
東京都世田谷区の分譲マンションで深刻な施工不良が発覚し、建て替えを拒否された住民らが東急不動産に対し、建て替え義務の確認と費用負担を求めて提訴した。
東急不動産の建て替え中止に住民が反発し提訴へ
東京都世田谷区の分譲マンション「東急ドエル・アルス世田谷フロレスタ」の住民が、建物の耐震性や構造上の欠陥を理由に、東急不動産に対して建て替えの義務があることの確認と、調査費用など約5800万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。
深刻な施工不良と測量ミスが相次ぎ発覚
本マンションは1998年に竣工した地上8階建て49戸の高級分譲マンションで、東急不動産が事業主、東急建設が設計・施工を担っていた。2018年、1階部分でのカビ発生を機に地下ピットの調査を実施したところ、構造体のひび割れや水たまり、鉄筋切断など多くの施工不良が発見された。耐震性能の不足も明らかとなり、2021年には東急不動産が建て替えを提案。住民は仮住まいに転居した。
しかしその後、建設当時の測量ミスにより建物が斜線制限を超過していたことが判明。これにより、建て替え後の住戸数が大幅に減少する見込みとなり、東急不動産は2024年3月、突如建て替え中止を通知し、住戸の買い取りと解体を提案した。
住民側は「一方的な方針転換」と反発
住民側は、東急不動産の一方的な方針転換は不当であると主張。建て替えの準備として仮住まいへの移転や調査費用の負担を行ったにもかかわらず、十分な説明もないまま計画が中止されたことに対して強い不満を抱いている。
また、構造スリットの不足や耐力壁のコールドジョイント、断熱材施工の不備、設計図と実物との大きな乖離など、構造上の重大な欠陥が多数確認されており、住民側は「居住の安全性が確保されていない」として東急不動産の責任を問うている。
東急不動産「コメントは差し控える」
東急不動産は報道各社の取材に対し、「訴状が届いていないためコメントは差し控える」と回答。建て替え中止の理由については、測量ミスによって建築基準法に適合しない状況が発覚したため、従来の規模での建設が困難になったことを挙げ、買い取りによる解決を提案している。
今後の裁判の行方に注目集まる
高級住宅地に立地する大手不動産開発のマンションで相次いだ施工不良と建て替え計画の撤回に、住民らの不信感は根強い。今回の提訴を通じて、マンションの安全性と住民の権利がどのように認められるのか、司法判断に注目が集まる。