
個別指導塾「スクールIE」を運営する「やる気スイッチグループ」の元教室長が、教え子の女子中学生に不同意わいせつ行為を繰り返したとして警視庁に逮捕された。容疑者は「生徒が何も言わなかったので大丈夫と思った」と供述しており、教育現場の信頼を揺るがす重大事件として波紋を広げている。
ベテラン教室長の逮捕
警視庁に不同意わいせつの疑いで逮捕されたのは、東京都内の個別指導塾「スクールIE」で教室長を務めていた石田親一容疑者(45)。やる気スイッチグループが運営する同塾で、長年勤務していたベテランの講師だ。
捜査関係者によると、石田容疑者は2025年3月と5月、教室内で当時15歳の女子生徒の胸や太ももを触るなどの行為をした疑いが持たれている。授業は個別形式で行われ、講師と生徒が横並びで座るスタイル。その状況を利用し、他の講師や生徒がいない時間を狙って犯行に及んだとみられている。
石田容疑者は取り調べに対し、「授業中にたまたま胸に手が当たり、反応がなかったので大丈夫かと思った。その後10回ほど繰り返した」と供述。容疑を一部否認しつつも、多くを認めている。
“先生だから言えなかった”
被害にあった女子生徒は、小学生のころから石田容疑者の指導を受けていた。信頼関係があると考えられる状況下で、触られても「先生だから」と思い、なかなか言い出せなかったという。
しかし行為は繰り返され、女子生徒は耐えきれずにカウンセラーへ相談。これが事件発覚のきっかけとなった。女子生徒は抵抗のために上着を着たりしたが、それでも服の上から触られることがあったとされる。
被害の詳細が明らかになるにつれ、「言えなかったのは沈黙ではなく恐怖だった」という見方が広がっている。未成年と指導者の力関係が、声を上げにくくさせた典型的なケースといえる。
20年の指導歴と信頼の裏切り
石田容疑者は2005年にアルバイト講師として勤務を開始。2014年には正社員となり、以降は教室長を務めていた。講師歴は約20年に及び、地域の保護者や生徒からは「長年の経験を持つ教室長」として信頼されていた。
かつて「スクールIE」の公式ホームページには、石田容疑者の顔写真とともに「お子さまのやる気を引き出し、伸ばすこと」とのメッセージが掲載されていた。さらに「将来の夢や目標を一緒に考え、やる気スイッチをONにします」とのコメントも添えられていた。しかし事件発覚後、このページは削除され、9月12日付で懲戒解雇処分が下された。
教育者として掲げていた理念と、実際の行為との乖離は大きい。信頼を裏切られた保護者や生徒の衝撃は計り知れない。
供述と今後の捜査
石田容疑者は「下着の上からは触っていない」と一部否認する一方で、「生徒が何も言わなかったのでエスカレートした」「10回くらいやった」と供述している。こうした発言は、加害者の自己都合的な認識を示しており、被害者側の恐怖や抵抗の難しさを無視している。
警視庁は余罪の有無や、他の生徒への被害がなかったかを含めて慎重に捜査を進める方針だ。専門家からは「個別指導塾は監視が行き届きにくく、教室長が唯一の管理者であるため、リスクが高い」との指摘もある。
やる気スイッチグループは「重大な事態と受け止めており、被害に遭われた生徒・保護者に深くお詫び申し上げる。警察の捜査に全面的に協力し、再発防止策を徹底する」とのコメントを発表した。
教育現場の信頼を揺るがす重大事件
今回の事件は、長年の信頼関係の中で起きた性加害という点で極めて深刻だ。生徒が安心して学べる環境を整えるためには、塾業界全体での再発防止策が求められる。監視体制の強化や相談窓口の整備はもちろん、「子どもが声を上げやすい環境づくり」が不可欠となる。