなければ問題はないとした。
だが“目安”に過ぎないと強調すればするほど、「結局何のための条例か」との疑念は深まる。

海外の事例から見る「制限」の行方

海外でも似たような議論は繰り返されてきた。韓国では深夜のオンラインゲームを禁止する「シャットダウン制度」が導入されたが、実効性の乏しさから撤廃。フランスでは小中学校での持ち込み禁止が法制化されているが、家庭での利用は家庭任せだ。

結局、規制は一時的な抑止力にはなっても、長期的には家庭や社会全体の仕組みを変えなければ効果は出ない。豊明市の試みも「世界の失敗例」をなぞるだけになる可能性は高い。

 

「規制」か「啓発」か 今後の論点

条例の狙いは依存症や睡眠不足の防止だが、実効性は未知数だ。むしろ問われているのは「行政がどこまで個人の生活習慣に介入すべきか」という問題だろう。

豊明市のスマホ条例は、スマホの是非よりも、政治家の“言行不一致”と“象徴的パフォーマンス”を映し出した。市民にとっては「スマホ依存をどう捉えるか」以上に、「行政の役割とは何か」を突き付ける事例となっている。

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寒天 かんたろう

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ライター歴26年。月刊誌記者を経て独立。企業経営者取材や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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