
ライブ配信で巨額の収益を得る時代、その裏側で配信者の安全はどこまで守られているのか。ふわっちのトップ配信者・養分@伊藤氏が拉致監禁され、身代金4億円を要求されていた事件は、配信者文化が抱える深刻な危うさを社会に突きつけた。
自宅前で起きた拉致事件 配信者を狙った計画的犯行
2026年1月、ライブ配信業界を震撼させる重大事件が発覚した。ライブ配信サービスふわっちでトップクラスの人気を誇る配信者、養分@伊藤氏が、1月14日頃に自宅前で拉致され、約6日間にわたり監禁・暴行を受けていたことが明らかになった。
事件が起きたのは昼間だった。養分氏はリハビリ通院のため自宅を出た直後、自宅前に停車していたハイエースに近づいてきた覆面の男3人に囲まれ、そのまま車内に押し込まれたという。犯人らはゴム手袋を着用し、結束バンドで両手を拘束。マスクを複数枚重ねたうえでガムテープを使用し、視界と自由を完全に奪った。
突発的な犯行とは考えにくく、養分氏の生活動線や外出時間を把握した上で実行された可能性が高い。自宅前という最も無防備な場所が狙われた点は、配信者という職業が抱える構造的リスクを象徴している。
光のない監禁生活と暴行 巧妙に隠された異変
拉致後、養分氏は複数の場所を転々としながら監禁された。
光の入らない環境で3日以上を過ごし、食事は水やウイダーinゼリー程度に限られていたという。極度の緊張と恐怖の中で、肉体的にも精神的にも追い詰められていった様子がうかがえる。
犯人らは養分氏のスマートフォンを操作し、SNSやLINEを通じて本人を装った投稿やメッセージを送信。「病んでるだけ」「気にすんな」といった文言で、周囲に違和感を抱かせないよう細工していた。日頃から配信者が体調不良や精神的浮き沈みを公言する文化を逆手に取った、極めて悪質な手口だった。
FaceIDを使用するため顔への暴行は避けられたものの、顔以外には複数回の暴行を受けたとされる。特に手首は結束バンドが深く食い込み、皮膚がえぐれるほどの重傷を負っていた。監禁は単なる拘束ではなく、明確な暴力を伴う犯罪行為だった。
4億円要求に膨張した身代金 狙われた配信者の収益力
犯人グループが要求した身代金は、当初は数千万円規模だったとされる。
しかし途中で「もっと取れる」という情報が入ったことで要求額は一気に膨らみ、最終的に4億円に達したという。
背景には、養分氏がふわっち内でも突出した収益を上げる配信者であるという事実がある。ギャンブル配信や日常配信で人気を集め、月収は3000万円超、年商は億単位とも言われてきた。こうした情報は、本人が発信してきた内容や配信内での発言、視聴者間の共有によって半ば公然の事実となっていた。
犯人らはサラ金契約の強要や法人口座の乗っ取りも試みたとされ、単なる恐喝ではなく、配信者の資産構造を熟知したうえでの犯行だった可能性が高い。成功した個人配信者が、組織犯罪のターゲットになり得る現実が露わになった。
命懸けの脱出と警察保護 重大事案へ発展した捜査
監禁6日目、見張りが1人になった隙を突き、養分氏は結束バンドを緩めて切断。窓から脱出し、数百メートル逃走した。しかし途中で追いつかれ、揉み合いになる緊迫した状況に陥ったという。
その際、異変に気づいた近隣住民が通報し、警察が現場に到着。養分氏は無事保護された。保護時、全身に複数の外傷が確認され、すぐに病院で治療を受けたとされている。
一方で、ネット上では「話が出来すぎている」「台本ではないか」「ふわっちがつまらないからやっただけ、ふわっちは反社」といった懐疑的な声も一部で噴出している。
警察は逃走中の犯人の捜査をしており、現時点で事件を虚偽や演出と断定できる要素は確認されていない。
コレコレ配信で明かされた真相 配信者文化への警鐘
事件の詳細が公になったのは、暴露系配信者として影響力を持つコレコレ氏がツイキャスで行った生配信だった。養分氏は保護後、配信仲間のぜろわん氏やコレコレ氏とビデオ通話を行い、監禁中の状況を生々しく語ったという。
この配信をきっかけに、X上では「怖すぎる」「配信者界の闇」「よく生きて帰ってきた」といった声が相次ぎ、関連ワードがトレンド入りした。視聴者の衝撃と同時に、配信者という職業の危険性に改めて注目が集まった。
また他の人気配信者たちも「引っ越したい」「本当に恐ろしい事件」「怖すぎて外出れない」など他人事ではないと投稿している。
事件後、養分氏はX上で支援への感謝を伝える投稿を行い、「生きて帰れたのは多くの人のおかげ」と胸中を明かした。その後に行われた復帰後初の配信では、同時視聴者数が3万人を超え、事件への関心の高さと、同氏が持つ影響力の大きさを改めて示す結果となった。
年商億超えの金持ち配信者、住所がネット上で特定可能な状態、行動予定を事前に告知する配信文化。これらはファンとの距離を縮める一方で、犯罪者にとっては極めて都合の良い情報源となる。今回の事件は、配信者個人の問題にとどまらず、配信プラットフォーム、視聴者、社会全体に安全意識の再構築を迫る警告と言える。



