
2025年の夏、スズメバチによる刺傷被害が例年に比べて早い時期から全国的に増加している。暑すぎる夏と梅雨明けの早期化という異常気象が原因とされ、各地で駆除要請も相次ぐ。被害を未然に防ぐには、スズメバチの危険性と行動特性を正しく理解し、遭遇時の対処や刺された場合の応急処置を心得ておくことが重要だ。
刺されれば最悪、死に至ることも スズメバチの危険性
スズメバチは強力な毒針と攻撃性を持つ昆虫で、刺されると激しい痛みや腫れに加え、アナフィラキシーショックによって命に関わる事例もある。
実際に刺された被害者の証言は、その危険性を物語っている。
「木を蹴ってクワガタを捕ろうとしたら、スズメバチに足を刺されました。感電したように刺さった後に痛かったです。押しピンで刺さったくらいではなく、それの10倍くらい。今までに見たことないくらい、体験したことがないくらい腫れる。それに痛いんですよ」
― 大阪府在住の50代男性(2025年7月19日)【関西テレビ「newsランナー」2025年7月24日放送】
この男性は山へ昆虫採集に出かけた際にスズメバチの巣を刺激してしまい、足を刺された。被害直後には腫れが激しく、過去に経験したことのないような痛みに襲われたという。
また、北海道帯広市では今月20日、ソフトテニスの大会に参加していた高校生ら17人がスズメバチに襲われる集団被害が発生した。会場周辺に巣が存在していたとみられ、活動が早まったハチによる予期せぬ被害が広がっている。
さらには、大阪府内の神社で草刈り作業をしていた男性も被害に遭った。
「草を刈っていてそっちに近づいたときに5~6匹一気に飛んできて、よく見たら巣があった。刺されましたね」
― 大阪府・神社の境内で作業中の男性【関西テレビ「newsランナー」2025年7月24日放送】
この現場では、ソフトボール大の小さな巣が6月中旬から茂みの奥にできていたとみられ、小学生の登校集合場所付近であったことから、即時の駆除対応がとられた。
刺激しないための3つの注意点
スズメバチは無暗に人を襲うわけではないが、警戒対象と見なされた場合には積極的に攻撃を仕掛けてくる。以下の点に注意すれば、被害を防ぐ確率を高められる。
1. 服装の色に注意する
黒などの濃い色はスズメバチを刺激しやすい。帽子や服装は白やベージュ系など、明るい色を選ぶとよい。
2. 香りの強い整髪料・香水を避ける
スズメバチは香りにも敏感で、花の匂いと勘違いして近づくことがある。山間部や屋外で活動する日は香料を控える。
3. 騒がず静かに距離を取る
大声を出したり、手で払ったりせず、ゆっくり後退する。巣に近づかないことはもちろん、飛んでいる個体も刺激しないよう注意する。
もし刺されてしまった場合の応急処置
刺された直後の対応が、症状の進行を左右する。以下の処置を落ち着いて行うことが重要である。
手順 | 処置内容 |
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① | 安全な場所へ移動:まずは巣やスズメバチから距離を取り、二次被害を防ぐ。 |
② | 毒を絞り出す:指や爪で患部を軽く押して毒を排出する。口で吸い出すのは感染リスクがあり避ける。 |
③ | 流水で洗う:清潔な水で毒を洗い流す。できれば石けんを使う。 |
④ | 冷やす:保冷剤や氷などで患部を冷やし、腫れと痛みを軽減する。 |
⑤ | 抗ヒスタミン薬やステロイド外用薬を塗布:市販の虫刺され薬で対処する。 |
⑥ | 症状に注意する:呼吸困難、意識障害、じんましんなどが出たら、アナフィラキシーショックの可能性があるため、直ちに119番通報する。 |
特に過去にハチに刺された経験がある人や、1匹に複数回刺された場合は、救急受診をためらわないことが命を守る鍵となる。
巣を見つけたときの対処法
軒下や生け垣、室外機の周辺、木のうろなどに巣を見かけた場合、無理に駆除せず専門業者への依頼が推奨される。
アース製薬によれば、市販スプレーで対応可能な巣の目安は「直径25cm以下」であり、オオスズメバチの巣やそれ以上のサイズは危険を伴うため、必ず駆除業者に任せるべきだとしている。
巣の駆除は、日没後の活動が静まった時間帯に行うと安全性が高まる。また、スズメバチが巣に戻ってくる時間帯も考慮し、完全駆除を行う必要がある。
スズメバチの巣ができやすい場所(要注意エリア)
よくある巣の場所 |
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生け垣や庭木 |
軒下や屋根裏 |
エアコン室外機まわり |
樹木の根元や木のうろ |
地中やブロック塀の隙間 |
早期発見・早期対処が拡大被害を防ぐカギとなる。
正しく恐れ、冷静に備える
スズメバチは自然界の生き物であり、本来は人を無意味に襲う存在ではない。しかし、繁殖期には防衛本能が強くなり、人を襲うリスクが高まる。無理な近づき方や自己判断の駆除は避け、「正しく恐れる」ことが、自身や地域の安全を守ることにつながる。