
東京都と法政大学が共同で進めていた起業家教育に関する事業が、本格実施を前に中止となったことが明らかになった。法政大学は「事業に関わる研究者が資金を不正使用している可能性があり、都に中止を申し入れた」と説明しているが、研究チーム側は「資金使用は適正で、都からの指摘もなかった。むしろ都の担当者と約3カ月間連絡がつかずに放置され、中止に追い込まれた」と主張している。都民投票を経て採択された事業の中止により、都の説明責任が問われる可能性がある。
東京都と法政大学の3.8億円プロジェクトの内容とは?
東京都と法政大学が計画していた事業は、「東京の未来を拓く起業家教育循環システム」と題し、総額約3億8千万円を投じて、2024年4月から3年間実施する予定だった。このプロジェクトは、都内の小学生から大学生までを対象に、一貫したアントレプレナーシップ教育を提供し、若年層の起業家精神を育むことを目的としていた。
事業の中心には、法政大学デザイン工学部システムデザイン学科と経営学部の教員が携わり、起業家教育の課外活動を通じて、学生自身もメンターとして育成される仕組みが計画されていた。さらに、ものづくりやビジネス実践、事業継承と連動させることで、起業家の育成を長期的に支援することを目指していた。
都民投票で選ばれた理由とは? 支持を集めたポイント
東京都と法政大学が進めていた本事業は、都民投票を経て採択された。東京都が実施する「都民・大学研究者による事業提案制度」の一環として、2023年7月26日から8月28日までの間にインターネットおよび郵送による都民投票が行われた。
この投票では、都民提案から15件、大学提案から9件の事業案が対象となり、都民一人あたり各提案部門で3票まで投票することが可能だった。その結果、法政大学の「東京の未来を拓く起業家教育循環システム」プロジェクトは、大学提案の一つとして応募され、都民投票で4,000票余りを獲得し、採択された。
他の候補と比較! なぜこのプロジェクトが選ばれたのか?
都民投票の対象となった他の事業案には、地域活動の促進や高齢者のフレイル予防、障害者支援など、多岐にわたる提案が含まれていた。これらの中から、都民の投票結果を踏まえて、東京都は令和7年度(2025年度)の予算案に反映する事業を選定した。
法政大学のプロジェクトは、都民の投票によって選ばれた数ある事業の一つとして、東京都と連携して実施される予定だったが、今回の事業中止により、今後の都民投票制度への影響も懸念される。
なぜ事業は中止に? 資金不正疑惑の真相
法政大学は、プロジェクトに関与する研究者による資金不正使用の可能性があるとして、東京都に中止を申し入れたと説明している。しかし、事業を主導していた研究チーム側は、資金の使用は適正であり、都からも問題視されたことはなかったと主張。むしろ、東京都の担当者との連絡が約3カ月間途絶えたことが中止の要因であると反論している。
都の担当者は「法政大に問い合わせてほしい」としており、事業の中止に関する詳細な説明は行っていない。
事業中止が与える影響とは? 都民の不安と課題
本事業は、都民のインターネット投票を経て採択されており、その中止によって、都民の信頼が損なわれる可能性がある。また、起業家教育の停滞により、地域経済や人材育成への影響も懸念される。
一方で、仮に資金の不正使用があった場合、早期に中止を決定したことは、さらなる問題拡大を防ぐという側面もある。しかし、東京都と法政大学の主張が大きく食い違っているため、透明性のある説明が求められる。
今後どうなる? 東京都と法政大学の対応策と展望
東京都と法政大学は、主張の食い違いを解消し、事実関係を明らかにする必要がある。特に東京都は、都民の投票を経て採択された事業である以上、透明性のある説明を行い、信頼回復に努めるべきだ。
今後の共同事業においては、資金管理や連絡体制の強化が求められる。また、プロジェクトの選定プロセスや運営の透明性を高めることで、都民の信頼を回復することが重要となる。