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柔道・角田夏実33歳、引退報道への憤りを示す 「最初の一言は自分の口で」揺れる思いと競技人生の重み

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角田夏実選手
角田夏実選手 Instagramより

柔道女子48kg級で2024年パリ五輪を制した角田夏実選手(33)が、本人の発表に先んじて「引退意向」が報じられた件について、深い憤りをあらわにした。

自身の進退をめぐる繊細な局面で、外部の報道が思いを乱し、ファンにも不必要な動揺を与えた形だ。角田選手は9日、インスタグラムで「最終決断には至っていない」と強調しつつ、これまでの歩みと向き合いながら熟考を続けていると明かした。

 

先走った引退報道に強い違和感 「言葉になり切れない想いが拡散」

角田選手は7日に一部メディアで「現役引退の意向」と報じられたが、それから二日後の9日、自身のインスタグラムで落ち着いた筆致ながらも強い違和感をにじませた。

「いつも応援してくださっている皆さまへ。この度の報道により、皆さまを驚かせてしまったことお詫び申し上げます」と切り出し、「会社や監督と何度も相談を重ねており、最終的な決断にはまだ至っておりません」と明確に否定した。

続けて、本人がもっとも心を痛めたのは、自らの意思が十分に固まる前に、別の形で世に届いてしまったことだった。

「これまで応援してくださった皆さまに対して、私の言葉で直接お伝えする場を設ける予定だった。しかし、報道が先行し、言葉になり切れていない想いが異なる形で拡散してしまったことを大変残念に感じております」

競技人生の終止符を打つか否かは、アスリートにとって極めて重い選択だ。その最初の一言は、本人が自らのタイミングで発することにこそ意味がある。角田選手の投稿からは、その尊厳が軽んじられたかのような痛みが読み取れる。

 

パリ五輪金メダリストの誇り 試行錯誤でつかんだ頂点

角田夏実選手は1992年8月6日生まれの33歳。女子48kg級の軽量級で長年国内外の強豪として知られてきた。学生時代から鋭い組手と粘り強い攻防で頭角を現し、社会人になってからは国際舞台での安定した成績が評価された。

転機となったのは2021年以降だ。世界柔道選手権では技の精度と試合運びの落ち着きが際立ち、安定したメダル獲得が続いた。そしてついに、2024年パリ五輪では悲願の金メダルを獲得した。日本勢にとって軽量級は常に激戦区であり、その中で頂点に立つのは容易ではない。

角田選手は、世界トップレベルの選手が密集する48kg級において、一瞬の判断と圧倒的な集中力で勝ち上がった。決勝戦で見せた攻めの姿勢と持ち味である冷静な間合いの読みは、経験の積み重ねが生んだものだ。

その背景には、競技への深い探求心と、年齢を重ねても自らを更新し続ける姿勢があった。30代に入り体の変化と向き合いながらも、トレーニング方法や調整法を工夫し、技の切れと耐久力を維持したことが五輪制覇につながった。

 

本人よりも先に「引退」が独り歩きする危うさ

今回の報道をめぐっては、アスリートの進退という極めて個人的で尊重されるべき領域で、本人不在のまま情報が流通した点が注目される。引退は競技者としてだけでなく、その人の人生観や価値観、今後の歩みまで関わる重大な選択だ。

にもかかわらず、外部が“答え”を急ぎ過ぎると、アスリートが冷静に判断するための時間を奪いかねない。さらに、支援してきたファンにとっても、本人の言葉以上に信頼すべき情報は存在しない。

角田選手は「正式な決断ができました際には、改めて公式の場で、私自身の言葉でしっかりとご説明させていただきます」と投稿を結んでいる。これは、現役続行か引退かにかかわらず、責任ある当事者として決断の重みを捉えていることの証左だ。

アスリートの進退報道は、しばしば“先走り”が問題になる。情報を早く届けることと、本人の尊厳を守ること。その境界線は本来明確であるべきで、メディア側の姿勢も問われる局面である。

 

角田夏実が歩んできた道の先にある未来

33歳になった角田選手は、競技人生の終盤に差し掛かっている。しかし、世界の舞台でいまなお通用する技術と精神力を備えているのも事実だ。五輪制覇という到達点ののち、次にどのようなステージを選ぶのかは彼女自身にしか決められない。

柔道の発展に寄与する指導者の道もあれば、国際大会で再び日の丸を背負う可能性もゼロではない。いずれの道を選ぶにせよ、重要なのは周囲の声ではなく、角田選手自身の心の声だ。

今回の“フライング報道”が投げかけたのは、単なる誤報批判ではない。アスリートの人生を語るとき、外野はどこまで踏み込むべきか。その問いに向き合う必要性を改めて浮き彫りにした。

角田夏実という選手は、努力で積み上げた結果を、丁寧に、誠実に、そして確かな歩みで形にしてきた。だからこそ、引退か続行かという重要な局面では、本人自らが選び、自らの言葉で伝える権利がある。

ファンが待つべきは、ただ一つ。彼女の揺るぎない決断だ。

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ライター:

千葉県生まれ。青果卸売の現場で働いたのち、フリーライターへ。 野菜や果物のようにみずみずしい旬な話題を届けたいと思っています。 料理と漫画・アニメが大好きです。

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