異常な費用構造が浮き彫りに

オルツが開示した2024年12月決算では、売上高60億円に対し宣伝広告費が45.8億円に膨らみ、費用構成比は75%に達した。粗利率94.6%という“高収益体質”を示しながらも販管費は80・5億円にのぼり、最終損失は26.9億円。数字の整合性を疑う声が市場で拡大した。
YouTube告発で深刻さが加速
元LINE執行役員の田端信太郎氏は自身のYouTubeチャンネルで「内部告発特集」を組み、元オルツ社員を出演させて実態を告発させた。ほかにもsnsなどでは元関係者と思われるアカウントからの投稿が続き、自爆営業や代理店リベートの実態を証言し、未使用アカウントを大量に売上計上していた疑いが明らかに。「広告費の大半は販促名目のキックバックだったのではないか」との見解も示された。
監査法人シドーの監査体制に疑問符
オルツの監査を担当したのは上場実績がわずかな中堅の監査法人シドーである。有価証券報告書には同法人の監査証明が付されているが、売上の9割超を占める議事録AI「AI GIJIROKU」の導入実態や広告宣伝費45億円の払出し先について詳細な検証が行われた形跡は見当たらない。Xでは「審査コストを抑えた“格安監査”で不正を見落としたのでは」との指摘が相次ぐ。
主幹事・大和証券も上場審査の説明責任
また、オルツのIPOを取り仕切った主幹事は大和証券だった。公開価格は540円、初値は570円と小幅高でスタートしたが、粉飾疑惑の報道以降は連日値幅制限下での急落が続く。市場からは「主幹事が上場前のデューデリジェンスでKPIの裏付けをどこまで確認したのか」という疑問が噴出し、証券会社の審査プロセス強化を求める声が高まっている。監査法人シドーと主幹事・大和証券の審査責任は極めて重く、第三者報告書の内容次第では経営陣の責任問題に発展することは不可避と思われる。
市場と規制当局が注視
オルツは販売パートナー経由の未利用契約について第三者委員会を設置し6月末をめどに調査報告書を公表する方針だ。粉飾決算が立証されれば、証券取引等監視委員会による強制調査や補助金返還、上場維持基準の適用といった処分も視野に入る。生成AIブームを追い風に急成長を演出した数字が虚構であったかどうか、監査法人と主幹事証券を含むガバナンス体制の検証は不可避となった。