
日本生命傘下の大手保険会社「大樹生命」で、元職員の女性が顧客20人から計8130万円をだまし取っていたことが明らかになった。虚偽の投資話や保険の一部解約を利用した巧妙な手口で、犯行は約11年にわたって行われた。すでに大樹生命は元職員を懲戒解雇し、刑事告発を検討している。被害者への弁済は完了しているが、事件の詳細や再発防止策が注目されている。
元職員による詐欺事件の概要
大手生命保険会社の大樹生命保険は2025年3月14日、埼玉支社三郷営業部に勤務していた元職員の女性が、顧客から合計8130万円を詐取していたと発表した。被害者は20人に上り、一人当たりの被害額は最大で約1500万円に及ぶ。元職員は2013年5月から2025年1月までの約11年間にわたり、顧客から金銭を不正に得ていたという。
同社の発表によると、元職員は虚偽の投資話を持ち掛けたり、保険の一部解約を勧めて解約返戻金を自身の口座に振り込ませるなどの手口で金銭を詐取していた。
巧妙な詐欺の手口とは?
元職員は以下の2つの方法で金銭を詐取していた。
(1) 虚偽の投資勧誘
元職員は顧客に対し「確実に利益が出る」「今が絶好のチャンス」などと嘘の投資話を持ち掛け、金銭を自分の口座や営業所の親睦会名義の口座に振り込ませていた。また、現金を直接手渡しするよう指示するケースもあった。
(2) 保険の一部解約と返戻金の詐取
顧客に対し「保険を一部解約すれば、より有利な条件で再契約ができる」などと虚偽の説明を行い、保険の一部解約を促した。その際に発生した解約返戻金や積立金を不正に受け取り、自身の口座に振り込ませていた。
発覚の経緯
事件は2024年10月、顧客から「不審な取引がある」との問い合わせが大樹生命のコールセンターに寄せられたことで発覚した。その後の社内調査により、元職員の不正が判明。元職員は2024年11月下旬に懲戒解雇された。さらに、調査の結果、犯行が11年にわたって続いていたことが確認された。大樹生命は現在、元職員の刑事告発を検討している。
大樹生命の対応と被害者への補償
大樹生命は被害を受けた20人の顧客全員に対し、すでに被害総額8130万円の弁済を実施しているという。さらに「お客様をはじめとする関係者の皆様に多大なるご迷惑とご心配をおかけしました」と謝罪した。
同社は再発防止策として、以下の取り組みを進めると発表している。
・保険解約時のモニタリング強化
・顧客への注意喚起の強化
・社員教育やコンプライアンス意識の向上
消費者への注意喚起
今回の事件を受け、専門家は「金融機関の職員が現金の受け渡しや口座への振り込みを求める際は特に注意が必要」と指摘する。特に「確実に利益が出る」「特別な情報がある」といった言葉には警戒が必要だ。また、不審な行為があった場合には、以下のような対応が有効とされている。
・家族や友人に相談する
・金融機関や関係機関に問い合わせる
・消費者庁や国民生活センターへ相談する
まとめ
大手生命保険会社で発覚した今回の詐欺事件は、多くの消費者に衝撃を与えた。大樹生命は被害者への弁済対応を完了し、再発防止策を強化する方針を示しているが、消費者自身がこうした詐欺の手口に注意を払うことが重要だ。金融商品に関する勧誘には慎重に対応し、不審な点があれば即座に関係機関に相談するなど、警戒を怠らないことが求められる。
【参照】当社元職員による金銭詐取事案の調査結果について(大樹生命)