
2025年6月、食品の値上げが前年同月の3倍となる1,932品目に達する見通しとなった。サトウ食品や東洋水産、明治など大手各社がパックご飯やチョコレート製品を相次いで値上げし、コメの高騰や原材料費の上昇、円安が価格転嫁を後押ししている。一方で、イオンがプライベートブランド商品の値下げに踏み切るなど、企業努力による対抗策も見られる。物価高の長期化が懸念されるなか、価格を元に戻すための構造的な対策が急がれている。
コメ関連製品の値上げが顕著に 前年同月比で約3倍の値上げラッシュ
食品の値上げが止まらない。帝国データバンクによると、2025年6月に予定されている食品の値上げは1,932品目に達し、前年同月(約650品目)の3倍にあたる。特に価格上昇が目立つのは、原材料としてコメを用いる製品群である。
サトウ食品は、家庭用パックご飯の全製品を対象に、順次値上げを実施する方針を示した。東洋水産やはごろもフーズも、一部商品においてパックご飯の価格改定を発表。岩塚製菓も、せんべいの一部商品を対象に価格を引き上げるとしており、背景にはコメの高止まりがあると説明している。
加工食品においても値上げの動きは続く。味の素はおかゆ製品を、明治はチョコレートなどを対象に価格改定を行い、東ハトもスナック菓子の一部を値上げする。いずれも原材料費やエネルギーコスト、物流費の上昇、さらには円安による仕入価格の増加が要因とされている。
今年度に入ってからの主な値上げ品目一覧
帝国データバンクおよび各社の発表をもとに、2025年度に入ってから値上げが確認された主な品目は以下の通りである。
企業名 | 主な値上げ商品 | 値上げ率(目安) | 値上げ実施時期 |
---|---|---|---|
サトウ食品 | パックご飯全般 | 約11〜14% | 2025年6月〜 |
東洋水産 | 一部パックご飯 | 非公開 | 2025年6月〜 |
はごろもフーズ | 一部パックご飯 | 非公開 | 2025年6月〜 |
明治 | チョコレートなど | 約10〜36% | 2025年5月〜 |
味の素 | おかゆ製品 | 非公開 | 2025年6月〜 |
キユーピー | 業務用マヨネーズ他 | 1%〜48% | 2025年4月〜 |
ケンコーマヨネーズ | 調味料など約1,200品目 | 3%〜45% | 2025年4月〜 |
物価高の中でも価格を下げた企業も イオンの挑戦
一方、物価高の中でも逆行するように値下げを行った企業も存在する。イオンは4月9日より、プライベートブランド「トップバリュ」のうち75品目を平均4〜21%値下げした。対象となったのは、冷凍食品、調味料、ティッシュペーパー、サラダ油、ワインなどである。
イオンによると、同社が商品開発から流通・販売までを一貫して手がけることでコストを抑えられる仕組みが価格低下を支えている。たとえば、ペットボトルの形状変更で物流効率を25%改善した事例などが紹介されており、企業努力が価格維持の鍵を握っている。
価格を元に戻すために必要な施策とは
現在の食品価格上昇を「一時的」と見るには根拠が乏しく、構造的な要因への対応が求められている。価格をコロナ禍以前の水準に戻すためには、以下のような対策が必要とされる。
- 農業の生産性向上と安定供給体制の確立
- 気候変動に強い品種の開発やスマート農業の普及を進め、収穫量の安定化を図る必要がある。
- 物流・エネルギーコストの削減
- 電気料金や燃料費の高騰が間接的に食品価格を押し上げている。再生可能エネルギーの活用や共同物流の推進が課題となる。
- 為替の安定
- 円安が原材料輸入コストに直結しており、マクロ経済政策としての円相場安定化が期待される。
- 中小メーカーへの支援強化
- 価格転嫁が難しい中小企業に対し、原材料費補助や物流支援の形で公的支援を行うことで、全体の価格安定につなげる。
政府と民間が連携し、長期的な視野で物価対策に取り組まなければ、消費者の購買力はじわじわと削がれ、内需の鈍化を招く恐れがある。