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生活保護費減額は違法と最高裁が初判断 今後どうなる?不正受給対策や制度改革の行方を解説

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初の統一判断、生活保護減額に“違法”判決

生活保護の最高裁判決

6月27日、最高裁判所第3小法廷(宇賀克也裁判長)は、2013〜15年に国が実施した生活保護費の減額措置について、生活保護法に違反すると認定した。全国29都道府県で1000人以上の受給者が起こしていた同種訴訟について、初の統一判断で「減額は違法」とする結論を示した形だ。

対象となったのは、厚生労働省が導入した「ゆがみ調整」と「デフレ調整」の2つの手法である。ゆがみ調整は、生活扶助基準に一般低所得層の消費実態を反映させるとして約90億円の削減をもたらした。デフレ調整は、物価下落を反映させて約580億円の削減を見込んだもので、総額670億円に上る生活保護費の引き下げが行われていた。

 

地裁・高裁で割れた判断に最高裁が決着

これまで地裁や高裁では、減額を違法と判断した例が27件、適法とした例が16件と意見が分かれていた。今回の最高裁の判断によって、違法判断が全国の訴訟に波及する見通しが強まった。

上告審の対象となった2件では、大阪高裁が国の判断を追認していたのに対し、名古屋高裁は減額を違法と認定し、1人あたり1万円の損害賠償も命じていた。判例の分裂状態に終止符が打たれたことで、国の生活保護制度設計に大きな転換点が訪れる。

 

SNS上では賛否両論 不正受給や制度の甘さへの不満も

今回の判決を受け、X(旧Twitter)をはじめとするSNSでは、生活保護制度に対する賛否が噴出している。

「本当に困っている人を守るのは当然だが、不正受給が多すぎる」「保護を受けていた方が働くより得になる設計はおかしい」といった声が相次いでいる。中には「外国人の受給に納得できない」といった排外的な意見もあり、制度の公平性や持続性に疑問を抱く層が一定数存在することが浮き彫りとなった。

一方で、「納税者が疲弊している今こそ、弱者を切り捨てない判断が必要」「生活実態に即した支援に戻るべきだ」といった支持の声も見られ、制度への信頼と不満が交錯している状況だ。

 

今後どうなる?想定される3つの展開

今回の判決によって、今後の制度運営には大きな影響が出ると見られる。想定される主なシナリオは次のとおりだ。

第一に、制度の見直し手続きがより慎重になり、厚労省が第三者機関の意見や生活実態調査などを制度設計に反映する方向へと舵を切る可能性がある。透明性と法的安定性を担保することで、同様の訴訟リスクを回避する狙いがある。

 

第二に、限られた予算のなかで既存受給者の保護を優先する代わりに、新規申請の審査を厳格化する方針が強まる可能性がある。「入口を狭めて総量を抑える」手法により、制度の維持を図ろうとする動きが現実化する恐れがある。

第三に、生活保護制度そのものが政治争点となり、分断が深まるリスクもある。SNSや一部メディアを通じた「働かない者への嫉妬や怒り」が社会に広がれば、更新制や外国人排除などの過激な提案が支持を集める可能性も否定できない。

 

日本の貧困と財政の狭間で 未来世代をどう守るか

日本は今、少子高齢化と実質賃金の停滞によって着実に“貧しい国”へと向かっている。そんな中で、生活保護制度が果たすべき役割とは何か。その問いは、単に困窮者を支えるという視点にとどまらず、未来世代に何を残すかという国家の哲学に直結する。

現行制度は、確かに苦しむ人々を守る一方で、「働かない方が得」と感じさせてしまう逆インセンティブも内包している。生活保護の一部を現金ではなく、食料や医薬品などの現物支給に切り替えることで、目的外使用や不正な転売の防止が期待される。

 

また、就労を始めた場合に急激に保護費が打ち切られるのではなく、段階的に支援を減らしていく制度設計にすることで、働く意欲を削がない配慮が必要だ。

同時に、医療費の過剰給付や処方薬の横流しといった“制度に巣くう寄生”への対策も急務である。制度を正しく使っている人たちを守るためにも、悪用や不正には厳格に対処すべきだという意識が社会全体に求められている。

 

守るべきは「いま」だけでなく「これから」

生活保護は、困っている人を一時的に救済する仕組みであると同時に、その国がどれだけ人間の尊厳を重視しているかを示す“鏡”でもある。しかし、その制度が未来の子どもたちを犠牲にして成り立っているのであれば、それは正義とは言えない。

制度を守ることと、未来を守ることは、ときに相反する。だが、制度改革の知恵と設計力次第で、その両立は不可能ではない。今回の最高裁判決は、制度の正当性や行政の裁量を問うだけでなく、私たちがこれからどのような社会を築きたいのかを突きつける問いでもある。

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寒天 かんたろう

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ライター歴26年。月刊誌記者を経て独立。企業経営者取材や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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