
小学生の夢が「ネット配信者」へ急変 調査結果の詳細
学研教育総合研究所の「幼児白書2025」「小学生・中学生・高校生白書2025」によると、自由回答形式(2つまで回答可)で集計した小学生の回答では、「ネット配信者」(ユーチューバー・インスタグラマーなど)が113名で1位を獲得した。2位は「パティシエ」110名、3位「警察官」92名、4位「学校の教員」87名、5位「医師(歯科医師含む)」69名と続いた。
男女別では男子が「ネット配信者」76名でトップ、女子は「パティシエ」104名が首位を維持したものの、女子でも「ネット配信者」が8位前後に浮上するなど、従来の傾向から変化が見られた。学年別では低学年で「警察官」や「運転士・運転手」が目立つ一方、高学年になるにつれ「ネット配信者」の割合が増加するパターンが確認された。
この結果は、2024年までの選択式調査から自由回答へ移行した影響も大きいと分析されている。従来は選択肢に縛られていたため顕在化しにくかった「ネット配信者」への関心が、子どもたちの本音として表面化した形だ。調査対象は小学生と保護者1200組で、2025年11月14日から19日にインターネットで実施された。
中高生で現実志向が顕著に 年齢による職業観の変化
一方、中学生では「会社員」75名が1位、「公務員」54名が2位、「学校の教員」49名が3位となった。高校生も同様に「会社員」74名、「公務員」52名、「学校の教員」47名が上位を占めた。
「エンジニア・プログラマー」も中高生で4位前後にランクインし、理系職への関心が安定している。学研教育総合研究所の川田夏子所長は「小学生ではネット配信者の人気が続いているが、中高生になると会社員など現実的な職業が上位に入る傾向がある。高校生ではエンジニア・プログラマーの人気が落ち着き、職業の多様化が影響している」と指摘した。
憧れ中心の小学生期から、安定や生活基盤を重視する中高生期への移行が明確に表れている。
ネット配信者の魅力と裏側 子どもたちが知るべき現実
「ネット配信者」が小学生の夢のトップに躍り出た背景には、スマホやタブレットの普及と動画配信サービスの日常化がある。成功した配信者の豪華な生活や自由な働き方が、子どもたちに「稼げて楽しそう」というイメージを与えている。
しかし、現実は厳しく、競争は激化しており、成功率は極めて低いと言われる。さらに深刻なのは、個人情報漏洩やストーカー被害、誹謗中傷などのリスクだ。
背景の窓や日常会話の断片から住所が特定される「身バレ」事例が相次ぎ、ストーカーによる待ち伏せや殺傷予告に発展するケースも報告されている。女性配信者を中心に、DMでの性的要求や家族攻撃も頻発し、メンタルヘルスを崩壊させる要因となっている。
人気配信者からの「やめとけ」警告 実体験に基づく厳しい声
こうしたリスクを身をもって知る現役・元配信者からは、小学生の夢ランキング1位となったことを受けて「やめとけ」という警告が相次いでいる。暴露系配信者として活動するポケカメン氏は、Yahoo!ニュースの関連記事を引用し「まじでやめとけ。配信者になった俺が言う」と投稿。
住所特定、卒アル晒し、本名ばらし、毎日コメント欄での誹謗中傷、当時の友人からの虚言拡散などを挙げ、「普通に就職して働け」と強く訴えた。この投稿は数千のいいねを集め、多くの共感を呼んでいる。また、VTuberや個人勢配信者からも同様の声が上がっており、「睡眠を削る」「外に出ない」など過酷な生活を強いられる実態や、ファンとの距離感の難しさを指摘する投稿が見られる。
人気VTuberの引退事例や、誹謗中傷による活動休止も相次いでおり、成功者の裏側を知る人ほど「夢を追う前にリスクを理解せよ」とのメッセージを発信している。
誹謗中傷の実態と対策 配信者保護の観点から
ネット配信者に対する誹謗中傷は、容姿や人格を直接攻撃する侮辱系(「ブス」「死ね」など)、事実無根のデマ拡散による名誉毀損系(不倫や犯罪歴の捏造)、家族を巻き込んだ攻撃(卒アル晒しなど)が主なパターンだ。ライブ配信中の連投荒らしや脅迫寄りのコメントも業務妨害として問題視されている。2022年の侮辱罪厳罰化以降、SNS関連の判決が増加しており、ANYCOLOR(にじさんじ)などの事務所が罰金刑や損害賠償を勝ち取る事例が続出している。
対策としては、コメントの即時非表示・ブロック、証拠保全(スクリーンショット保存)、プラットフォームへの通報が基本だ。深刻な場合は発信者情報開示請求や刑事告訴が可能で、2025年施行の情報流通プラットフォーム対処法により、大規模SNSの削除対応が強化されている。
配信者を目指す子どもたちには、リスク管理の教育が不可欠だ。背景を隠すバーチャル設定の活用、個人情報の厳格管理、ファンとの適切な距離感などが推奨される。親や学校が現実的な視点を提供し、夢を応援しつつ安全を優先するバランスが求められている。小学生の夢がデジタル化する中で、社会全体が子どもたちの職業観をどう支えるかが問われている。
人気配信者からの「やめとけ」という声は、憧れと現実のギャップを埋める重要な警鐘となっている。今後、こうした警告を踏まえた取り組みが、子どもたちの健全な夢の実現に寄与するだろう。



