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生成AI導入は進むが定着せず 企業の職場で広がる利用の温度差

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AI導入と実利用のギャップ
DALL-Eで作成

生成AIの導入が企業で進む一方、現場での実利用にはばらつきが残っている。国内外の調査では、投資や導入が拡大しても、日常業務に根付いている例は限られる実態が浮かぶ。なぜ導入と定着の間に差が生まれるのか。企業と従業員の間にある温度差の背景と、定着に向けた取り組みを追う。

導入は進むが“定着”は別問題 国内外の調査が示す実態

生成AIの活用が広がる中、企業の導入と従業員の実際の利用には差が残る。技術が職場を覆う速度に、現場の意識や業務慣行が追いつかない構図が一部で生じている可能性がある。

 

BCG調査で浮かぶ「日本は日常利用が伸び悩む」現実

ボストン・コンサルティング・グループが2025年に公表した調査によると、日本で業務のために生成AIを日常的に活用している人の割合は51%にとどまり、世界平均を下回った。調査では、活用度合いには国や職位によるばらつきが大きいことも示されており、導入の広がりと実利用の定着が必ずしも一致していない実態が浮かび上がる。

 

海外企業でも指摘される「成熟した活用」の壁

海外でも同様の課題が見られる。米コンサルティング会社の分析では、AIへの投資を進める企業は増加している一方で、業務プロセスに深く組み込み、組織として成熟した活用段階に到達している企業はごく一部にとどまるとされる。導入後の運用設計や定着が、新たな課題として意識され始めている。

国内企業に残る部署間の温度差

国内の状況も一様ではない。IT関連メディアが紹介した調査では、生成AIを全社的に活用している企業は4.0%にとどまった一方、一部の部署に限って活用している企業は2割を超えた。導入が点在的に進み、組織全体へ広がり切っていない構造が数字から読み取れる。

 

なぜ定着しないのか 現場の心理と業務設計の壁

こうしたギャップの背景には複数の要因が重なる。生成AIが作成した文章や企画案を前提に修正する業務フローに慣れていないこと、誤答や責任の所在を懸念する心理が利用をためらわせることが挙げられる。さらに、長期的に見て文章力や思考力の育成にどのような影響を及ぼすのか分からない点も、不安材料として存在する。ただし、これらの影響については十分な実証データがそろっているとは言い難く、現時点では論点整理の段階にある。

企業側が進める定着への取り組み

企業側も対応を進めている。定着に向けた施策は、大きく四つの方向に整理できる。

ルール整備による不安の言語化
富士通は生成AIの利活用に関するガイドラインを公開し、正確性、情報漏洩、著作権といったリスクとその考え方を整理している。現場が判断に迷いやすい論点をあらかじめ示すことで、過度な萎縮や無秩序な利用を避ける狙いがある。

安全に使える環境づくり
生成AIを安心して使える環境の整備も重要視されている。閉じたネットワークや社内向け環境を用意することで、情報管理への不安を下げ、いわゆる私的利用や非公式な利用を抑える効果が期待されている。

成功体験の可視化による横展開
パナソニックグループでは、生成AIの活用による業務時間削減効果を数値で示し、社内に共有している。抽象的な有用性の説明ではなく、どの業務でどの程度効率が上がったのかを示すことで、利用への心理的ハードルを下げる狙いがある。

人材育成を通じた底上げ
生成AIを使える人と使えない人の差が固定化することを防ぐため、全社的な研修や階層別教育を進める企業もある。特定の人材に活用が偏らない仕組みづくりが、温度差の縮小につながるとみられている。

導入スピードと職場文化をどう橋渡しするか

生成AIの技術進化は今後も続く。一方で、職場文化として根付くまでには時間を要する。ルール、環境、成功体験、人材育成を組み合わせ、導入の速度と現場の理解をどう橋渡しするかが、今後の焦点となる。

 

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SHOEHORN くつべらマン

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児童養護施設の職員。特に中学~新卒年齢の若者の生活・医療・福祉・自立支援に従事している。勤務時間外では、様々な職業の方へ取材活動を実施しており、大人になる若者たちへ情報を提供している。

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