“たった一度の賭け”が、若き人気スターのキャリアを大きく揺るがせた

「まさか、あのJO1の鶴房が……」
東京・渋谷。ライブ帰りの女子高校生たちがスマートフォンを見つめ、ざわつく声が交錯する。
6月中旬のある午後。鶴房汐恩──人気グローバルボーイズグループ「JO1」の中心メンバー──が、警視庁に賭博の疑いで書類送検されたというニュースが報じられた。
鶴房氏は、日本国内から海外のオンラインカジノサイトにアクセスし、違法に賭博を行った疑いがもたれている。
警視庁によると、2025年に入り本人への任意の事情聴取を重ねており、書類送検はその結果とされる。容疑は一件44万円相当とされるが、過去には「1500万円近くを使っていた」との報道もあり、単なる一時の過ちでは済まされない構図が浮かび上がる。
「知らずに違法」では済まされない 蔓延する誤認広告の実態
オンラインカジノは、たとえ運営元が海外で合法であっても、日本国内からアクセスして賭博を行えば明確に違法である。
だが現実には、「海外で合法だから問題ない」「日本では摘発されない」といった誤情報がSNSや検索広告を通じて蔓延している。
実際に、X(旧Twitter)やInstagram上では、「ベラジョン」「カジノシークレット」といったオンラインカジノ業者が、アフィリエイト報酬付きで利用者を誘導する投稿を日々拡散。中には著名インフルエンサーが「合法的にお金が増える」などと謳い、クリックさせる例も少なくない。
2025年6月3日、与野党はこうした実態を受け、ギャンブル等依存症対策基本法の改正案を衆院で可決。法案では、
- オンラインカジノサイトの運営そのものを違法とし、
- サイトやアプリの広告、SNS投稿による誘導も罰則付きで規制する。
警視庁関係者は、「“知らなかった”では済まされない。違法である認識を持たずアクセスする若者が増えており、厳正な対応が必要だ」としている。
「ガバナンスはどこに?」事務所の危機管理対応に疑問の声も
今回の事案に対して、JO1の所属事務所は2025年5月にオンラインカジノの利用を認めた上で、わずか10日間の活動自粛措置を発表。その後、6月10日には「本人の反省」を前提に活動再開としていた。
しかし、書類送検が明らかになったことで、ネット上では事務所の対応を疑問視する声が相次いでいる。
「不起訴も確定していないのに勝手に活動再開?」
「ただの“連休”やん」「罰金で前科つくのに10日で済ますの?」(SNS投稿より)
さらに、同じ事務所では以前、結婚詐欺疑惑のタレントを擁護する対応を行ったとして、コンプライアンスの軽視が指摘されていた経緯もある。
ガバナンス不全が繰り返されているのではないか──その問いかけが、ファンの間でも共有されつつある。
ファンに届いた謝罪と、その向こう側
活動自粛の発表当時、鶴房氏は次のようにコメントしていた。
「この度は本当に申し訳ございませんでした。情けないことをしたと大いに反省しています。
これからの僕の生き様で必ず信用を取り戻してみせます。関係者の皆様、JAMの皆様、本当に申し訳ございませんでした。」
心のこもった謝罪と受け取るファンも多い。一方で、法的処分の前に復帰したタイミングに対し、「信頼の回復」を軽んじたとの受け止めが出ているのも事実だ。
依存症・若年層・SNS…オンラインカジノ問題の本質はどこにあるのか
本件を一過性の芸能スキャンダルと捉えるべきではない。
警視庁は改めて、「オンラインカジノは違法であるだけでなく、ギャンブル依存症の引き金ともなりうる」とし、社会全体での啓発や対応の必要性を強調する。
JO1のような影響力のある若者アイコンが関与することで、違法性への認識が薄れ、模倣するリスクも指摘されている。
鶴房氏の問題は、単に「法を犯した有名人」ではなく、**日本におけるデジタル時代のギャンブル規制、SNS広告、芸能界の危機管理体制が複雑に交差する“社会課題”**として受け止める必要がある。