
8年ぶりとなる日本出身横綱の誕生に、角界は大きな期待を寄せている。初土俵からわずか13場所で頂点に立った大の里は、大相撲の未来を背負う存在として注目を集めてきた。
しかしデイリー新潮によると、その急成長の裏で、所属する二所ノ関部屋では看過できない問題行動が繰り返されていたという。兄弟子への飲酒強要や、先輩力士への執拗な“いじり”。これらは関係者証言に基づく指摘で、現時点で日本相撲協会の公式な事実認定は示されていない。だが、それらの証言が浮かび上がらせるのは、「誰も彼を止められなかった」部屋の空気だ。横綱という地位がもたらした光と影、その実像に迫る。
横綱誕生に沸く角界、その裏で
両国国技館を包んだ拍手と歓声は、久しく失われていた熱を取り戻したかのようだった。
2025年、8年ぶりとなる日本出身横綱が誕生した。主役は、二所ノ関部屋の大の里。初土俵からわずか13場所での昇進は、明治以降の横綱史において最速という記録でもある。
「大相撲は向こう10年、安泰だ」
角界関係者の多くが、そう胸をなで下ろした。インバウンド需要を追い風に、場所は連日満員。一方で入門者数の減少や競技レベルの将来に不安を抱える中、大の里のスピード出世は、まさに“希望の象徴”だった。
だが、その祝福の光の裏で、静かな違和感が部屋の内外に広がっていたという。
「誰も、彼をとがめられなくなったんです」
そう語るのは、二所ノ関部屋を長く見てきた後援会関係者だ。
「あの頃からおかしかった」部屋関係者の証言
問題行動が語られるようになったのは、大の里が幕内で頭角を現し始めた頃だという。
部屋に所属する総勢山という若い力士を巡り、いじめに近い行為が繰り返されていたとの証言がある。
「最初は一部の弟子がからかっている程度でした。でも、大の里がそこに加わり、先頭に立つようになってから、雰囲気が変わったと聞いています」
特にひどいのは風呂場だったという。
風呂場での飲酒強要、「断れない空気」
証言によれば、大の里は酒を持って風呂場に現れ、総勢山に「飲め」と迫った。
断り切れず酒をあおった総勢山は、やがて酔い潰れる。その様子を見て、大の里は笑っていたという。
角界のしきたりでは、入門時期が早い者が兄弟子となる。総勢山は形式上、大の里の兄弟子にあたる。しかし番付、実績、注目度。そのすべてで大の里が上回る状況に、「逆らえない空気」が生まれていたとされる。
「番付がすべて、という意識が強かったのでしょう。兄弟子を敬う姿勢は、ほとんど見られなかったそうです」
先輩への「ちょっかい」と特別扱い
問題は総勢山だけにとどまらない。
部屋の関係者は、ため息交じりにこう明かしたという。
「他の兄弟子に対しても、平気で“先輩イジリ”をする。本気で怒られても、皆の前で何度も繰り返すんです。相手が困る姿を見るのが楽しい、そんな印象でした」
角界は長幼の序に厳しい世界だ。だが、二所ノ関部屋では、大の里だけが例外だったという。
「十両の白熊が負ければ、親方から厳しく叱責される。一方で大の里は、ほとんど何も言われない。後援会も“泰輝の部屋だ”と持ち上げるばかりでした」
結果として、「誰も止めない」「誰も逆らえない」構図が出来上がっていった。
親方はなぜ止められなかったのか
師匠は元横綱・稀勢の里こと二所ノ関親方。
将来の協会中枢を担う存在として期待される人物だ。
だが、部屋内で起きていた問題行動は、長らく表沙汰になることはなかった。関係者の間では、こうした見方もある。
「大の里は“大物新横綱”。叱る側にも覚悟が要る。親方自身、管理できていないと自覚していたのではないでしょうか」
個人の資質だけでなく、部屋運営のガバナンスそのものが問われている。
圧倒的な強さと、問われる「品格」
192センチ、191キロの巨体に、俊敏さを兼ね備える大の里。
右差しで前に出る相撲に加え、左のおっつけも磨かれ、強さは疑いようがない。
しかし横綱に求められるのは、勝敗だけではない。
「心技体」、そして「品格」。そのいずれが欠けても、横綱の称号は重荷となる。
日本相撲協会100周年式典で、大の里は「次の100年を横綱として盛り上げたい」と語った。その言葉が真に響くかどうかは、土俵外での振る舞いにもかかっている。
角界を背負う存在となった今、問われているのは、強さの先にある“自覚”だ。



