
毎年、自分の誕生月(1日生まれの場合は前月)に日本年金機構から届く「ねんきん定期便」。自らの将来を左右する大切な情報が記されているにもかかわらず、よく分からないからと確認を怠る人も少なくない。
実際には、この通知には年金制度への加入状況、保険料の納付記録、そして現時点で見込まれる年金受給額など、将来設計に直結する重要なデータが記載されている。
「どう見ればよいのか分からない」――そんな人のために、「ねんきん定期便」の確認すべき11の項目とともに、見落としがちな注意点を丁寧に解説する。
ねんきん定期便はいつ、どんな形で届くのか
「ねんきん定期便」は日本年金機構が国民年金や厚生年金の加入者に送付する通知で、年齢により通知の形式や内容が異なる。
年齢 | 送付形式 | 主な記載内容 |
---|---|---|
35歳・45歳・59歳 | 封書 | 詳細な加入記録、将来の年金見込額 |
上記以外(50歳未満) | ハガキ | 加入実績に応じた年金額、保険料納付状況 |
50歳以上 | ハガキ | 老齢年金の種類と将来受取れる年金見込額 |
また、障害年金受給者には点字を付した封書形式で届く。
【年金定期便の見方】ハガキ型通知で必ずチェックしたい11項目
日本年金機構の公表資料によると、特に50歳未満(35歳・45歳を除く)の加入者に届くハガキ型通知には、「表面」「裏面」合わせて11の重要項目が記載されている。
《表面》のチェックポイント6項目
番号 | 項目名 | 内容 |
---|---|---|
① | 照会番号 | 問合せ時に必要となる番号 |
② | これまでの加入実績に応じた年金額(昨年) | 前年通知の金額 |
③ | これまでの加入実績に応じた年金額(今年) | 最新の見込額(前年と比較) |
④ | 国民年金(第1号・第3号)納付状況 | 納付済・未納・猶予の状況 |
⑤ | 加入区分 | 厚生年金・国民年金などの区分 |
⑥ | 標準報酬月額・標準賞与額・保険料納付額 | 厚生年金の算出基準 |
《裏面》のチェックポイント5項目
番号 | 項目名 | 内容 |
---|---|---|
⑦ | これまでの保険料納付額(累計額) | 納付した保険料総額 |
⑧ | これまでの年金加入期間 | 種類別の加入期間 |
⑨ | 加入実績に応じた年金額の内訳 | 表面記載額の詳細 |
⑩ | お客様へのお知らせ | 個別の重要な通知事項 |
⑪ | ねんきんネットへのアクセスキー | インターネット確認に必要なキー |
これらの項目を一つひとつ確認し、記載内容に誤りや不足がないかを確かめることが求められる。万一、誤記があれば速やかに年金加入記録回答票を用いて、日本年金機構または最寄りの年金事務所に届け出る必要がある。放置すれば、将来受け取れる年金が減額される可能性も否定できない。
【見落とし厳禁】ねんきん定期便の6つの注意点とは
年金のプロでも意外に見落としがちな注意点がある。ねんきん定期便の記載を確認する際には、以下の6点に注意が必要だ。
①記載された年金額は「確定」ではない
定期便の年金額は現時点までの加入状況をもとにした「見込額」であり、今後の加入期間や収入の変動によって上下することがある。
②加入記録の誤りは自己申告が必要
日本年金機構は「加入記録の誤りは自己申告で修正する必要がある」としている。自ら申告しない限り訂正はされないため注意が必要だ。
③年金額から「税金」や「社会保険料」が引かれる
年金は額面どおり手元に入るわけではない。介護保険料や国民健康保険料、後期高齢者医療保険料(75歳以上)、住民税などが差し引かれるため、記載金額を過信しないこと。
④年齢により重要項目が異なる
50歳以上の通知は具体的な老齢年金額が明示されるため、若年層とはチェックポイントが異なる。年齢に応じて見るべきポイントを変える必要がある。
⑤年に1回の通知だけに頼らない
日本年金機構が運営するオンラインサービス「ねんきんネット」を活用し、随時最新情報を把握することが望ましい。
⑥マイナポータル経由でも確認可能
マイナンバーカードを保有する人は「マイナポータル」経由でも年金情報を確認できるため、複数の手段で年金管理を行うと安心だ。
「ねんきんネット」活用で年金管理を手軽に
「ねんきんネット」は24時間、オンラインで年金情報の確認が可能だ。利用には事前登録が必要だが、通知に記載されるアクセスキーを利用すれば、ユーザーIDの即時取得も可能である。
さらに、年金加入者のうちマイナンバーカード所有者は、「マイナポータル」でも同じ情報を閲覧できる。
自分の将来設計を他人任せにせず、「ねんきん定期便」を丁寧に確認し、より積極的に年金の管理を行っていくことが求められる時代になっている。