2024年のボジョレ・ヌーボーが解禁された。輸入コスト上昇圧力がある一方、主要メーカーは価格を据え置いた。市場縮小の中で需要喚起を優先した格好だ。生産地では気候変動の影響も顕在化している。
ボジョレ・ヌーボー解禁、各地でイベント
11月第3木曜日、午前0時。待ちわびた人々が集う各地のイベント会場で、2024年のボジョレ・ヌーボーの販売が解禁された。東京都内のワイン専門店では、早速グラスを傾ける人々の姿が見られた。
価格据え置きの背景
円安や原材料高で輸入コストが上昇しているにもかかわらず、サントリーやメルシャンといった主要メーカーは、主力商品の価格を据え置いた。「多くの人に手に取ってもらいたい」「秋の風物詩を楽しんでもらうため」と、各社は価格維持の理由を説明する。市場縮小の傾向が続く中、需要喚起を最優先した戦略だ。サントリーは輸入量を前年比17%増やすなど、積極的な販売姿勢を見せている。
一方で、サッポロビールは輸入を見送り、メルシャンも品ぞろえを絞るなど、各社の対応は分かれた。
気候変動が生産地に与える影響
今年のボジョレー地方は、温暖な冬から春先の低温、そして夏場の高温と多雨という天候に見舞われた。ブドウの生育は例年より遅れ気味で、病害のリスクも高まった。8月には高温と乾燥で糖度は上がったものの、雹による被害も発生した。ある生産者は、オーガニック農法での病害対策に苦労し、収穫量の減少を余儀なくされたという。気候変動の影響が、ブドウの栽培に大きな影を落としている。
市場の将来展望
フランス・ブルゴーニュ産ワインの新酒「ボジョレ・ヌーボー」の市場は2004年をピークに縮小傾向にある。2023年はコロナ禍からの回復で11年ぶりに輸入量が前年を上回ったが、今年は昨年並みと見込まれている。気候変動の影響が深刻化する中、生産量の確保と品質の維持は大きな課題となるだろう。一方、北海道では温暖化による気温上昇を背景に、高品質なワイン用ブドウの栽培が拡大している。こうした新たな産地が、将来のワイン市場をどのように変化させていくのか、注目が集まる。