
ドイツの製菓大手ハリボーが販売する人気ゼリー「ハッピーコーラ」の一部商品から大麻成分が検出され、オランダでリコール措置が取られた。複数の健康被害も報告されており、警察は混入経路の特定を急いでいる。食品への異物混入が相次ぐ中、製造・流通の各段階で安全管理の徹底があらためて問われている。
子どもにめまいなどの健康被害 オランダでリコール発表
ドイツの製菓大手ハリボーは、オランダで販売されたゼリー菓子「ハッピーコーラ」の一部商品から大麻成分が検出されたことを受け、同商品全体の自主回収(リコール)を発表した。オランダ消費者製品監督局(NVWA)は、「摂取すると健康被害を引き起こす恐れがある」と警鐘を鳴らしている。
問題となったのは「ハッピーコーラF!ZZ」の3袋で、現時点で数人の体調不良が報告されており、中には子どもも含まれている。NVWAは予防的措置として全商品のリコールに踏み切り、警察当局は大麻成分の混入経路について捜査を進めている。
ハリボーのパトリック・タックス副社長は「消費者の安全が最優先事項であり、今回の事案を極めて深刻に受け止めている」と語った。
なぜ異物混入は起こるのか 食品安全管理の課題
食品への異物混入や成分誤配合は、サプライチェーンのあらゆる段階で起こり得る。一般的な要因としては、以下のようなものが挙げられる。
- 製造工程でのヒューマンエラー
原材料の投入ミス、洗浄不足、あるいはラベルの貼り間違いといった人的ミスは、しばしば重大な事故につながる。 - 工場内での混入リスク
同一施設内で異なる製品を扱う場合、原料の交差汚染が起こることがある。とりわけアレルゲンや医薬成分に対する管理が不十分な場合、深刻な被害を招く。 - 原料供給元からの汚染
サプライヤーから納入された段階ですでに異物が混入していたケースも多い。近年では、海外からの輸入原料に対する監視の強化が求められている。 - 意図的な混入(食品テロ)
稀ではあるが、悪意ある第三者による故意の混入事例も報告されている。今回のように、大麻成分という管理された物質が含まれていたケースでは、この可能性も視野に入る。
再発防止に求められる体制とは
企業が講ずべき再発防止策としては、製造工程のトレーサビリティ強化、従業員教育の徹底、危機対応マニュアルの整備が不可欠である。さらに、食品に対する異物・有害成分の検査機器の高度化とAIによる監視技術の導入も急務となっている。
一方で、企業単体で対応可能な範囲を超える「外部起因」のリスクについては、行政機関との連携による早期発見と通報体制の構築が重要だ。日本国内でも、厚生労働省と消費者庁が中心となって、食品事故情報の迅速な共有が行われているが、国際的な連携は依然として課題が多い。
「当たり前」の安全を支える地道な努力が不可欠
今回のハリボーのリコールは、グローバル展開する食品企業であっても、リスクゼロは不可能であることを示す一例だ。消費者の信頼を裏切ることなく、「安全でおいしい」を守るためには、日々の衛生管理と異常時の迅速対応が求められる。
企業・行政・消費者がそれぞれの立場で食品安全への関心を持ち、情報を共有することが、異物混入を未然に防ぐ最大の予防策である。