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伊東市議らに届いた脅迫状。田久保市長“失職目前”の静かな緊張

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伊東市議会
伊東市HPより

静岡県伊東市で、複数の市議に殺害をほのめかす脅迫状が届いた。発端は、学歴詐称問題で揺れる田久保真紀市長の不信任決議をめぐる対立だ。市政の混乱が続くなか、議員たちは脅迫に屈せず、被害届を提出する方針を固めた。失職目前の市長、そして民主主義の行方は…。伊東市でいま何が起きているのか。

 

 

封筒が届いた朝

10月下旬の伊東市。観光客でにぎわう温泉街の朝に、不穏な影が落ちた。市議会議員の自宅や事務所に、差出人のない茶封筒が相次いで届いたのだ。封を開けると、太い筆圧で書かれた「殺す」「死ね」という文字。宛名には議員本人の名前があり、その多くが田久保真紀市長の不信任決議案に賛同しているメンバーだった。

「最初は悪ふざけかと思った。でも、文字の力のこもり方が異常だった」と、ある議員は取材に語る。恐怖と緊張が議員の間を走り抜け、議会は29日朝、急きょ各会派の代表者会議を開いた。
協議の末、被害届を警察に提出する方針を決定。応接室には重苦しい沈黙が流れ、誰もが「言論の場が脅迫にさらされた」という現実を噛み締めていた。

 

田久保市長、沈黙の登庁

その同じ日の午前9時半、伊東市役所前。報道陣が詰めかける中、白いスーツ姿の田久保市長が登庁した。記者の呼びかけに、市長はわずかに微笑み、「はい」「そうですね」と短く答え、市長室へと足早に向かった。その背中には、静かな覚悟と、諦念のような影が同居していた。

この日、伊東市議会は10月31日に臨時議会を開き、2度目の不信任決議案を提出することを正式に決定した。20人のうち19人が賛成の意向を示しており、可決は確実視されている。可決された瞬間、田久保市長は失職となり、50日以内に市長選挙が行われる。市政の混乱は、いよいよ最終局面に差し掛かっている。

 

学歴詐称問題がもたらした混迷

混乱の発端は、市の広報誌に掲載された「誤った学歴」だった。田久保市長は「説明責任を果たしていない」として議会から厳しく追及を受けた。9月には一度目の不信任決議が可決されたが、市長は議会を解散して対抗。その後の10月19日の市議選では、不信任に賛成する議員が19人当選し、市民は明確に議会の判断を支持した。

それでも市長は辞職を選ばなかった。
28日の定例会見では、学歴問題に触れて深く頭を下げ、「誤った経歴が掲載され、ご迷惑をおかけした」と謝罪したものの、不信任への姿勢については明言を避けた。その言葉の少なさが、むしろ事態の深刻さを物語っていた。

 

「言論には言論で」民主主義を試す街

脅迫状の存在が明らかになると、市民の間では不安と怒りが広がった。
SNSやニュースサイトのコメント欄には、「政治は言論の場。暴力や脅迫では何も解決しない」「民主主義を否定する行為は絶対に許せない」といった声が相次いだ。
一方で、「不信任案への報復だろう」「市政が壊されていく」といった意見も多く、市民の心にも深い分断が残された。

議会の杉本一彦市議は、「自ら辞職を選ばなかった市長には憤りを感じる。時間はかかったが、31日にはようやく結論が出る」と静かに語る。彼の言葉には、恐怖や怒りを越えて「市民の信頼を取り戻す責任」がにじんでいた。
脅迫という暴力に屈せず、議会の機能を守り抜く。それが、いまこの街で試されている民主主義の姿である。

 

次なる戦い、市長選へ

不信任案が可決されれば、伊東市は再び選挙戦へと突入する。すでに、前市議の杉本憲也氏、会社役員の黒坪則之氏、スポーツインストラクターの石島明美氏、レジャー施設経営の岩渕寛二氏の4人が出馬を表明している。さらに小野達也前市長も出馬に意欲を示しており、自民党伊東支部では「小野氏を推す声」が上がる一方、「市民からNOを突きつけられた人物を再び立てるのか」という疑問も渦巻く。

街は平常を装いながらも、市役所周辺には報道陣が詰めかけ、警備が強化された。観光地・伊東の空気はどこか張り詰めている。
「次に誰が市長になっても、信頼の回復には時間がかかるでしょう」と地元商店主はため息をついた。

31日の臨時議会が開かれるその日、伊東市はひとつの岐路に立つ。
暴力ではなく、言葉で政治を動かすことができるのか。民主主義の根幹が問われる一日を、全国が見守っている。

 

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ライター:

広島県在住。福岡教育大学卒。広告代理店在職中に、経営者や移住者など様々なバックグラウンドを持つ方々への取材を経験し、「人」の魅力が地域の魅力につながることを実感する。現在「伝える舎」の屋号で独立、「人の生きる姿」を言葉で綴るインタビューライターとして活動中。​​https://tsutaerusha.com

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