
ANAホールディングスは2月25日、米ボーイング、欧州エアバス、ブラジルのエンブラエルの3社から計77機の航空機を発注すると発表した。過去最大規模の発注で、国際線の拡大と国内線の柔軟な運用を進める。
ANAが77機を発注 過去最大規模の背景とは
ANAホールディングスは2028年度から2033年度にかけて、77機の新型航空機を導入する。発注額はカタログ価格で約2兆1580億円にのぼる。ANAグループの運用機数は、2023年度の278機から2030年度末には約320機へと増加する見込みだ。
発注機種の内訳は、ボーイングから「787-9」18機と「787-8」12機(うち4機がオプション)、エアバスから「A321neo」24機と「A321XLR」3機、エンブラエルから「E190-E2」20機(うち5機がオプション)となる。ボーイング787シリーズの国際線での比率を約71%まで引き上げ、座席利用率と収益性の向上を図る。さらに、日本国内ではANAとして初のエンブラエル「E190-E2」導入により、100席クラスの機体を活用し、需要の変動に応じた柔軟な運航を可能にする。
世界の航空需要回復がANAの戦略を後押し
ANAの今回の発注は、世界的な航空需要の回復と成長を背景にしたものだ。国際航空運送協会(IATA)によると、2025年の世界旅客数は前年比6.7%増の52億人に達する見込みで、今後も特にアジア太平洋地域を中心に成長が続くとされる。ANAは国際線の拡大を目指し、30年度の運航規模を23年度比で1.5倍にする計画を掲げている。
一方で、国内線においては100席クラスのリージョナル機を導入することで、需要変動に機動的に対応する狙いがある。これまでANAは三菱重工業の「三菱スペースジェット(MSJ)」の導入を検討していたが、同機の開発中止を受け、新たな選択肢としてエンブラエル機を採用した。
JALとANAの機材数比較 どちらが優位か
ANAの機材数はJALを上回っている。2023年3月31日時点で、ANAグループの運用機数は236機、JALグループは227機だった。さらにANAは今回の77機の発注により、2030年度末までに約320機へと機材数を増やす計画である。一方、JALは2024年3月に42機の発注を行い、事業規模を約1.4倍に拡大する方針だ。
この機材増強によってANAは国際線の競争力を高めるだけでなく、国内線の効率化にも寄与する。一方でJALも着実に機材更新を進めており、今後の競争が激化する可能性がある。
新型機導入のメリットと潜在的リスク
新機材導入のメリットとしては、燃費性能に優れたボーイング787シリーズの活用により、国際線のコスト効率を向上させる点が挙げられる。また、小型機の導入により、地方路線の最適化や収益性の向上が期待される。
一方で、航空機の納入には時間がかかるため、短期的な需要変動への対応には限界がある。また、ボーイングは近年の生産遅延や品質管理問題が指摘されており、予定通りの機材供給が課題となる可能性がある。
ANAの機材更新がもたらす今後の展望
ANAの大規模な機材更新は、今後の競争環境を見据えた長期的な戦略の一環といえる。日本航空(JAL)も2024年3月に42機を発注しており、航空会社間での機材更新競争が激化している。さらに、世界各国の航空会社も大規模な発注を進めており、今後の需要の伸びを見越した動きが加速している。
今後、ANAの機材更新が予定通り進めば、国際線においては競争力の強化が期待される。一方で、航空業界の市場動向や燃料価格の変動、ボーイングの生産状況などの外部要因が、計画の進捗に影響を与える可能性もある。ANAはこれらのリスクを見極めながら、柔軟な事業運営を進める必要がある。