
事件の概要と逮捕の経緯
警視庁久松署によると、再逮捕容疑は2022年1月から6月にかけてのもので、実際の従業員が10人未満だったにもかかわらず、知人らの名義を借りて約60人から70人分の架空従業員をでっち上げ、休業手当を支払ったとする虚偽の申請を行った。
こうして国の雇用調整助成金約1億1000万円をだまし取った疑いだ。夫妻は2020年4月から2023年1月までの約3年間にわたり、同様の手口を繰り返し、総額約6億5000万円を不正受給したとみられている。不正に得た資金は、都内の自宅や本社ビルのローン返済、山梨県内の土地購入、車などの高額商品購入に充てられていた可能性が高い。
夫妻は取り調べに対し、「申請したことは事実だが、当時は不正だと思っていなかった」などと容疑を否認している。警視庁はさらに詳細な資金の流れや使途を追及しており、事件の全容解明が進む見通しだ。このような巨額の不正受給は、コロナ禍で苦しむ多くの事業者が適正に活用した助成金制度への信頼を揺るがすものとして、厳しい批判を浴びている。
JCIT社の成り立ちと夫妻の経歴
JCITは主に中国人観光客向けの日本旅行を手配する会社で、東京都中央区に本社を置いていた。坂川馨容疑者は1992年9月に来日し、日本の音楽学院で学び、音楽活動を経て2003年に同社を設立した。
中国語をネイティブレベルで操る坂川容疑者は、会社設立当初から中国人コミュニティで知られる存在だった。夫の孟偉容疑者は中国籍で、在日华人旅行業関連の団体で理事長や会長を務めていた時期がある。夫妻はインバウンドブームの最盛期に事業を拡大し、中国人観光客の増加に伴ってツアーガイドチームを率いるなど、業界で一定の成功を収めていた。
コロナ禍以前は、中国語メディアや動画で事業の成功談を語る姿も見られ、華やかなイメージを前面に押し出していた。しかし、コロナ禍で観光業が壊滅的な打撃を受けた中で、事業継続が難しくなったとみられる。こうした状況下で助成金を不正に活用した疑いが浮上した。夫妻の経歴は、来日後の努力と業界での地位構築を示す一方で、事件によりその信頼が大きく損なわれる結果となった。
派手な生活の実態とSNS上の拡散
坂川馨容疑者の生活は、逮捕報道とともに注目された。SNSや過去の動画・写真では、赤みがかった長い髪に派手なネイル、豪華な指輪を着用した姿が映し出されている。
化粧中のクローズアップ写真や、黒地に金龍の刺繍が入ったチャイナドレス風の衣装をまとい、ピンクの羽扇を持ってステージでパフォーマンスする様子も公開されていた。これらの画像は、シャンデリアのような照明や花火を背景にした豪華な会場で撮影されたものが多く、まるでショーやパーティーのような華やかさを演出している。
夫の孟偉容疑者とともに、在日中国人コミュニティのイベントや旅行業界の集まりで目立つ存在だったようだ。こうした派手な生活の裏側で、不正受給した資金が使われていた可能性が指摘されている。国民の税金がこうした私的な贅沢に流用されたとの見方が広がり、ネット上では強い憤りの声が相次いでいる。
事件発覚後、これらの過去の写真や動画が再び拡散され、「血税で支えられた生活だった」との批判が集中している。
社会への影響と課題
この事件は、雇用調整助成金制度の悪用事例として、コロナ禍での不正受給問題を象徴するものとなった。厚生労働省の最新集計(令和7年12月末実績)によると、支給決定取消件数は4,557件、取消金額は約1,139億円に上り、回収済額は約885億円となっている。
一方、東京商工リサーチの公表企業集計では、2020年4月から2025年12月までの累計で1,889件、総額約613億円に達しており、公表件数はピーク時(2023年の692件)から半減傾向にあるものの、依然として巨額の不正が続いている。こうした全国規模の不正の中でも、JCIT社による約6億5000万円という金額は、特に目を引く事例だ。
制度の趣旨が従業員の雇用維持にあるにもかかわらず、従業員数を水増しした虚偽申請による詐取は、制度全体の信頼を根本から損なう行為である。さらに、夫妻が外国人である点がネット上で議論を呼び、「国外追放を」「全財産没収を」といった厳罰を求める声が上がっている。ただし、捜査・処分は法令に基づいて公正に進める必要があり、感情的な意見に左右されず、適正な手続きが求められる。税金の適正使用と助成金制度の厳格な運用が今後ますます重要だ。
国民の血税が不正に流用されたこの事件は、不正受給防止のための審査強化、罰則の厳格化、返還・回収体制の改善など、再発防止に向けた具体的な対策を社会全体で推進する契機となるべきだ。



