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【続報】新浪剛史氏「潔白」主張も…サントリー会長辞任と同友会活動自粛へ

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記者会見
DALLーEで作成

午後3時、東京都千代田区。フラッシュの光を浴びながら、元サントリーホールディングス会長の新浪剛史氏(66)が深々と頭を下げた。違法成分が検出されたとされるサプリメントを巡る捜査を受け、1日付で会長を辞任。さらに、代表幹事を務める経済同友会では「潔白」を強調しつつも活動自粛を表明した。政財界の要職を数多く務めてきた新浪氏の突然の辞任劇は、今後の経済界にどのような影響を及ぼすのか。

 

 

会長辞任の衝撃 「企業統治上、極めて深刻」

サントリーHDが辞任を公表したのは9月2日。1日付で提出された辞任届を受理したと発表した。同社は「企業統治上、極めて深刻な事案」と位置づけ、取締役・監査役による議論を経て対応を決めた。
同日開かれた緊急会見で、鳥井信宏社長は「皆さまにご心配、ご迷惑をおかけし、心よりおわびする」と謝罪。会長というグループの象徴的立場にありながら、違法の疑いを持たれる商品を購入していた事実を重く受け止めた。

サントリーグループを率いた新浪氏は、2014年に社長就任。ローソン社長時代に「コンビニ改革」を進めた手腕を買われ、グローバル展開を進めるサントリーの新しい顔となった。2025年3月には会長に就任したばかりだっただけに、退任はあまりに突然だった。

 

問題のサプリはCBD製品 「時差ボケ対策」と説明

発端は8月。海外の知人が米国から送付したサプリメントを、門司税関(北九州市)が調査したところ、国内では違法とされる大麻由来成分が検出された。CBD(カンナビジオール)サプリは米国では市販されているが、日本では一部成分の扱いが厳しく、違法性を問われる場合がある。

福岡県警は8月22日、麻薬及び向精神薬取締法違反の疑いで東京都内の新浪氏の自宅を捜索した。しかし、大麻や違法薬物は見つからず、尿検査からも使用を疑う成分は検出されなかった。新浪氏は任意の事情聴取に応じ、「知人から健康によいと勧められ、時差ボケ対策のために購入した」と説明。「違法性は知らなかった」と関与を否定している。

会見でも、「米国では正規に販売されている。日本でも同じブランドの商品が売られている。私は適法だと認識していた」と語り、強調したのは「潔白」の二文字だった。

 

経済同友会での会見 「進退は仕組みに委ねる」

3日午後に開かれた経済同友会の定例会見。会見場には多くの報道陣が詰めかけ、記者のフラッシュが鳴りやまなかった。
新浪氏は冒頭で「私のことでお騒がせし、申し訳ございません」と深々と頭を下げた。そして、「私は法を犯していないと考えており潔白だ。しかし透明性の高い経済同友会の仕組みに委ねたい。当面は活動を自粛する」と述べ、進退を組織の判断に託した。

同席した岩井睦雄筆頭副代表幹事(JT会長)は、「できれば今月中に決着をつけたい」とコメント。当面は岩井氏が代表幹事を代行する。

新浪氏はまた、政府の経済財政諮問会議の民間議員をはじめ、政財界で複数の要職を担っている。これらについても「決めていただくのは政府」と言葉を選びつつ、判断を委ねる姿勢を示した。

 

広がる波紋 「潔白」と辞任の矛盾

「潔白」を繰り返しながらも、結果として会長職を辞した新浪氏。その姿は、経済界の重責を担う立場にある者の厳しい現実を物語る。サプリ自体は米国で合法的に販売されており、本人も「違法とは知らなかった」と語る。しかし「法令遵守は経営者の最低条件」とするサントリーHDの判断は揺るがなかった。

経済同友会の代表幹事としては、政策提言や社会課題への発信力を持つ立場にある。そこからの一時的な退場は、同友会の活動にとっても大きな痛手となる。さらに、政府の経済財政諮問会議の人事にも影響が及ぶ可能性がある。

 

今後の焦点 政財界が注視

今回の件は「海外で合法でも、日本では違法成分とされる」という法制度の違いが背景にある。CBD製品をめぐる規制は国ごとに異なり、グローバルに活動する経営者にとって見落としやすい落とし穴でもある。新浪氏のケースは、その象徴的な事例となった。

一方で、経済界のトップが「知らなかった」で済むのかという厳しい視線も向けられている。今後、警察捜査の行方に加え、経済同友会や政府内での去就判断が注目される。

9月の経済界は、ひとりのリーダーの「潔白」と「辞任」の間に生じた矛盾に揺れている。

 

政財界を揺らす「潔白」と辞任のはざま

今回の一連の経緯は、経営トップに求められる法令遵守と説明責任の重さを浮き彫りにした。米国で合法的に販売されているサプリメントであっても、日本の法制度では違法とされる成分が含まれていた。新浪氏自身は「潔白」と強調したが、その真意とは別に、企業や経済団体のトップとしての立場は維持できなかった。辞任と活動自粛という決断は、経営者の信頼がいかに脆く、同時に社会的責任の重さがいかに厳しいかを物語っている。

 

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ライター:

広島県在住。福岡教育大学卒。広告代理店在職中に、経営者や移住者など様々なバックグラウンドを持つ方々への取材を経験し、「人」の魅力が地域の魅力につながることを実感する。現在「伝える舎」の屋号で独立、「人の生きる姿」を言葉で綴るインタビューライターとして活動中。​​https://tsutaerusha.com

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