
芸能関連会社「カケルエンターテイメント」代表取締役の粟津彰容疑者(51)が、15歳の女子中学生をアダルトビデオに出演させたとして逮捕された。
「顔はAIで加工する」という卑劣な嘘で少女を欺き、自らも出演して撮影を繰り返していた手口は極めて悪質である。容疑者はGACKT氏の関連事業を手掛けるなど業界で一定の地位にありながら、その裏で「トー横」周辺の少女らを標的に、1700点に及ぶ動画を販売し巨額の利益を得ていたとみられる。
歌舞伎町の闇に消えた15歳の尊厳
新宿・歌舞伎町の喧騒は、時として人の良心を麻痺させるのか。それとも、この男の心根がもともと腐敗していたのか。
警視庁少年育成課が1月8日までに逮捕した、芸能関連会社「カケルエンターテイメント」の代表取締役、粟津彰(あわづ・あきら)容疑者(51)。その容疑は、あまりにも卑劣で、反吐が出るほどに醜悪なものだった。昨年7月、新宿区内のホテルで、当時15歳の女子中学生に対し、現金4万円を渡してわいせつな行為を行い、その様子をアダルトビデオ(AV)として撮影・販売したという。
「女の子は18歳だと思っていた」
粟津容疑者は取り調べに対し、そう供述し容疑を一部否認しているという。しかし、この言葉を額面通りに受け取る者は誰もいないだろう。51歳の成熟した大人が、中学生と高校生、あるいは成人の区別もつかぬまま、巨額の利益を生む「商品」として少女をカメラの前に立たせたというのか。それは、教育の最高峰である京都大学工学部を卒業したという、彼の輝かしい経歴に対する最大の侮辱ですらある。
巧妙かつ残忍な「AI加工」という名の詐欺的勧誘
本事件で最も論議を呼んでいるのが、最新技術を悪用した欺瞞の手口だ。捜査関係者によれば、粟津容疑者は少女に対し「顔はAIで加工して、誰だか分からないようにするから大丈夫だ」と言い含めていた。
SNSの普及やディープフェイク技術の台頭により、若年層にとって「デジタル加工」は身近なものとなっている。その心理的ハードルの低さを突き、少女を安心させて撮影に踏み切らせた行為は、単なるわいせつ事件の枠を超えた「知能犯罪」の側面を持つ。
しかし、実際に制作・販売された動画を確認すると、施された加工は極めて不十分であり、個人の特定が容易な状態であった。一方で、相手役として出演していた粟津容疑者自身は、自らの顔を厳重に隠していたという。被害者の未来はデジタルの海へ無防備に放り出し、自分だけは安全な陸地からその利益を啜る。この構図に、容疑者の人間性の欠如が凝縮されている。
「カケルエンターテイメント」とGACKT氏を巡る衝撃
粟津容疑者が社長を務めていた「カケルエンターテイメント」は、決して無名の零細企業ではない。同社は、日本を代表するアーティストであるGACKT(ガクト)氏のライブ制作やファンクラブ運営の一部を担っていたとされる。
この点について、GACKT氏は1月9日、自身のX(旧ツイッター)を更新し、声明を発表した。
ファンクラブ運営会社の委託先に関わっていた元役員が事件を起こし逮捕されたことを「報道で知った」とした上で、「プロジェクトのトップに立つ立場として、この事実を重い現実として受け止めている」と言及した。
そのうえでGACKT氏は、「業務の下請けに関わっていた人物とはいえ、少しでも自分に関わっていた人間が、裏でこのような行為をしていたと思うと、正直、ヘドが出る」と率直な嫌悪感を示し、「大人として、人として、あり得ない行為だ」と強く非難。「怒りよりも先に湧いてきたのは、深い失望と嫌悪感、そして言葉にできない虚しさだ」と胸中を明かした。
また、未成年者への加害行為については、「どんな理由や立場を持ち出そうと、決して許されるものではない」と断じ、「これは単なる個人の問題ではない。人として越えてはならない一線を踏み越えた、恥ずべき行為だ」と強調。事件を起こした当人に対し、「司法による厳正な裁きを強く求めたい」と訴えた。
一流のアーティストがファンに夢を届ける、その舞台裏を支える組織のトップが、裏では少女たちの絶望を量産していたという現実は、芸能界のみならず社会全体に強烈な衝撃を与えた。
GACKT氏自身に罪はないにせよ、本人が「名前や肩書きの問題じゃない。同じ現場に関わっていた人間の中に、人として決定的に壊れている存在がいたという事実そのものが不快で、許し難い」と述べた通り、こうした卑劣な犯罪者が「芸能プロデューサー」という肩書きを盾に、若者の夢を餌食にしてきた構造的欠陥を看過することはできない。
捜査当局によると、押収されたハードディスクからは、10代から20代とみられる女性の動画が約1700点発見されたという。これは本件が氷山の一角に過ぎず、余罪が極めて膨大である可能性を示唆している。昨年1月から10月までのわずか10カ月間で得たとされる約1000万円の売り上げは、少女たちの涙と引き換えに築かれた砂上の楼閣にほかならない。
AV出演被害防止・救済法の限界と、日本の「刑罰」への疑問
今回、粟津容疑者には「AV出演被害防止・救済法」違反の疑いもかけられている。2022年に施行された同法は、出演契約書の交付義務などを通じて若年層を守るためのものだが、本件のような「中学生を騙して出演させる」という、法律以前の道徳的崩壊に対しては、その罰則があまりに心許ない。
同法違反の罰則は、6カ月以下の拘禁刑、もしくは100万円以下の罰金だ。数千万円の利益を上げ得るビジネスを行っている者にとって、この程度の罰則がどれほどの抑止力になるというのか。15歳の少女が負った、一生消えない精神的苦痛と、ネット上に残り続けるデジタル・タトゥーの重みに対し、法が提示する「対価」はあまりに軽すぎる。
また、日本の児童性犯罪に対する全体的な刑罰の軽さも、改めて厳しく問われるべきだ。諸外国、特に欧米諸国では、未成年者に対する性犯罪は社会からの「完全な排除」を意味する。数十年の禁錮刑や、出所後の厳格な監視が当然とされる国々と比較して、日本はいつまで加害者の「更生」や「一時の過ち」という甘い言葉に寄り添い続けるつもりなのか。
政治の不作為が「トー横」の悲劇を再生産する
「トー横」周辺に集まる少女たちは、家庭や学校に居場所を失い、誰かに認めてほしい、助けてほしいという切実な願いを抱いている。粟津容疑者は、その純粋な渇望を、金銭と性欲を満たすための「資源」として利用した。
これに対し、国会議員諸氏は何をなしてきたか。街頭演説で「子供たちの未来を守る」と叫ぶ裏で、こうした具体的な性搾取を根絶するための実効性ある厳罰化を、なぜ後回しにしてきたのか。
必要なのは、言葉だけの同情ではない。
- 未成年者を対象とした性犯罪の法定刑を、殺人罪に準ずるレベルまで大幅に引き上げること。
- 「AI加工」などの欺瞞を用いた撮影に対する新たな重罰規定を設けること。
- 性搾取によって得た利益の全額没収と、被害者への生涯にわたる公的支援。
これらを実現せずして、日本が「先進国」を名乗る資格はない。
粟津彰という男が壊したもの
粟津容疑者は、自身の性欲に負けたと供述しているという。だが、その一時の「負け」の代償を支払わされているのは、彼ではなく、名前も顔も晒された15歳の少女である。
彼は、少女の「大人への信頼」を壊し、彼女が歩むはずだった「普通の人生」を壊した。そして、京都大学という学府が象徴する「知性」の価値を汚し、エンターテインメントという「夢」の場所を泥にまみれさせた。
司法は、この男に対して、考え得る限り最も厳しい裁きを下さなければならない。そして我々社会は、二度と「トー横」が「捕食者の猟場」とならないよう、法と倫理の両面から防壁を築く義務がある。
粟津彰という名前を、我々は忘れてはならない。それは、この国の法と正義がいかに脆弱であるかを突きつけた、羞恥の記録だからである。



