
東京ディズニーランドの人気アトラクション「ベイマックスのハッピーライド」で、「乗り物付近のフリースペースで10時間踊った」というスレッズ(Threads)への動画付き投稿が拡散され、ファンの間で賛否が巻き起こっている。
現在その投稿は削除されているが、ネット上では「楽しい」「うざい」「キャスト気取り」など、さまざまな意見が飛び交っている。
ベイマックスの“ノリノリダンス”をコピー?ファンによる“自主演出”が加熱
「ベイマックスのハッピーライド」は、音楽に合わせて回転しながら走行するアトラクションで、キャスト(スタッフ)が手拍子や軽いダンスでゲストを盛り上げるのが定番となっている。
しかし近年は、「キャストのダンスを覚えて自分も踊りたい」という来園者が増加。SNS上には、「一緒に踊るのが楽しい」「キャストさんと一体感がある」といった投稿も見られる。
今回のスレッズ投稿者も、そうした“ファン型ダンサー”と見られ、アトラクション横のフリースペースで3人組で長時間踊り続けたという。
「全力で踊っている人見て楽しめた!なんなら振りちょっと覚えたしw」
という好意的な意見がある一方で、この行為を快く思わない人も多い。
「一般客がキャスト気取りで踊っていて鬱陶しい」
「自分たちが盛り上げていると勘違いしている」
「踊っている人達が怖くて娘が引いていた、やめてほしい」
といった批判がSNSで相次いでいる。
「ジャンボリミッキー現象」の再来?踊ること自体が目的化
今回の騒動を見て、筆者は「ジャンボリミッキー」ブームの再来のように感じた。
2023年頃に大ブームとなった「ジャンボリミッキー」では、ショーを観るだけでなく振り付けを真似して踊る“振りコピ勢”が急増。
「ステージを観る」よりも「踊って撮る」ことが目的になり、SNSでは“ジャンボリダンサー”の撮影会のような光景も見られた。
ベイマックスの件も、まさにその流れを引き継いでいるように思える。
「踊りたい」「動画を撮って投稿したい」という承認欲求が、アトラクション本来の目的を凌駕してしまっているのだ。
法的にはグレー?フリースペースでの「長時間ダンス」は規約違反の可能性も
では、アトラクションの周辺で踊ることに法的問題はないのか。
結論から言えば、「即座に違法とはいえないが、施設利用規約には抵触する可能性が高い」といえる。
東京ディズニーリゾート公式サイトには、来園者の行動に関する規約が明記されており、「他のお客様に迷惑をかける行為」「運営を妨げる行為」「通行の妨害」などは禁止事項とされている。
つまり、長時間にわたって踊り続ける行為が周囲に不快感や混雑を生む場合、運営判断で注意・退園処分となるケースもあり得る。
さらに、音楽や振り付けの著作権にも留意が必要だ。
アトラクションで流れる音源を録音・配信したり、公式振り付けを無断転載したりすれば、著作権侵害に問われる可能性もゼロではない。
また、撮影・投稿時に他の来園者の顔が写り込めば、肖像権・プライバシー侵害に発展するリスクもある。
法律上は“踊ること”自体が禁止されているわけではないが、テーマパークという「私有地」ではルールがすべて。
自由な表現活動も、運営が「迷惑行為」と判断すればアウトなのだ。
「みんなで楽しむ」vs「空気を壊す」 盛り上がりと節度の線引き
ディズニーという空間には、訪れるすべての人が笑顔になれる“魔法”がある。
しかし、誰かの楽しみが別の誰かの迷惑になる瞬間、その魔法は壊れてしまう。
SNSで“バズる”ことを狙うあまり、他者の視界・通路・雰囲気を犠牲にするのは本末転倒だ。
レジャー施設で一体感を味わうのは素晴らしいが、「場の空気を支配する権利」は誰にもない。
「踊りたい気持ち」は否定しない、ただし節度を忘れずに
ベイマックスの投稿は、一部の熱狂的ファンが“好き”を形にした結果でもある。
だからこそ、完全否定ではなく、「楽しみ方の線引き」を社会全体で考えるタイミングなのかもしれない。
テーマパークの魅力は、“みんなで楽しむ空間”にある。
だが、それは“誰かの自由が誰かのストレスにならない”という暗黙のルールの上に成り立っている。
自分たちが楽しいからといって、他人の時間を奪わない。
そんな当たり前のモラルが、今あらためて問われている。