岩屋毅外務大臣は25日、訪問先の中国で李強首相や王毅外相と会談し、中国人観光客向けのビザ発給要件を大幅に緩和する方針を明らかにした。
富裕層向けに10年間有効な複数回ビザを新設するほか、団体旅行ビザの滞在可能日数を延長する。インバウンド需要のさらなる拡大を狙うが、中国の度重なる挑発行為を懸念する声も上がっており、今後の日中関係の行方に注目が集まる。
日中外相会談、経済対話開催で合意
岩屋大臣と王毅外相の会談は、約3時間にわたり行われた。両外相は「戦略的互恵関係」の推進を確認し、来年の早い時期に王外相の訪日と、関係閣僚を交えた「ハイレベル経済対話」の開催で合意した。岩屋大臣は、日本産水産物の輸入再開や、沖縄県与那国島南方の日本の排他的経済水域(EEZ)内で見つかったブイの撤去を求めた。
ビザ緩和の具体的内容
今回のビザ緩和措置の主な内容は次の通り。
富裕層向けに10年間有効な複数回ビザを新設
団体旅行ビザの滞在可能日数を15日から30日に延長
65歳以上のビザ申請者に対する在職証明書の提出を免除
3年間有効な個人向け観光ビザの「取得後3カ月以内に入国」ルールを撤廃
これらの措置は、春ごろの開始を目指している。
狙いはインバウンド需要の拡大
日本政府は、今回のビザ緩和により、中国人観光客の増加と消費拡大を見込んでいる。特に、富裕層向けの10年間ビザは、高額消費につながることを期待している。地方への観光客誘致も期待されており、経済効果は大きいと予想される。
中国側の思惑
中国側は、ビザ緩和を通じて日中関係の改善をアピールし、経済協力を進めたい考えだ。日本市場へのアクセス拡大も狙っているとみられる。
国民の反応は賛否両論
確かに、ビザ緩和に対しては、経済効果への期待がある一方で、中国の安全保障上の脅威を懸念する声も少なくない。日本海域へのブイ設置、航空侵犯、靖国神社への迷惑行為、日本人への暴力事件など、中国の挑発行為が相次いでいる中でのビザ緩和に、不安感を抱く国民も多い。
また、岩屋外相の中国企業からの賄賂問題を引き合いに出し、アメリカに入国できないことを指摘し、中国重視の外交を続けることを問題視する声は多い。また、安全保障上の懸念も考えられる。ビザ緩和は、スパイ活動や犯罪の増加につながる可能性も懸念されている。政府は、安全保障上のリスクを最小限に抑えるための対策を講じる必要がある。
今後の日中関係
今回のビザ緩和は、日中関係改善への一歩となる可能性がある。しかし、両国間には領土問題や歴史認識など、依然として多くの課題が残されている。真の関係改善には、これらの課題解決に向けた継続的な対話が必要だ。