
2025年夏の第27回参議院議員通常選挙で、「NHKから国民を守る党」(NHK党)から比例区で立候補していた現職の浜田聡参院議員(48)が落選確実となった。20日未明、自身のX(旧ツイッター)にて敗戦を認め、「多くの方々にご協力いただいたにも関わらずご期待にそえず本当に申し訳ありません」と投稿した。
比例区では一部の情勢資料で早期に当落線上と見られていたが、開票の進行に伴い、浜田氏の議席確保は極めて困難な情勢となった。これを受けてSNS上では「もっとも仕事をしていた議員がなぜ落ちるのか」「次は必ず国政に戻ってきてほしい」といった惜別と期待が入り混じる声が広がり、「浜田さん」がXトレンドに入った。
精力的な議員活動と支持の広がり
東京大学教育学部、京都大学医学部を卒業した浜田氏は、放射線科専門医として臨床現場を経験した後、2019年の参議院選で比例区から出馬。初当選は立花孝志元党首の自動失職による繰り上げであったが、以後の6年間にわたって国会質問や政策提言に精力的に取り組んできた。
中でも、医師としての専門知を活かした医療政策や、NHKのスクランブル放送推進といった独自路線を訴え、与野党問わず議場で存在感を示していた。法案提出数は全議員の中でも上位に位置し、政策調査会長や幹事長として組織運営にも関わった。
特にXでは22万人を超えるフォロワーを抱え(2025年7月現在)、動画やテキストによる発信を通じて「ネット発の政策型議員」として独自のポジションを築いてきた。支持者からは「最も実務的で誠実な政治家」との評価も根強く、「浜田氏の損失は国会の損失」とする声もあった。
旧統一教会との関係が及ぼした影響
一方で、近年の浜田氏は旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)やその関連団体の行事にたびたび出席し、「解散命令に反対」との立場を明確にしていた。Xでも「信教の自由を守る」との論調で擁護姿勢を示し、信者向けの講演やSNS戦略の助言まで行っていた。
2025年6月には、旧統一教会の解散命令撤回を求めるラリーに国会議員として唯一参加し、「テロリストの思うつぼになる」とまで訴えた。この一連の行動が保守層の一部から評価された一方、一般有権者や無党派層には拒否反応も少なくなかったと見られる。
この「統一教会問題への接近」が、今回の選挙結果に何らかの影響を与えた可能性は否定できない。
浜田聡という人物 「政治家=職業」ではなく「役割」
浜田氏の経歴は異色である。京都市出身で、東京大学教育学部から一転して医学部再受験という道を選び、京都大学医学部を卒業。青森県や岡山県など地方で医療に従事した後、不動産賃貸業を営みながら政治の世界へ入った。公設秘書も政党交付金も極力使わず、無駄を排した議員活動を貫いてきた点も異彩を放つ。
所属政党の変遷は「NHKから国民を守る党」から始まり、「政治家女子48党」「みんなでつくる党」など党名変更を経て、現在は新たに設立した政治団体の代表を務めるなど、常に“場”を模索する政治姿勢も特徴的だ。
政策スタンスも独特で、NHK問題や医療、ワクチン推進といった分野だけでなく、共産党の非合法化提案や緊急事態条項の導入、核武装検討の是非まで踏み込むタフな論者でもある。その言説が支持を集める一方で、激しい反発も生んだ。
だが、浜田氏にとって政治とは“職業”ではなく、“役割”に近いのかもしれない。組織の看板に頼らず、SNSと政策で戦うという姿勢は、今後のポスト政党時代のひとつの原型と評価する声もある。
今後の動向に注目集まる
浜田氏自身は今後の活動について明言していないが、支持者の間では衆議院選への再出馬や、政策研究・情報発信を継続してほしいという声が絶えない。XやYouTube、ブログでの活動は今後も続ける意向とみられ、インターネット上の“第3の政治空間”での存在感は依然として大きい。
「国会に戻ってきてください」──SNSにはそんな言葉があふれている。