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「AIあんの」中身はGemini? 天才エンジニアが晒した死角でSNSは炎上

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安野たかひろさんのHPより
安野たかひろさんのHPより

選挙をアップデートするはずが、露呈したのはデジタル植民地の現実と、批判者への監視宣言――。深夜4時、雪見だいふくを片手に語った失言が、期待の星を窮地に追い込んでいる。

 

2026年衆院選。新興政党チームみらいは比例代表で11議席を獲得し、国政に一大旋風を巻き起こした。その原動力となったのが、党首・安野貴博氏が開発を主導した対話型AI「AIあんの」だ。

24時間365日、有権者の疑問に即答し、マニフェストを分かりやすく噛み砕くそのシステムは、政治へのアクセス障壁を劇的に下げた。この利便性こそが未来だ――多くの無党派層がそう感じ、一票を投じたことは紛れもない事実であり、日本の選挙戦における画期的なイノベーションだったと言える。

しかし今、その栄光は、開発者である安野氏自身の不用意な発言と、その後の対応によって大きく揺らいでいる。

 

深夜4時、雪見だいふく片手のうっかり発言

事態が動いたのは投票日直前の2月4日未明。YouTube番組『ReHacQ(リハック)』の生配信中だった。 深夜4時まで対応に追われ、疲労の色が見える安野氏は、好物の雪見だいふくを口にしながらリラックスした表情を見せていた。

しかし、視聴者からの「AIのベースモデルは何か?」という問いに対し、こう口を滑らせた。

「AIのベースモデルは、たしか今はGemini(Google製)だったと思います」

 

この一言が、引き金となった。GoogleのGemini利用規約には、選挙活動への利用を制限する条項が含まれているからだ。コメント欄で即座に指摘を受けた安野氏は、「あれ、Geminiかも…Claudeかも…」と、自党の看板システムの根幹技術について曖昧な態度を露呈してしまった。

天才エンジニアという触れ込みにもかかわらず、自らが開発したとするシステムの中身を把握していない。この事実は、彼を信じていた技術者層や支持者に少なからぬ衝撃を与えた。

 

ガワだけのハリボテ、情報流出…SNSに溢れる失望

この放送を受け、SNS上では技術者や有権者からの失望の声が噴出した。 チームみらい側はその後、エンジニアチームが確認したとして「Geminiというのは安野さんの勘違いで、現在はClaudeを使用している」と訂正したが、これが火に油を注ぐ結果となる。

ネット上では、「外資の汎用AIにそのまま情報を流し、外国人からの提案もそのまま採用するシステムだった」という厳しい指摘が目立つ。

 

例えば、Xユーザーの桃太郎+2氏は、「そもそも安野が自分で開発したかのように誇大宣伝していた点」を問題視し、「国政の政策に反映させると言いながら外資の汎用AIにそのまま情報を流し、外国人からの提案もそのまま採用するシステムだった」と厳しく指摘している。

実際、安野氏は選挙期間中、Xで「安野陣営はAIあんのなどさまざまなものを開発していますが、全て選挙後にコードをオープンソースで公開予定です」と発信しており、あたかも独自の技術基盤を構築しているかのような印象を有権者に与えていた。その開発の実態が、海外製AIのAPIを繋いだだけのものだったという落差に対し、「GeminiとClaudeじゃ全然違いますし、それを把握してないなんて開発者・チームとしてありえません」といった、技術トップとしての資質を問う声が相次いだ。

さらには、「『AIあんの』が24時間、質問に答えるという近未来的ナラティブを語り、リテラシーの低い層を集める。情報商材と同じ、詐欺的構造」と断じる意見や、「これではAI、ITがガワどころかハリボテと言わざるを得ない」といった落胆の声まで拡散している。

有権者が期待したのは、天才エンジニアが作った日本独自のセキュアなシステムだった。しかし蓋を開けてみれば、海外製AIのAPI(接続窓口)を利用規約も読まずに繋ぎこんだだけのサービスに過ぎないのではないか。そんな疑念が深まる結果となった。

 

デジタル主権の不在:米企業の憲法に従属する日本の政治

だが、本件のより深刻な問題点は、単なる技術的なミスや規約違反ではないと指摘する人がいる。デジタル主権・国際金融インフラを専門とするルポライターの昼間たかし氏(@quadrumviro)はSNSでこの問題の核心を突いている。

昼間氏は、訂正後のClaudeを提供しているAnthropic社には、Claude’s Constitution(クロードの憲法)と呼ばれる独自の倫理規定が存在することを提示。そこには「不当な権力の集中を助ける行為への協力を拒否せよ」といった文言が含まれている。

つまり、日本の国会議員である安野氏の政治活動が、米一私企業が定めた憲法(ルール)の許容範囲内でしか行えない構造になっているという点だ。

 

昼間氏はこれをデジタル植民地の典型例であるとし、次のように警鐘を鳴らす。

「主権者たる国会議員が、特定企業の定義する『AI憲法』の認可範囲内でしか政治活動できないという、構造的従属そのものだ」

もし明日、米企業が「日本のこの政策はNG」と判断して規約を変更すれば、チームみらいの頭脳は停止する。自前のインフラを持たず、他国のプラットフォームの上で革新を叫ぶことの危うさが、露呈してしまったのだ。

 

安野氏の反撃:分析ツール宣言が招いた新たな恐怖

こうしたデジタル主権に関わる本質的な批判に対し、安野氏が2月15日に取ったリアクションが、さらなる波紋を呼んでいる。 安野氏はX上で、誤情報への対応を検討するとした上で、次のように宣言したのだ。

〈エンジニアチームが分析用のツールを作りはじめています。時系列で、いつどれくらいどのような投稿があったか、アカウント間の繋がりなどを見える化しながら、対応を見定めたい〉

 

本来であれば、技術的な透明性の確保や、デジタル主権への見解を示すべき場面だ。しかし、彼が提示したのは、高度なITスキルを用いた批判者の相関図作成(ソーシャルグラフ分析)とも受け取れる対抗措置だった。これには支持者層からも、「ご意見の分析を超えて、批判的なアカウントのネットワーク監視(ブラックリスト作成)に繋がりかねない」といった懸念や、「誰が音頭を取って炎上させているかを特定しようとしているわけか」という不信の声が上がっている。

技術を市民の声を聞くためではなく、批判者を特定・分析するために使うのか。その姿勢が、新たな火種となっている。

 

それでも国産で作れない悲しき現実と、未来への責務

一連の騒動に対し、詐欺師や売国奴といった過激な誹謗中傷、あるいは出所の怪しい情報を紐づけて浴びせるのは、現段階では証拠のない人は自重すべきだろう。何より悲しいかな、冷静に日本の技術現状を見れば、GoogleやAnthropicに匹敵する性能を持つ国産LLM(大規模言語モデル)を一朝一夕に構築することは不可能に近い。限られたリソースと時間の中で、選挙期間中に実用的なシステムを稼働させようとすれば、海外製APIの利用はエンジニアリングの観点からは合理的かつ不可避な選択肢でもあった。

事実、AIあんのは多くの有権者を助け、政治を身近なものにした。その功績まで否定されるべきではない。

 

だからこそ、安野氏にはエンジニアとしての誠実さに立ち返ってほしい。「確認したらClaudeだった」という場当たり的な弁明や、「批判者を分析する」という強権的な姿勢ではなく、まずは現在の日本の技術力では海外依存せざるを得ない現実を率直に認めること。

その上で、自身が掲げるデジタル主権をどう取り戻していくのか、そのロードマップを有権者に示すことこそが求められている。

11議席という民意は、単なる便利なツールへの評価ではなく、技術で社会を良くしてくれるはずだという安野氏の知見への信頼の証だ。

その高い能力を、批判者の封じ込めではなく、真の意味での自立した日本のデジタル基盤を構築するために使ってほしい。今回の炎上を教訓に、チームみらいが真の未来を見せてくれることを願ってやまない。

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寒天 かんたろう

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ライター歴26年。月刊誌記者を経て独立。企業経営者取材や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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