
美容整体チェーン「Filament」の経営破綻をめぐり、9月15日に公開された「フランチャイズチャンネル」で、X(旧Twitter)上でも対立していたFCチャンネル取締役・伊藤慎之介氏とFilament株主の坂井秀人氏が対談に臨んだ。令和の虎2代目主催の林尚弘氏が仲裁役を務め、店舗閉鎖や資金消失の実態が赤裸々に語られた。
前回の記事(末尾掲載)で報じた通り、Filamentは全国200店舗規模にまで拡大しながら、7月末に突如として営業を停止。会員へのLINE一斉通知で「明日以降の予約をキャンセル」と告げられ、多額の回数券を購入した顧客や給与未払いの従業員が混乱に陥った。
代表の川島悠希社長には「資金を持ち逃げし雲隠れしたのでは」との噂も広がっており、急成長の裏で生じた歪みが一気に表面化した格好だ。
揺らいだライセンス契約のリスク
番組内で伊藤氏は「神戸院に1500万円を投資したが、売上が振り込まれず騙された状態」と訴えた。坂井氏も「チーム全体で2億円、自身でも1億円を失った」と被害規模を明かす。弁護士が確認したFilamentの口座残高はわずか380万円で、債権者に分配されれば数万円単位しか戻らない見込みだ。
問題の根幹には、フランチャイズではなくライセンス契約を採用していた点がある。弁護士の指摘によれば、この契約形態では「本部が崩れた場合、オーナーが店舗を引き継ぐ権利がなく、全ての資産は本部に帰属する」という内容で、オーナー保護の仕組みが欠落していた。伊藤氏も「硬いと思って入ったライセンス契約が、逆に脆弱だった」と肩を落とした。
幻の引き継ぎ交渉
神戸院の閉鎖を巡っては、伊藤氏が「500万円で引き継がせてほしい」と申し出たが、条件が1000万円に引き上げられるなど交渉は難航。結果として店舗スタッフは散り散りとなり、回数券を購入した顧客も保護されないままとなった。
坂井氏は「株主が止めた事実はない」と釈明したが、伊藤氏は「本部と株主が同じに見えた」と違和感を示している。ここに本部の経営責任の所在が問われる。
SNSで広がる疑念
動画公開後、SNSには厳しい声が相次いだ。
「結論、川島とFCチャンネルがヤバい」「加盟金の半分を実質FCチャンネルに払っているのに、本部構築に責任を持たないのは不誠実」といった批判に加え、「FCチャンネルはPRと加盟金集めに偏りすぎているのでは」との疑念も浮上した。
一方で「伊藤くんと坂井さんが仲直りしたのは良かった」と和解を評価する声もあり、視聴者の受け止めは二極化している。
FCチャンネルの当事者性
ただ、多くの視聴者が疑問に思うことがある。今回の番組は一見、利害関係者同士の和解の場を提供したように映る。しかし、視聴者の一部からは「FCチャンネル自身がFilamentを積極的に取り上げ、加盟金ビジネスを後押ししてきた以上、完全な第三者ではない」という指摘が相次いでいる。
過去にも同チャンネルで紹介してきたFCがトラブルを抱えた例はあるため、「仲裁者としての公平性に疑問が残る」との批判が消えない。Filament崩壊の余波は、現段階ではFCチャンネルや林主宰の信頼性の棄損にまで波及してはいないが、この先も紹介フィーはしっかりとりながら、トラブルが起きた時は我関せずな、いいとこどりスタンスを続けるのであれば、いずれは多くの視聴者が離れていくだろう。
結局はFC加盟を検討する視聴者はビジネス的嗅覚を磨き、番組が垂れ流す美味しいだけの情報を無条件で信頼するのではなく、クソフランチャイズを見極めなければならない問題だ。ただ、令和の虎などを通じて林主宰やプロデューサーの竹村 義宏さん達の誠実そうな感じに釣られ、気を抜くと、発信される情報を鵜呑みにしてしまいやすい構造にあるということを肝に銘じておくべきだろう。
今後の行方
坂井氏は「0円の給与でFilamentの従業員となり、できる限り対応している」と述べたが、最終決定権は川島氏や代理弁護士にあり、事態の改善は依然として見通せない。顧客の前払い金、スタッフの生活基盤、加盟オーナーの投資資金、とまぁ被害は深刻だ。
Filamentの急成長と急崩壊は、美容整体業界にとどまらず、フランチャイズモデル全体に「本部責任とは何か」という根本的な問いを突きつけている。そして、その問いは、仲裁を演じつつ当事者性を否応なく抱えるFCチャンネル自身にも返ってきている。