
11月12日、国民の受信料で運営される公共放送・NHKが、韓国の人気ガールズグループ「NewJeans(ニュージーンズ)」の活動再開を“速報”として伝え、SNS上で激しい批判の声が相次いだ。
「#NHK解約」がトレンド入りし、怒りの矛先はニュース内容以上に、NHKという組織そのものへと向かっている。視聴者が求める「速報」の基準と、NHKが下した「ニュース価値」の判断との間に、深刻な乖離が浮かび上がった。
「今入ったニュースです」──公共放送が選んだ“速報”
問題となったのは、11月12日夜にNHK総合で放送されたニュース番組。アナウンサーが「今入ったニュースです」と語り始め、緊急性を強調する演出で伝えたのは、NewJeansが活動を再開するという内容だった。
同グループはHYBE傘下のADORに所属し、音楽業界で世界的な注目を浴びてきたが、内部対立やメンバーの動向を巡って一時的に活動が停滞していた。確かにファンにとっては待望のニュースではある。だが、それを「速報」として報じたNHKの判断に、多くの視聴者が疑問を呈した。
SNS上では即座に批判の声が噴出した。
「NHK9時のニュースで速報!?日本の放送局ですか?」「自衛隊の領空侵犯対応よりK-POP速報?」「災害や政治ニュースを後回しにする公共放送の役割放棄だ」――。
視聴者の怒りは、報道内容の正確さではなく、「それを速報で伝える必要があったのか」という根本的な疑問に集中した。
「公共性を見失った」──受信料で運営される放送の使命とは
怒りがここまで燃え広がった背景には、NHKが「受信料」によって運営される公共放送であるという特殊性がある。放送法第15条には、NHKが「公共の福祉のために放送を行う」旨が定められており、国民の生命・財産に関わる情報提供や、災害・政治・経済など社会的意義の高いニュースがその中心であるべきとされている。
ところが今回の報道は、「エンタメ速報」としての民放的な話題性を優先した印象が否めない。X(旧Twitter)では、「受信料という事実上の税金を払っているのに、なぜ娯楽を速報するのか」「公共放送が芸能ニュースで視聴率稼ぎ?」といった声が相次いだ。
なかには、経済的な不満と公共性への疑念が交錯する投稿も目立つ。
「NHKに年間2万円近く払っているのに、K-POPの活動再開を速報?納得できない」「台風情報より早いK-POP速報は誰のため?」といったコメントが次々と拡散された。
擁護派の少数意見も「公共性の前ではかき消される」
一方で、NewJeansの国際的な影響力を理由に「速報としての価値はある」とする少数の擁護意見もあった。
「世界的アーティストの動向をいち早く伝えるのは公共放送の使命」「K-POPはもはや文化・経済の一部であり、日本でも注目度が高い」という見方だ。
しかし、こうした声も「公共性」という大義名分の前ではかき消された。
SNSでは「文化的価値」と「緊急報道」の区別を求める声が圧倒的であり、「速報」という言葉が本来持つ“命に関わる情報伝達”という意味を軽んじているとの批判が強まった。
「過去の不信」が炎上を拡大 報道姿勢への疑問再燃
NHKの報道姿勢に対する国民の不信感は、今回に始まったものではない。
たとえば、報道番組でのカメラワークに「ダッチアングル(傾斜構図)」を多用した演出が「印象操作ではないか」と批判を受けた例もある。また、芸能関連ニュースの扱い方に一貫性がないとの指摘も繰り返されてきた。
こうした“小さな不信”の積み重ねが、今回の「速報騒動」で一気に爆発した格好だ。
X上で「#NHK解約」がトレンド入りしたのは、単なる怒りの表現ではなく、国民がNHKの存在意義を問い直す動きでもある。
「NHKは誰のためにあるのか」 根本から揺らぐ公共放送の信頼
今回の一件は、NHKにとって単なる炎上ではない。
「公共放送は、誰のために、何を、どのような基準で報じるのか」という根源的な問いを突きつけられた。
社会的関心を集める話題をいち早く伝えることも必要だが、それが「速報」という形で報じられる以上、視聴者は“命や生活に関わる情報”と同列に扱われたと受け取る。
報道の重みをどこに置くのか、その線引きを誤れば、信頼の土台は崩れかねない。
公共放送に求められるのは、民放とは異なる「冷静さ」と「慎重さ」だ。NHKが今後、視聴者の信頼を取り戻すには、報道基準の明確化と説明責任の徹底が不可欠である。
「速報」とは何か――。その定義を曖昧にしたままでは、国民の受信料による信頼の契約は、音を立てて崩れていく。



