
警視庁は、世界最大級の海外アダルト配信サイト「Stripchat(ストリップチャット)」を通じてわいせつな行為を生配信していたとして、東京都中央区のライブ配信会社「TOPPA(トッパ)」社長・北川雄基容疑者(28)を公然わいせつ容疑で逮捕した。逮捕は9月1~2日に行われ、同社の女性マネジャー(24)や無職女性2人(40歳・34歳)も同容疑で摘発された。
4人は今年3月から8月にかけ、都内のスタジオで出演女性を全裸にさせ、わいせつ行為を行わせる様子を不特定多数に向けて生配信。警視庁は、同社が2023年2月以降に少なくとも1億円以上の収益を得ていたとみて捜査している。
日本市場は世界第2位 — 月間1億3,400万回超のアクセス
地中海・キプロスを拠点とするストリップチャットは、世界的に利用される巨大プラットフォームだ。サイト分析会社「シミラーウェブ」によれば、2023年5~7月の月間アクセス数は平均約6億6,700万回。そのうち約20%が日本からのアクセスで、米国(21%)に次ぐ第2位だった。
数字に換算すれば、日本からのアクセスは月間約1億3,400万回に上る。アジア地域の中でも日本市場は突出して大きな存在感を持ち、同サイトの収益基盤を支えていたことが分かる。
高額報酬をうたった勧誘
TOPPAは、SNSを通じ「報酬率最大85%」「時給3万円以上可」と広告を展開。副業需要を狙い、主婦や学生、フリーターなどを含む幅広い層を取り込んでいた。実際に100人以上が事務所に登録し、都内のスタジオから撮影・配信を行っていた。
出演者は「手軽に高収入が得られる」との宣伝に引き寄せられたが、結果的に刑法違反の疑いを負う形となり、SNS上でも「知らぬ間に法を犯していた可能性がある」と警鐘を鳴らす声が広がっている。
日本国内では過去にも、国外サーバーを利用したアダルト配信や無修正動画配信が摘発されてきた。
- 2017年:カリビアンコム事件
米国拠点のアダルトサイト「カリビアンコム」を巡り、制作会社関係者らがわいせつ電磁的記録送信頒布罪で逮捕。最終的に出演者の一部は不起訴となったが、越境配信の摘発として注目された。 - 2014年:性行為ライブ配信事件
男女が自宅で性行為をライブ配信し、公然わいせつ容疑で現行犯逮捕。個人規模の事件ながら「ネット配信が捜査対象となる」ことを社会に印象づけた。
今回のTOPPA事件は、こうした過去の個別摘発とは異なり、組織的な運営、巨額の収益、国際的なプラットフォームを背景にした点で、次元の異なる広がりを持つ。
欧州委員会は2023年12月、ストリップチャットを「デジタルサービス法(DSA)」に基づく巨大プラットフォームに指定。さらに2024年5月には、違法コンテンツ対応の不備が疑われるとして調査を開始した。
欧州規制と今回の日本での摘発は、プラットフォームの国際的な責任追及という共通の文脈で捉えることができる。
視聴者層と社会的背景
SNS上の反応からは、「日本からのアクセス20%」という数字に驚く声が多く寄せられた。裏を返せば、視聴者層の裾野が広いことを意味する。学生や若年層の利用が疑われる一方、中高年層も視聴に参加しているとみられる。
一部には「生活費のために出演したのでは」という同情や、「副業感覚で始めた人が犯罪に巻き込まれるリスク」を懸念する声もあり、単なる刑事事件にとどまらず、経済的困窮や社会構造に根差した問題として議論されている。
今後の課題
日本の刑法は国外サイトを利用した場合でも、国内で行為や視聴があれば摘発対象とする。だが、プラットフォームは国外にあり、匿名性や越境性の高いネット空間での規制執行には限界もある。
今後は、国際的な連携を通じた摘発強化と同時に、出演者を違法行為に巻き込まないための啓発や社会的セーフティネットの整備が求められる。
北川雄基容疑者の逮捕は、単なるアダルト配信事件ではなく、日本市場の巨大性、越境型プラットフォームの影響力、過去の摘発事例との比較を通じて、デジタル社会における規制と自由のバランスを改めて問うものとなった。