今年の十五夜は9月17日。
古来より、人々は夜空に浮かぶ月に様々な想いを馳せてきました。とりわけ、秋の澄み切った夜空に輝く中秋の名月は、古今和歌集にも数多く詠まれ、日本の文化と深く結びついています。
2024年の今年は、滋賀県大津市にて、この特別な月を愛でるイベントが目白押しです。
琵琶湖畔の美しい景観と、月明かりに照らされた歴史的建造物が織りなす幻想的な空間は、訪れる人々に忘れ得ぬ感動を与えるでしょう。
本稿では、大津市が開催する中秋の名月イベントの魅力に迫り、その背後にあるサステナビリティへの取り組みを紹介します。
地域の資源を活かした幻想的な光の演出
大津市では、9月14日から11月17日の期間中、「よはのつきプロジェクトーびわ湖と月を愛でる秋ー」と題し、市内各所で幻想的なイルミネーションイベントを開催。
琵琶湖のビュースポット5箇所を舞台に、地域の伝統的な素材である竹やヨシを用いた灯りのオブジェが設置され、月明かりと相まって幽玄な空間を創出します。
注目すべきは、その環境への配慮です。
持続可能な社会の実現に向けて、近年、世界中でプラスチックごみの削減が叫ばれていますが、本イベントでは、間伐材である竹やヨシを積極的に活用することで、環境負荷の低減に貢献しています。
伝統とモダンの融合
大津港では、新たな日本文化として注目される竹あかりが、訪れる人々を暖かく包み込みます。
また、なぎさ公園(打出浜)では、職人の手によって精巧に作られた竹製の三日月アートが展示されるほか、市民参加型の竹灯籠も設置され、地域一体となったイベントとなっています。
さらに、なぎさ公園(におの浜)には、満月をイメージした巨大な竹まりが出現し、幻想的な雰囲気をさらに盛り上げます。
これらの展示は、伝統的な素材と現代的なデザインを融合させることで、新たな価値観を生み出しています。
これは、伝統を守りながら進化を続ける、大津市の文化的な魅力を示す好例と言えるでしょう。
水辺の癒しと生物多様性の保全
おごと温泉観光公園では、滋賀県を拠点に活動する切り絵作家・早川鉄兵氏による動物アートと、ヨシ灯りが織りなす幻想的な世界が広がります。
ヨシは、水質浄化や生物の生息地としての役割を担っており、その活用は琵琶湖の生態系保全にも貢献しています。
また、道の駅びわ湖大橋米プラザでは、体験型のヨシあかりアート展示やワークショップが開催されます。地域住民や観光客がこれらの活動に参加することで、環境問題への意識向上を促すとともに、地域活性化にも繋がる可能性を秘めています。
月と食と文化が交差する一夜
イベント期間中には、月をテーマにした様々な催しも開催されます。びわ湖と月を眺めながら映画を楽しむ野外上映イベント「OTSU-KIMI Lake Theater~湖畔に浮かぶ水上スクリーン~」では、幻想的な雰囲気の中で特別な時間を過ごすことができます。
また、10月には大津で古くから愛される「うなぎ」と、滋賀県産の日本酒を味わえる「OTSU-KIMI UNAGI&SAKE FES~お月見 うなぎ×湖酒まつり~」が、11月には滋賀県内の和スイーツが集結する「OTSU-KIMI Sweets Marche ~お月見 和スイーツマルシェ~」が開催されます。
地元の食材を活かした食体験を通して、大津の文化に触れることができます。
千年紀の歴史ロマンを体感
そして、忘れてはならないのが、紫式部ゆかりの石山寺で開催される「秋月祭」です。石山寺は、紫式部が琵琶湖に映る中秋の名月を眺めながら、かの有名な「源氏物語」の着想を得た場所と伝えられています。
期間中は、境内が源氏物語の世界観で彩られ、幻想的な雰囲気に包まれます。
さらに、特別行事として、石山寺座主による法話や、滋賀県在住唯一の講談師である旭堂南風氏による講談「源氏供養」も開催予定です。
【イベント情報】
●よはのつき 湖畔を彩る竹・ヨシあかり〜YOWANOTSUKI Illumination〜
びわ湖のビュースポット5箇所で、竹やヨシ(水辺に生える葦に似た植物)を使った灯りのオブジェを展示します。びわ湖を照らす月あかりと織りなす幻想的な空間をお楽しみください。
開催期間 9月14日(土)〜11月17日(日)点灯時間 17:30~21:00
※詳しい情報はこちら:https://yowanotsuki.jp/event.html