
自動車部品大手のマレリホールディングスが、米国連邦破産法11条の適用を申請した。再建を進めていたが、日産自動車など主要取引先の業績不振が直撃し、2度目の経営破綻に至った。
負債7000億円超 日産の赤字と資金繰り悪化が影響
自動車部品大手のマレリホールディングスは2025年6月11日、米デラウェア州の連邦破産裁判所に米国連邦破産法第11条(チャプター11)の適用を申請した。申請はグループ76社に及ぶ。会社側は事業を継続しつつ、債務を整理して再建を図る意向を示している。
申請理由として、主力取引先の日産自動車や欧州ステランティスの業績悪化による受注低迷、および資金繰りの逼迫が挙げられる。特に日産は2025年3月期に6708億円の最終赤字を計上しており、生産調整や工場の統廃合に着手していた。
負債総額は約49億ドル 私的整理は不調に
マレリの負債総額は約49億ドル(約7113億円)**にのぼる。2022年に日本の民事再生法の適用を受け、再建に取り組んできたが、2024年末からの借入金返済猶予の連続などにより、資金繰りの改善が見込めない状況となっていた。
私的整理に向けてインドの部品大手「マザーサン」をスポンサーとする再建案を提示していたが、みずほ銀行などの邦銀と、債権を保有する外資系ファンドとの間で調整が難航。債権放棄や資本注入の是非を巡って溝が埋まらず、法的整理に踏み切る結果となった。
DIPファイナンス確保で事業継続へ
申請に際して、マレリは11億ドル(約1600億円)規模のDIPファイナンス(破産手続下融資)を確保。これにより、チャプター11申請後も「従業員の雇用維持」「生産・販売活動の継続」を可能とし、企業価値の毀損を抑える狙いがあるという。
マレリは声明で「サプライヤーや顧客に対しては従来通りの支払いを続ける。申請前の債務に関しても誠実に協議する」としており、バランスシート強化に向けて債務の株式化(デット・エクイティ・スワップ)などの施策も実施するとしている。
再建難航の背景に日産の構造改革と電動化の波
マレリは、旧カルソニックカンセイと伊マニエッティ・マレリの統合により2019年に誕生。現在も欧米やアジアを中心に150超の拠点と4万5000人の従業員を抱えるグローバル企業だ。
だがコロナ禍や半導体不足、電動化対応の遅れなどが重なり、2022年に一度目の経営破綻。以降、米投資ファンドKKRの支援で再建を図っていたが、日産など主要顧客の合理化とEVシフトによる減産の影響を大きく受けた。
日産は「支援継続」を表明
主要取引先の日産自動車は、「マレリの安定した事業運営を維持できるよう支援を行う」とコメントを発表。サプライチェーン全体の安定化に向けて、他の顧客企業とも連携し注視していく姿勢を示した。みずほフィナンシャルグループは、貸出残高2376億円に対して「すでに財務上の対応は済ませており、業績への影響は軽微」としている(※2025年6月11日公表)。
今後の焦点はスポンサー確保と収益回復
チャプター11の下での再建は、事業の継続とスポンサーによる資本支援がカギとなる。マレリは「企業活動への直接的な影響は限定的」とするが、2度目の経営破綻となる今回は、信頼回復と収益構造の転換がより厳しく求められる。
急速に変化する自動車産業の中で、再びグローバル市場で存在感を取り戻せるかが問われている。