
季節の変わり目を迎えた日本列島で、思いがけず“早すぎる流行”が広がっている。厚生労働省によると、全国のインフルエンザ感染者は前週比1.5倍。8週連続の増加で、すでに流行シーズンに入った。通勤電車では咳き込む人の姿も目立ち、街には再びマスク姿が戻りつつある。
季節外れの流行、街に広がる“冬の気配”
「まさか、こんなに早く流行るなんて」。
都内の小児科クリニックで、母親がため息をついた。子どもの学級ではすでにインフルエンザによる欠席者が相次ぎ、学級閉鎖の知らせが届いたばかりだ。
通勤電車では咳き込む人の姿が目立ち、駅の売店ではマスクを買い求める人の列もできている。
例年よりも暖かいはずの10月。だが、人々の動きはすでに冬支度のようだ。
感染者、前週の1.5倍 8週連続の増加に
厚生労働省によると、10月6日から12日までの1週間に全国約3000の定点医療機関から報告された感染者数は、1医療機関あたり2.36人。
前週の1.56人からおよそ1.5倍に増え、8週連続の増加となった。
都道府県別では、沖縄県が14.38人と最多で、東京都4.76人、神奈川県4.21人、千葉県4.20人と首都圏でも感染が拡大。
全国では328の学校や保育施設で休校・学級閉鎖が報告されている。
厚労省は「流行シーズンに入った」と判断し、改めて注意を呼びかけた。
「隠れインフル」に注意 軽症でも感染拡大の恐れ
今年の流行には、もう一つの特徴がある。
発熱や激しい頭痛を伴わない軽症型の患者が増えているのだ。
都内クリニックの医師はこう話す。
「典型的な高熱や関節痛が出ない“隠れインフルエンザ”が増えています。感染に気づかないまま出勤や通学を続ける人が多く、拡散の原因になっている可能性があります」
実際、喉の違和感や咳だけが残る人も多く、オフィスや通勤電車では再び咳き込む姿が見られる。
「コロナが落ち着いてから、マスクを外す人が増えた。予防意識が少し緩んでいる気がします」と、都内で働く会社員は話した。
厚労省「今こそ基本対策を」 予防接種も早めに
厚労省は「手洗い・マスク・換気など、基本的な感染対策を再確認してほしい」と呼びかけている。
特に今年は流行が1か月以上早く、ワクチンの接種時期を前倒しする動きも広がっている。
都内のクリニックでは「例年より2週間早く予約が埋まり始めている」と話す医師もいる。
感染拡大の兆しが見える中、街では再びマスク姿が増え始めた。
「またあの冬が来るのか」と誰かがつぶやいた。
季節を先取りするかのように、社会全体がゆっくりと防衛モードに戻りつつある。