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トー横で「決闘罪ニ関スル件」適用 歌舞伎町タイマン致死事件が突きつけた明治の禁令

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決闘罪

歌舞伎町トー横広場で起きた傷害致死事件に、明治制定の「決闘罪ニ関スル件」が適用された。137年前の法律は何を禁じ、なぜ今も生きているのか。事件の経緯、法の要点、SNSの反応から現代の暴力のかたちを考える。

 

トー横広場で起きた「タイマン」 決闘と傷害致死で容疑者逮捕

東京・歌舞伎町のトー横広場(シネシティ広場)で起きた暴行致死事件に、明治時代の法律「決闘罪ニ関スル件」が適用された。現代ではほとんど使われることのない罪名の登場に、社会は驚きをもって反応している。

警視庁暴力団対策課は1月8日、千葉県八千代市大和田の無職、浅利風月(ふづき)容疑者(26)を、決闘と傷害致死の容疑で逮捕した。逮捕容疑は2025年9月23日午前4時ごろ、トー横広場で松田直也さん(当時30歳)と決闘し、殴る蹴るなどの暴行を加え、10月12日に新宿区内の病院で死亡させたというものだ。

決闘はおよそ10分間続き、捜査では浅利容疑者が一方的に暴行する展開だったとされる。松田さんは直後には意識があり、その場を離れていたが、3日後に体調が急変し緊急搬送された。死因は脳内にダメージを受けたことに伴う多臓器不全で、警視庁は決闘で受けた傷が原因と判断した。

浅利容疑者は容疑を認め、「申し訳なかった」と供述している一方、口論のきっかけについては「覚えていない」と話しているという。

 

「決闘罪ニ関スル件」とは何か 137年前の法律が今も残る理由

「決闘罪ニ関スル件」は1889(明治22)年に制定された法律で、私的な果たし合いを禁じることを目的としている。近代国家として法秩序を確立する過程にあった明治政府にとって、個人が名誉や感情を理由に暴力で決着をつける行為は看過できないものだった。

この法律の特徴は、結果の重大性以前に、合意の上で暴力を用いて争うという行為そのものを犯罪と位置づけている点にある。決闘を申し込んだ者、受けた者、実際に決闘を行った者だけでなく、立会人や事情を知りながら場所を提供した者まで処罰対象に含める構造になっている。

また、決闘の結果として人が死亡した場合には、決闘罪に加えて刑法上の罪で処断される仕組みが定められている。決闘罪は軽い前段階の規制ではなく、重大事件と結びつくことを前提にした抑止のための法律と言える。

 

なぜ現代の事件で決闘罪が適用されたのか

今回の事件で決闘罪が適用された最大の理由は、当事者同士が1対1で争うことに合意していたと判断された点にある。一般的な傷害事件では、加害と被害の関係は一方向だが、決闘の場合は双方が暴力を用いる争いに参加する意思を示している。

決闘罪の考え方は、合意があるからこそ違法性が高いという逆説に立っている。当人同士が納得していれば許されるという発想を否定し、合意に基づく私的制裁を社会として認めないという立場だ。

今回、いわゆる「タイマン」という言葉で表現される行為が、まさにこの構図に該当すると判断された。決闘罪の適用は、単なる法の掘り起こしではなく、合意の暴力を見逃さないという明確な意思表示でもある。

 

トー横という場所性 私的ルールが暴力を正当化する空間

事件の舞台となったトー横広場は、深夜に若者が集まりやすい場所として知られてきた。閉鎖的な空気の中で、独自のルールや力関係が生まれやすく、軽い口論が深刻な暴力に発展する危うさをはらんでいる。

今回も、初対面で将棋を指していたという穏やかな時間から一転し、口論を経て決闘に至ったとされる。暴力は衝動的に始まったとしても、その影響は即座に表れないことがある。松田さんが決闘直後は意識を保っていた事実は、暴力の危険性が過小評価されやすい現実を示している。

数日、数週間を経て命を奪う結果につながる。その時間差こそが、暴力の本質的な恐ろしさだ。

 

SNSで広がった驚きと賛否 「明治の法律」が投げかけた波紋

事件が報じられると、SNSでは「決闘罪ニ関スル件」という法律名そのものに驚く声が相次いだ。明治時代に制定された法律が現代でも効力を持っていることに、違和感や関心が集中した。

一方で、反応は単なる珍しさにとどまらなかった。「タイマンでも犯罪になると知らなかった」「合意があっても暴力は許されない」といった声が目立ち、決闘罪の適用を支持する意見も多く見られた。

また、トー横周辺で繰り返されるトラブルに対し、強い法的メッセージが必要だとする見方もある。合意の暴力を放置すれば、次の事件を招くという危機感が、SNS上ににじんでいる。

「決闘罪ニ関スル件」は、過去の遺物ではなく、暴力を正当化させないための原理を今も体現している。国家が暴力を独占するという近代法の原則は、時代が変わっても揺らいでいない。

合意があるから安全、納得しているから問題ない。そうした感覚がいかに危ういかを、今回の事件は示した。トー横という一地点で起きた出来事は、社会全体に向けた警鐘でもある。

137年前に作られた法律が、今も適用される現実。それは法律の古さではなく、暴力が形を変えて繰り返される人間社会の脆さを映し出している。

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ライター:

千葉県生まれ。青果卸売の現場で働いたのち、フリーライターへ。 野菜や果物のようにみずみずしい旬な話題を届けたいと思っています。 料理と漫画・アニメが大好きです。

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