
アメリカのドナルド・トランプ大統領は2月19日、ウクライナのゼレンスキー大統領を「選挙のない独裁者」と厳しく批判した。SNSでは「米国のウクライナ支援は無駄だったのか?」といった声が上がる一方、ゼレンスキー氏を擁護する意見も見られ、議論が白熱している。
こうした中、サウジアラビアでは米国とロシアの高官が秘密裏に会談し、ウクライナ戦争の行方を左右する重要な交渉が行われていたことが明らかになった。ウクライナ支援の行方と戦争終結への道筋が大きく揺れる中、各国の動向に注目が集まっている。
トランプ大統領の「ゼレンスキー批判」が波紋 ウクライナ支援に疑問の声も
トランプ大統領は、自身のSNSでゼレンスキー大統領を「そこそこ成功したコメディアンがアメリカに3500億ドルを費やさせ、勝てない戦争に突入させた人物」と強く批判した。さらに、「彼は選挙を実施せず、ウクライナ国民の支持率も低い」と指摘し、「選挙のない独裁者」と断じた。
ウクライナ政府はロシアの侵攻を受け、国家非常事態として戒厳令を発令し、大統領選挙を延期している。しかし、ロシアのプーチン大統領は、ゼレンスキー氏が選挙を経ずに職務を続けていることの正当性に疑問を呈しており、トランプ大統領の発言はロシア側の主張を後押しする形となった。
この発言を受け、SNS上では賛否が大きく分かれている。トランプ支持者の間では「米国は無駄な戦争に資金を投じるべきではない」「ゼレンスキーは米国からの支援を当然のように受け取っているが、結果を出せていない」といった批判的な意見が多く見られる。
一方、ゼレンスキー大統領を擁護する立場からは「戦争中に選挙を行うのは現実的ではない」「ウクライナが持ちこたえているのは欧米の支援があるからだ」といった声が上がっている。特に、ウクライナがロシアとの戦争で存続の危機にある状況を考慮すれば、選挙の延期はやむを得ないとの見方も多い。
米露の極秘会談がサウジで開催 ウクライナ抜きで和平交渉は進むのか?
一方で、トランプ大統領の発言の陰で、サウジアラビアでは米国とロシアの高官が会談を行い、ウクライナ戦争の行方を左右する重要な交渉が進められていたことが分かった。18日、サウジアラビアの首都リヤドにあるディルイーヤ宮殿で、マルコ・ルビオ米国務長官とロシアのセルゲイ・ラブロフ外相が会談し、ウクライナ紛争の終結に向けた外交的な枠組みについて協議が行われた。
この会談には、米国側から国家安全保障担当のマイク・ウォルツ大統領補佐官とスティーブ・ウィトコフ特使が、ロシア側からはプーチン大統領の外交政策顧問ユーリ・ウシャコフが同席。交渉では、両国の外交関係を正常化させるための協議メカニズムの確立や、ウクライナ戦争を終結させるための具体的なプロセスが話し合われた。
しかし、会談後の発表では「ウクライナが交渉に参加しない限り、和平協議は進められない」との立場が強調された。米露間でどれほど話し合いが進んだとしても、ウクライナが参加しない限り、停戦合意には至らないという認識が共有された形だ。
サウジが和平の仲介役に? ウクライナの今後は「停戦」か「戦争継続」か
サウジアラビアがこうした会談の場として選ばれた背景には、近年の同国の外交政策の変化がある。ムハンマド・ビン・サルマン皇太子の主導のもと、サウジアラビアはロシアや中国とも関係を強化しつつ、米国や欧州とも協調を維持。中立的な立場で国際紛争の調停役を目指している。昨年以降、サウジアラビアはウクライナ情勢に関する国際会議を主催するなど、積極的な関与を見せており、今回の会談もその延長線上にあるとみられる。
ウクライナにとって、今後の選択肢は極めて厳しいものとなっている。トランプ大統領の発言を受け、米国が支援の継続に慎重な姿勢を示す中で、戦争を続ける場合には欧州諸国の支援のみに頼らざるを得ない。
しかし、現在の欧州の軍事支援体制では、ウクライナが必要とする兵器の供給が不足する可能性が高く、戦況を維持することは容易ではない。一方で、停戦交渉に応じる場合、ロシア側が求める「ウクライナの全面降伏」という厳しい条件を受け入れなければならず、ゼレンスキー政権にとっては極めて困難な決断となる。
今回のサウジでの会談が戦争終結への第一歩となるのか、それとも状況をさらに複雑にするのか。米国の支援が揺らぐ中、ウクライナはどのような決断を下すのか。トランプ大統領の発言と米露交渉の行方が、世界の注目を集めている。