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広島の高校スポーツ強豪校に広がる「ブラック部活」 摂食障害と無月経、そして沈黙の構造

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極端な減量指導と「瘦せることが正義」という空気

広島県のスポーツ強豪校を今春卒業した18歳の女性は、顧問から過酷な減量を強いられた。許された食事は1日わずか500キロカロリー。10代女性の必要量の4分の1以下である。

弁当は卵焼きと鶏胸肉、ブロッコリーのみ。合宿では朝食がプロテインだけだった。体重は1か月で10キロ以上落ち、32キロにまで減少。やがて生理が止まり、顧問は「それで正解」と言い切った。女子部員の多くも無月経に陥っていた。

「幸せホルモンが出ると太る」との理由で恋愛禁止令も出された。根拠はなかったが、顧問の言葉は絶対視され、部員たちは「痩せることが正義」という異常な価値観に従わざるを得なかった。

 

被害は複数に広がる

この学校を卒業した別の女性は「鉄欠乏性貧血で倒れても休養は許されず、市販のサプリでごまかした」と振り返る。さらに「退部後も過食と嘔吐を繰り返し、大学生活が破綻しかけた」という証言もある。

被害は一人ではなく、構造的な問題が背景にある。強豪校ほど勝利至上主義が強く、健康や人格形成という教育本来の目的が後回しにされる傾向が強まる。

 

医師が警鐘「生涯にわたる健康被害」

専門家は、極端な減量指導が思春期の生徒にもたらす影響について深刻な警鐘を鳴らす。

産婦人科医はこう説明する。
「思春期は骨量が最も増える大切な時期です。この時期に無月経が続くと、骨密度が十分に形成されず、成人してからも骨がもろくなり、将来的に骨粗しょう症になるリスクが飛躍的に高まります。また、排卵がない状態が長引けば、不妊や流産といった生涯にわたる生殖機能への障害につながる恐れもあります」

女性アスリート特有の問題として国際的に知られる「女性アスリートの三主徴(Female Athlete Triad)」──①無月経、②摂食障害、③骨粗しょう症──は、日本の部活動の現場でも数多く確認されている。特に成長期の女子生徒が指導の名の下に体重管理を強いられる場合、三主徴に陥るケースは少なくない。

精神科医も危険性を指摘する。
「摂食障害は一度発症すると慢性化しやすく、回復には数年、場合によっては10年以上を要することもあります。過食・嘔吐を繰り返すことで、低カリウム血症による心停止や、歯の損耗、胃腸の損傷など命に関わる合併症が起こり得る。教育現場で子どもをこの状態に追い込むことは、教育の名を借りた虐待に近い」

医師たちの指摘は、単なる「練習のやりすぎ」や「一時的なダイエット」の問題にとどまらない。

心身の発達期に無理な指導が行われれば、生涯にわたって健康と生活の質が損なわれる可能性がある。

「競技成績は数年で終わるかもしれません。しかし体は一生ついて回る。顧問や学校は、その責任を自覚しなければならない」──専門家の言葉は、教育の現場に突きつけられた重い課題を物語っている。

 

文科省・教育委員会の対応と沈黙の構造

スポーツ庁は2018年に「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」を策定し、生徒の健康管理や週2日以上の休養日を義務づけた。

しかし文科省の2022年度調査では、全国の約3割の学校が休養日を確保できていないことが判明。強豪校では活動日数がさらに多く、指針との乖離は大きい。

広島県教育委員会は「健康を損なう指導はあってはならない」とコメントするが、当事者への調査は限定的だ。顧問は実績で評価され、校長や保護者も意見を挟みにくい。部員自身も「先生に認められたい」と沈黙する。この閉鎖的な構造が「ブラック部活」を温存している。

 

SNSに広がる共感と怒り

中国新聞の報道はSNSで大きな反響を呼び、「生理が止まって正解という顧問の言葉に言葉を失った」「また広島の印象が悪くなる」といった声が相次いだ。

また、noteには「卒業後も高校時代の悪夢を見る」「訴えれば進路が潰れると恐れて声を上げられなかった」と体験を綴る元生徒の告白も寄せられている。

全国調査でも「休みがない」「疲労骨折しても練習を強制された」といった声は多く、被害は広島にとどまらない。

卒業した女性はいまも過食に苦しみ、生理は年に数回しかない。「これは教育なんでしょうか」と問いかける。

部活動は本来、生徒が心身を育み、仲間と協力し合う場であるはずだ。しかし現実には勝利至上主義が支配し、教育の名を借りた人権侵害が放置されている。当事者や専門家、SNSで声を上げる人々の言葉は、制度と文化を変えなければならないという強い警鐘である。

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ライター:

千葉県生まれ。青果卸売の現場で働いたのち、フリーライターへ。 野菜や果物のようにみずみずしい旬な話題を届けたいと思っています。 料理と漫画・アニメが大好きです。

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