生活の基盤である「ガス」の取り扱いにおいて、基本中の基本とも言える確認不足が、あわや大惨事につながりかねない事故を引き起こした。
経済産業省は2026年1月13日、神奈川県相模原市内の一般集合住宅において、一酸化炭素(CO)中毒事故が発生したと発表した。事故が起きたのは1月9日(金)の夕刻。幸いにして被害者2名は軽症で済んだものの、その原因は「ガスの種類の取り違え」という、あまりに初歩的かつ危険なミスであったことが判明している。
都市ガス用機器をLPガスで稼働させた「不完全燃焼」の恐怖
経済産業省および関東東北産業保安監督部への報告によると、事故の概要は以下の通りである。
1月9日16時15分頃、相模原市内の集合住宅にて、居住者が体調不良を訴えた。供給事業者であるレモンガス株式会社(東京都)からの報告によれば、原因は「LPガスが供給されている住宅において、誤って都市ガス用のビルトインコンロを接続・使用したこと」にあると推定されている。
本来、ガス機器は供給されるガスの種類(都市ガス12A・13A、またはプロパンガスなど)に合わせて設計されている。今回のケースでは、LPガス環境下で、都市ガス用に設計された株式会社パロマ製のビルトインコンロ(型式:P1423A0LHK、2025年7月製造)が使用されていた。
ガスの成分やカロリーが異なるため、この組み合わせで使用すれば正常な燃焼は望めない。結果として機器は不完全燃焼を起こし、猛毒である一酸化炭素が発生。室内に充満し、消費者2名が中毒症状を呈する事態となった。最新の2025年製機器であっても、前提条件を誤れば凶器となり得る現実が浮き彫りになった形だ。
わずかな違和感が命の危険信号―再発防止への教訓
今回のような「異種ガスの誤接続」は、引っ越しシーズンやリフォーム時、あるいはネットオークション等で個人が機器を調達した際に起こりやすい。
産業保安・安全グループガス安全室は、今回の事故を受け、改めて注意喚起を行っている。 「ガス機器には必ず適合するガスの種類を示したラベルが貼られている。使用前には、自身の住居に供給されているガス種(都市ガスかLPガスか)と、機器のラベルが一致しているか必ず確認してほしい」とし、不明な点は地元のガス事業者へ問い合わせるよう求めている。
また、一酸化炭素中毒は「無臭の暗殺者」とも呼ばれる。初期症状は「前頭部の軽い頭痛」や「吐き気」など、風邪や疲れと混同しやすい。ガス使用中に少しでも体調に異変を感じたら、躊躇なく使用を中止し、換気を行うとともに、直ちにガス事業者や保安機関へ連絡を入れるべきだ。
たった一つの確認作業が、自分と家族の命を守る防波堤となる。今回の相模原での事例を、対岸の火事としてはならない。



