広報専門家「トップの振る舞い見せるという意味では成功」
中居正広氏の性加害問題が大きな波紋が広がるなか、フジテレビは深夜に及ぶ異例の“やり直し会見”を行っている。ところが、その会見を視聴した人々からはまず「フリー記者の質問が冗長すぎる」「長々と持論を展開し、何を聞きたいのか分からない」という批判が相次いでいる。
一部のフリー記者の長広舌に「何が聞きたいのか不明」の声
記者会見の中継を見ていると、質疑応答が数時間を越えた段階で「一部の質問者の“ご高説”があまりにも長く、正直辟易した」「要点を簡潔に聞かないから、会見が混乱していたように見えた」といった投稿が多く見られるようになった。結果として、質疑応答の焦点がぼやけ、フジテレビ側から“踏み込んだ回答”を引き出すチャンスを自ら失っていたのではないかという指摘もある。
“エンドレス対応”とトップの振る舞い
一方、こうした“迷走気味”の質問に対し、フジテレビの経営トップ陣は深夜まで続く長時間の会見を最後まで乗り切った。5名全員が感情を露わにすることなく対応し続けたことで、「あの状況で動揺を見せなかったのは意外」「他のテレビ局には難しいのでは」と評価する声もあがっている。
下矢氏の見方「振る舞いを見せるという意味では成功」
こうした流れを受け、広報支援の専門家である下矢一良氏は「今回の会見が、意外な形でフジテレビに有利に働いた可能性がある」と指摘する。
「映像メディアでは『何を語ったか』より『どう振る舞ったか』が視聴者の印象に残りやすい。会見での質問があまりに冗長だったり、低レベルな言いがかりのように見えてしまうと、逆にフジテレビ側が“冷静な対応をしている”と映るわけです。しかも、トップ自らが感情的にならずエンドレスに答え続けたことが“誠意の表れ”に見える側面もある。ある意味で、フリー記者たちの振る舞いを“踏み台”にして、フジテレビが一枚上手に振る舞った形かもしれません」(下矢氏)
下矢氏は「フジテレビ、スゴイわ」と評する声まである現状を見て、「他社があれだけ長時間の会見を、自社中継可能な体制でやり切るのは難しい。振る舞いを見せるという面では、フジトップらが好印象を得る形になったのではないか」と続けた。
文春報道にも微妙な影響か
一連の騒動では、『週刊文春』などがフジテレビの現役アナウンサーらの証言を得て、被害を訴える女性の声を報じてきた。しかし今回の会見を経て、「フジテレビへの同情論がある程度広がれば、新たな証言者が尻込みしてしまうかもしれない」「会見に同情的な視聴者が増えれば、文春側への見方も変わる可能性がある」という見方もある。
下矢氏は「特にフリー記者の長広舌やレベル感の低さが目立ったことで、フジテレビ上層部が冷静に見え、世論が冷静さを取り戻す局面も生まれるかもしれない。文春のペースが崩れる可能性は否定できない」と指摘する。
他にも、70代の高齢者たちに10時間近くほぼ休みなしで記者会見をさせること自体が、見え方として人権侵害だろうという意見も出始めた。何より、一部の記者たちの質問内容が自己アピールや自分語りの場になってしまっていること、気の利いたことを質問していることに自身が悦に入っているようなご高説は、聞くに堪えないものも多く、視聴者の捉え方が変わり始めたといえるだろう。
一方で、会見自体は核心的な事実関係をほとんど明らかにしておらず、本質的な疑問は残ったままだ。
成功か否か、最終評価は今後の展開次第
とはいえ、フジテレビが抱えるガバナンス問題やスポンサー離れの懸念は依然として深刻だ。長時間の会見を通じて、被害女性の主張や社内のコンプライアンス体制の不備などについての十分な説明が行われたとは言い難いという批判も少なくない。
「トップの振る舞い」は成功だったといえるかもしれないが、今後の第三者委員会の報告や再発防止策が具体的に示されない限り、「見せ方」で稼いだ時間がいつまでも通用するわけではないだろう。下矢氏も「今回の会見でいったん落ち着いても、被害者救済と番組制作への影響について新たな事実が明るみに出れば、再び状況は一変する」と警鐘を鳴らしている。
フジテレビは3月末を目途に第三者委員会からの報告を受け、改めて企業風土の改革やコンプライアンス体制の抜本的見直しを進める方針だ。しかし深夜まで続いた会見で、具体的な道筋は示されなかったまま。残る大きな課題をどこまで解決できるのか、視聴者やスポンサー、そして被害を訴える女性の目は厳しく注がれ続けることになりそうだ。