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スイスで氷河崩壊、ふもとのブラッテン村が消滅 地球温暖化が原因か

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画像はイメージ(DALL-Eで生成)

スイス南部バレー州で氷河が大規模に崩壊し、ふもとのブラッテン村が土砂に埋没した。住民約300人は避難していたが、1人が行方不明となっている。地球温暖化の影響が背景にあると専門家は指摘している。

 

氷河崩壊が引き起こした土石流

2025年5月28日午後、スイス南部バレー州レッチェンタール渓谷で大規模な氷河崩壊が発生し、ふもとのブラッテン村が土石流により壊滅的被害を受けた。現地当局によると、村の約90%が土砂に埋もれ、住宅やインフラが大きく損壊した。

この災害によって64歳の男性が行方不明となっており、落下する岩や氷による危険から、29日午後に一時的に捜索が中断された。死傷者の報告は現時点で確認されていない。

住民は事前に避難

土石流の被害を受けたブラッテン村には約300人の住民が暮らしていたが、地質学者の警告に基づき、5月19日までに全住民と家畜の避難が完了していた。氷河の不安定化を受け、当局は約150万立方メートルにおよぶ崩落の可能性を想定して警戒を強めていた。

崩落は「最悪のシナリオ」

 

ヴァレー州の災害当局は記者会見で、「巨大な氷河の塊が割れて地滑りを引き起こし、最悪のシナリオが現実となった」と述べた。また、土石流によりロンツァ川の流路がせき止められ、自然ダムが形成されている。今後、ダム湖の氾濫による下流地域への洪水リスクも懸念されており、注意が呼びかけられている。

ダムは長さ約2キロ、幅50〜200メートルに達し、ダム湖は拡大を続けている。災害当局は「30日早朝にも氾濫の恐れがある」として警戒を強めている。

崩壊の背景に温暖化の影響

氷河崩壊の背景には地球温暖化による永久凍土の融解があると見られている。スイスはヨーロッパで最も多くの氷河を有する国であり、スイス氷河モニタリングネットワーク(GLAMOS)によれば、2023年には国内の氷河の総量の4%が消失した。これは2022年の6%減に次ぐ深刻な減少である。

BBCでは、この災害を「アルプスのコミュニティにとって最悪の悪夢」と表現し、スイスメディアも温暖化の進行によって氷河が著しく不安定化している現状を強調した。

国際機関も警鐘を鳴らす

WMO(世界気象機関)とユネスコは、2023年より3月21日を「世界氷河デー」に制定。ユネスコの報告書では「地球温暖化が氷河の融解を加速させ、極端な自然災害を招いている」と指摘しており、氷河の消失は21世紀中に広範囲で進行すると警告している。

また、氷河の融解が引き起こす洪水などの水災害については、国境を越えた協力と地域的な対話の必要性が訴えられている。

氷河災害は世界各地で増加

氷河に関連する自然災害はスイスに限らず、世界中で発生している。2023年にはパキスタンで氷河湖の決壊により少なくとも20人が死亡、アイスランドでも氷河融解に伴う洪水で橋が破壊されるなど、各地で被害が拡大している。

今回のスイスでの氷河崩壊は、気候変動がもたらす氷河リスクの現実を突きつけた象徴的な事例といえる。今後の地球温暖化対策とともに、山岳地域のモニタリングと住民の防災意識向上が一層求められる。

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ライター:

新聞社・雑誌の記者および編集者を経て現在は現在はフリーライターとして、多方面で活動を展開。 新聞社で培った経験をもとに、時事的な記事執筆を得意とし、多様なテーマを深く掘り下げることを得意とする。

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