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リスキリングに最大80%補助の国の制度とは?学び直しでお金が戻る?!

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リスキリングとは
DALL-Eで作成

キャリアの見直しや転職、新たなスキルの習得が求められる時代において、「リスキリング(学び直し)」はもはや一部の人だけの選択肢ではない。だが、実際に学ぶとなると、時間も費用もかかる――そう感じる人は少なくない。こうした働く人々を後押しする制度が、厚生労働省の「教育訓練給付制度」だ。2024年10月の制度改正により、給付率が最大80%に引き上げられ、より実効性の高い支援へと進化を遂げた。本記事では、制度の概要から対象資格、実際の利用者の声までを通じて、「お得に学び直す」ための具体的な手法を紹介する。

スキル再構築で未来を拓く――注目集まる「リスキリング」とは

 

AIやデジタル技術の進展、グローバル化による産業構造の変化、そしてコロナ禍を経た働き方の多様化。こうした社会環境の激変にともない、働く人々が新たな知識や技能を身につけ直す「リスキリング(Reskilling)」への関心が急速に高まっている。単なるスキルアップにとどまらず、キャリアの再構築を視野に入れた学び直しは、今や生涯を通じた職業生活の土台とも言える。

政府もこの流れを強く後押ししている。厚生労働省が所管する「教育訓練給付制度」はその代表例で、対象講座は1万6000以上、利用者は年間約12万人にのぼる。2024年10月からは制度がさらに拡充され、給付率の上昇など、より実効性のある支援体制が整えられた。

教育訓練給付制度の仕組み――3種類の給付金

この制度は、雇用保険の加入歴が一定期間ある者を対象に、指定された講座の受講費用の一部を国が補助する仕組みだ。制度は大きく3つの給付金に分類され、それぞれ目的や支給額が異なる。

  • 一般教育訓練給付金:最も広範な給付で、語学やIT、ビジネススキルなど汎用的な学びに対応。支給額は受講費用の20%(上限10万円)。
  • 特定一般教育訓練給付金:より専門性の高い講座が対象で、支給率は最大50%(上限25万円)。医療・福祉・デジタル関連分野などが中心。
  • 専門実践教育訓練給付金:国家資格取得や大学・専門学校などの課程が対象。最大支給率は80%、年間上限は64万円。リスキリングによるキャリアチェンジを強力に後押しする。

制度拡充のポイント――2024年10月改正で何が変わったか

 

今回の拡充は、特に専門実践教育訓練給付金と特定一般教育訓練給付金において、就職や賃金上昇と連動した給付率の引き上げが柱となっている。

1. 専門実践教育訓練給付金:最大80%へ

修了後に資格を取得し、一定の条件で就職すれば、受講費用の70%(上限56万円)を支給。さらに、訓練修了後の賃金が受講前と比較して5%以上上昇した場合、追加で10%(上限8万円)が支給される。これにより、最大で80%・年間64万円の給付が可能となる。

2. 特定一般教育訓練給付金:最大50%へ

従来の最大給付率40%に加え、資格取得・就職により追加10%(上限5万円)の支給が可能に。結果として、実質的な負担軽減が進み、受講への心理的障壁が下がったといえる。

 

リスキリング対象資格一覧

給付金区分分野対象資格
一般教育訓練給付金会計・財務日商簿記検定、USCPA
一般教育訓練給付金語学TOEIC、英検
一般教育訓練給付金IT・情報ITパスポート、基本情報技術者、MOS
一般教育訓練給付金ビジネススキルビジネス実務法務検定、FP技能検定
一般教育訓練給付金医療・福祉医療事務、介護事務
特定一般教育訓練給付金法務・労務行政書士、社労士、税理士
特定一般教育訓練給付金建築・不動産宅建士、電気主任技術者
特定一般教育訓練給付金IT・情報基本情報技術者(ITSSレベル2)
特定一般教育訓練給付金福祉・介護介護福祉士、社会福祉士
専門実践教育訓練給付金医療・福祉看護師、保育士、助産師
専門実践教育訓練給付金IT・デジタルCCNA、AWS認定資格
専門実践教育訓練給付金IT・デジタルデータサイエンス資格、E資格
専門実践教育訓練給付金建築・土木建築士、土木施工管理技士

利用者の声――制度を活かして再出発した人々

教育訓練給付制度を活用した実際の利用者からは、次のような声が寄せられている。

「産休後に復職が難しく退職しましたが、社会福祉士資格の取得を目指して制度を活用しました。久しぶりの学びは大変でしたが、給付制度があったからこそ最後まで続けられました」(30代女性)

「学生時代から夢だった看護師の道をあきらめきれず、働きながら夜間の看護学校に通いました。教育訓練給付金がなければ、挑戦すらできなかったと思います」(40代男性)

「IT業界に転職するため、データサイエンスの専門講座を受講しました。スキルが身につくだけでなく、修了後の賃金も上がり、家族にも喜ばれました」(30代男性)

こうした体験談は、制度が単なる補助にとどまらず、個人の人生における再スタートの後押しになっていることを物語っている。

 

リスキリングの実効性を高めるには――給付対象・条件・手続きの確認が重要

手続きはどこで行う?――窓口とオンラインを使い分けよう

教育訓練給付制度の手続きは、主に以下の場所で行われる。

■ ハローワーク(公共職業安定所)

  • キャリアコンサルティング(事前相談): 特定一般教育訓練給付金・専門実践教育訓練給付金を利用する場合、受講前にキャリアコンサルティングを受ける必要がある。ここで作成する「ジョブ・カード」は給付申請に必須の書類である。
  • 給付金の申請: 受講修了後、修了証明書や支払証明書などの必要書類をそろえて申請を行う。申請が承認されると、給付金が指定口座に振り込まれる。
 

■ オンライン(情報確認と講座検索)

  • 厚生労働省 教育訓練講座検索システムhttps://www.kyufu.mhlw.go.jp/ 自身が希望する講座が給付対象かどうかを事前に確認できる。対象講座の内容や支給上限なども一覧で参照可能。

手続きは「受講前」と「受講後」に分かれ、それぞれで必要なステップが異なる。特に特定一般・専門実践の制度では、事前手続きを怠ると給付対象外となるため、注意が必要である。

以下に、給付対象・条件・手続きの流れを整理した表を掲載する。制度活用の際には、各ステップでの確認が欠かせない。

カテゴリ項目内容
給付対象雇用保険加入期間一般・特定一般:1年以上、専門実践:2年以上(再利用は3年以上の間隔)
給付対象指定講座の受講厚生労働省の講座検索システムやハローワークで確認
給付対象申請期限受講修了後、原則1か月以内に申請
手続きの流れ講座選定厚労省の講座検索システムなどで対象講座を確認
手続きの流れキャリアコンサルティング(特定一般・専門実践)ジョブ・カード作成、目的やキャリアを明確にする面談(申請には必須)
手続きの流れ受講と費用支払い指定講座を受講し、費用を支払う(分割払い対応講座もあり)
手続きの流れ受講修了後の申請修了証明書、支払証明書、本人確認書類を提出しハローワークで申請

制度を活用するには、対象となる講座であること、所定の雇用保険加入期間を満たしていることなど、いくつかの条件を満たす必要がある。

主な条件:

  • 雇用保険加入期間:一般・特定一般は1年以上、専門実践は2年以上(再利用には3年以上の間隔が必要)
  • 指定講座であること:厚労省講座検索システムで要確認
  • 受講後の申請期限内に手続き:原則として受講終了から1か月以内

手続きの流れ:

  1. 対象講座を選定
  2. 特定一般・専門実践の場合、受講前にキャリアコンサルティングの実施
  3. 受講開始と費用支払い
  4. 修了後にハローワークで給付金申請

キャリアコンサルティングでは、ジョブ・カードの作成と提出が求められ、制度活用における実質的な入口となる。給付対象であっても、このプロセスを経なければ給付金は受け取れないため、手続きには細心の注意が必要だ。

 

変化の時代を「学び」で乗り越える

内閣府の「令和のリスキリング戦略」でも強調されるように、日本の労働市場が直面する課題は深刻だ。少子高齢化と労働力のミスマッチ、急速な技術進展による職業構造の変化。これらに対応するには、個々人が自らのキャリアを能動的に設計し直す力が不可欠である。

教育訓練給付制度は、そのための「経済的ハードル」を取り除く強力なツールであり、単なる学び直しにとどまらず、職業生活そのものを再構築する支援制度として位置づけられる。制度の活用が、働く人々の新たな一歩となることを期待したい。

 

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ライター:

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SHOEHORN くつべらマン

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児童養護施設の職員。特に中学~新卒年齢の若者の生活・医療・福祉・自立支援に従事している。勤務時間外では、様々な職業の方へ取材活動を実施しており、大人になる若者たちへ情報を提供している。

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