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【第49回日本アカデミー賞】映画『国宝』が最多13部門17賞を受賞、俳優陣8名が席巻する歴史的快挙

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映画『国宝』
映画『国宝』 公式Instagramより

日本映画界に新たな金字塔が打ち立てられた。2026年1月19日、第49回日本アカデミー賞の優秀賞が発表され、李相日監督の「国宝」が作品賞を含む13部門17賞を受賞。同一作品から計8名の俳優が選出されるという、同賞の歴史を塗り替える圧倒的な快挙を成し遂げた。シネマトゥデイなどの報道によれば、授賞式は3月13日に開催される。

 

俳優部門を独占する「8名の精鋭」が放つ異彩

今大会で最も特筆すべきは、主要キャストのほとんどが優秀賞を受賞したという、俳優部門における圧倒的な占有率である。

主演男優賞の吉沢亮(31歳)を筆頭に、助演男優賞には横浜流星(29歳)、田中泯(80歳)、渡辺謙(66歳)の3名が名を連ねた。

さらに、助演女優賞には高畑充希(34歳)、寺島しのぶ(53歳)、森七菜(24歳)が選出され、新人俳優賞には見上愛(25歳)が選ばれている。

一つの作品から計8名もの俳優が同時に個人賞を受賞するのは、日本アカデミー賞の歴史を紐解いても事件と呼べるレベルの異例事態だ。

通常、群像劇であっても数名に絞られるのが通例だが、本作においては誰一人として欠かすことのできないピースとして、選考委員たちの心を動かしたことが伺える。

これは、李相日監督が徹底して俳優の限界を突き詰める演出家であることと無関係ではない。一人ひとりの俳優が、自身のパブリックイメージを脱ぎ捨て、昭和から平成、令和へと続く歌舞伎の血脈の中にその身を投じた結果、全員がその役としてしか存在し得ない領域に到達したのである。

また、本作は興行的にも驚異的な数字を記録している。2025年11月には、興行収入173.7億円を突破。

これにより、それまでトップだった「踊る大捜査線 THE MOVIE 2」(173.5億円)を22年ぶりに抜き去り、邦画実写の歴代興行収入1位に躍り出た。なお、日本映画全体の歴代1位は「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」(407.5億円)であるが、実写映画としてこれほどまでの支持を得たことは、本作が国民的な関心事となった証左といえるだろう。

 

吉沢亮と横浜流星が捧げた「1年半の心血」

本作の圧倒的なリアリティを支えているのは、俳優陣が費やした膨大な準備期間と、精神を削るような役作りである。特に主演の吉沢亮と、そのライバル・大垣俊介を演じた横浜流星の二人は、撮影開始の約1年半前から歌舞伎と日本舞踊の特訓を開始した。

単なる振付の習得ではなく、歌舞伎役者特有の重心の低さ、指先までの神経の通い方、そして何より舞台上で放たれる芸のオーラを体得することが求められた。

吉沢は、任侠の家に生まれながら芸の道に魅せられ、やがて人間国宝へと上り詰める立花喜久雄を演じるにあたり、少年期から晩年までの数十年を演じ分けた。

インタビュー等において、吉沢は「歌舞伎役者の方々は人間ではなく芸そのものを見せている。自分にそれができるのか、常に恐怖心があった」と述懐している。稽古を重ねるほどに伝統の深淵に触れ、一時期は職人レベルになるのは不可能だと絶望感すら抱いたという。

しかし、その届かないものに手を伸ばすという絶望感こそが、劇中の喜久雄が芸の道に狂い、孤独を深めていく内面と共鳴していった。横浜流星との稽古は互いに高め合う果たし合いのような空気感であったといい、その緊張感がスクリーンから溢れ出している。

 

田中泯と渡辺謙、ベテラン勢が示した「芸の深淵」

若き才能たちが火花を散らす一方で、物語に重厚な格式と説得力を与えたのが、重鎮たちの存在である。

上方歌舞伎の家元・花井半二郎を演じた渡辺謙は、2つの本格的な演目をこなすために4ヶ月もの猛練習を積んだ。国際派俳優として数々の難役をこなしてきた渡辺でさえ、歌舞伎という世界の重圧は別格だったと語る。

また、喜久雄の師匠格である小野川万菊を演じた田中泯の存在は、本作の芸術的価値を決定づけた。80歳を迎えた田中は、舞踊家としての天賦の才能を抑え込み、歌舞伎の型の中に自身の肉体を押し込むという、極めて高度な身体表現を披露した。

渡辺謙は現場で田中の演技を目の当たりにし、地面に頭がつくほど感服した、あそこまでの領域に達するにはどれほどの積み重ねが必要なのかと畏敬の念を隠さなかったという。寺島しのぶや高畑充希といった実力派女優陣もまた、梨園という特殊な世界で生きる女性たちの矜持と悲哀を見事に体現した。彼女たちの繊細な演技がなければ、男たちの芸への狂気は単なる独りよがりに終わっていたかもしれない。

第48回大会の顔ぶれから見る「国宝」の衝撃

本作がいかに突き抜けた存在であるかは、前年に行われた第48回日本アカデミー賞(2025年開催)の主な受賞結果と比較することでより鮮明になる。前回の主な受賞リストは以下の通りだ。

  • 優秀作品賞:『侍タイムスリッパー』(最優秀賞)、『正体』、『キングダム 大将軍の帰還』、『夜明けのすべて』、『ラストマイル』
  • 優秀主演男優賞:横浜流星(『正体』最優秀賞)、山﨑賢人、草彅剛、山口馬木也、綾野剛
  • 優秀主演女優賞:河合優実(『あんのこと』最優秀賞)、石原さとみ、満島ひかり、上白石萌音、草笛光子
  • 優秀助演男優賞:大沢たかお(『キングダム 大将軍の帰還』最優秀賞)、山田孝之、岡田将生、佐藤二朗、内野聖陽
  • 優秀助演女優賞:吉岡里帆(『正体』最優秀賞)、山田杏奈、芦田愛菜、土屋太鳳、清原果耶

前回は、藤井道人監督の『正体』が最多12部門を受賞し、横浜流星が主演男優賞で最優秀賞を手にするなど、現代劇の力強さが目立った。しかし今回の『国宝』は、それを上回る13部門17賞という、同賞の歴史を塗り替える数字を叩き出した。前回の主演男優賞を制した横浜流星が、今回は助演男優賞として吉沢亮を支え、高め合う構図となっている点も特筆に値する。また、前回最優秀主演女優賞を射止めた河合優実が、今回は司会として登壇する予定であり、日本映画界の着実な継承が映し出される式典となりそうだ。

 

3月13日、日本映画史に刻まれる「最優秀賞」の行方

授賞式は3月13日、司会に羽鳥慎一アナウンサーと河合優実を迎えて行われる。

注目は、やはり13部門17賞を受賞した「国宝」が、果たして幾つの最優秀賞を手にするかという点に尽きる。特に助演男優賞部門では、横浜流星、田中泯、渡辺謙という、同一作品の3名が席巻しており、誰が選ばれてもおかしくない、あるいは選ぶこと自体が酷とも言えるハイレベルな争いとなっている。

吉田修一の壮大な原作を、李相日監督が執念の映像美で描き切り、俳優陣が文字通り命を削って芸を体現した本作。それは単なるフィクションの枠を超え、日本人が受け継いできた美への執着を、現代の観客に突きつける鏡となった。3月13日、グランドプリンスホテル新高輪の壇上で語られる言葉の数々は、これからの日本映画が歩むべき道筋を示す灯火となるだろう。我々は、日本映画史の歴史が塗り替えられる瞬間を、静かに、しかし熱い期待を持って見守るべきである。

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ライター:

千葉県生まれ。青果卸売の現場で働いたのち、フリーライターへ。 野菜や果物のようにみずみずしい旬な話題を届けたいと思っています。 料理と漫画・アニメが大好きです。

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