
精密機器大手の日機装株式会社(東証プライム:6376)は2月28日、製造した一部ポンプ製品において、社内規定に基づく品質検査の一部が実施されていなかったことが判明したと発表した。事実関係の解明および再発防止策の策定を目的として、外部有識者を主体とした特別調査委員会を設置した。
不適切な検査の発覚と経緯
今回の問題は、2024年10月に社内の製造工程確認の過程で発覚した。対象となるのは、同社が製造するキャンドモータポンプ(製品名「ノンシールポンプ」)および往復動ポンプ(製品名「ミルフローポンプ」)の一部で、出荷前に実施すべきとされる耐圧検査が行われていなかった。
この事態を受け、社内で事実確認を進めていたが、経営陣は問題を厳粛に受け止め、第三者による客観的な調査が必要と判断。2月28日付で外部専門家である弁護士を中心とした特別調査委員会の設置を決定した。
特別調査委員会の構成
特別調査委員会は、弁護士の岸見直幸氏(シティユーワ法律事務所)が委員長を務め、同事務所の弁護士である鹿倉佑太氏、そして日機装の常勤監査役である竹内基裕氏が委員として参加する。
同委員会は、事実調査の徹底、原因究明、そして再発防止策の策定を主な任務とし、独立性を持った調査を進める方針だ。
法令違反の可能性と今後の対応
現時点で、法令違反に該当する事実や、ポンプ製品の品質や性能に影響を及ぼした事例は確認されていない。ただし、日機装は「お客様に多大なご心配をおかけしたことを深くお詫び申し上げる」とし、今後、品質や性能に影響を与える可能性が判明した場合には速やかに情報を開示するとしている。
また、調査結果を踏まえ、同社グループ全体で品質管理体制の見直しやコンプライアンスの強化を図る考えを示している。
業績への影響
本事案が2025年12月期の連結業績に与える影響は「軽微である」とし、現時点では業績予想の修正は予定していない。ただし、今後の調査によって開示が必要な事項が生じた場合には、速やかに報告するとしている。
品質管理の徹底が求められる中、同社の対応と今後の展開が注目される。
日機装とは
日機装株式会社は、1953年に「特殊ポンプ工業株式会社」として創業し、日本の戦後復興期に社会基盤や産業基盤を支える企業として成長してきた。特殊ポンプの輸入と国産化を進め、日本初の人工心臓提供や人工腎臓の開発にも成功。現在は、精密機器、医療機器、航空機部品などを主力事業とする。
同社は「Original Technologies(独創的な技術)」を掲げ、新しい価値を生み出すことに注力している。化学工業用特殊ポンプ、半導体や電子部品、バイオ向け製造装置、カーボンニュートラル向けシステムパッケージ製品、航空宇宙産業向け炭素繊維複合材成型品、人工透析装置や人工膵臓などの医療機器、環境・医療・工業向け深紫外線LEDの設計・開発・製造・販売・メンテナンスを行っている。
1950年3月7日に創業され、従業員数は単体で2,040名、グループ全体では7,944名(2023年6月末現在)。2022年12月期の売上高は1,771億円。日機装は、目立つ存在ではないものの、社会の根幹を支える企業であり続けることを使命としている。
今後、日機装は品質管理体制の強化と再発防止策の徹底を進め、企業としての信頼回復を目指すとしている。社会インフラや医療分野における重要な技術を提供する企業として、より一層の透明性とコンプライアンスを重視した経営が求められている。