
とんねるず・石橋貴明氏(63)に対する性加害疑惑が、フジテレビの第三者委員会による調査報告書により浮き彫りとなった。4月9日に『週刊文春』が報じた内容によれば、被害を訴えた女性社員は「トイレから戻ると、A氏ら男性スタッフは忽然と姿を消しており、有力番組出演者と二人きりにされた」と証言。地下の個室で石橋氏から下半身を露出されるという行為に至ったとされる。
この一件は、2021年12月の中居正広氏と元アナウンサーX子さんの「スイートルームの会」などと並び、第三者委が「重要な類似事案」として報告書に記載した事案のひとつである。
置き去りは偶然ではなく、構造だった
当該の女性社員が語った証言により、フジテレビ内部で黙認されていた“置き去り”という慣習が、単なる偶発的な出来事ではなく、意図をもって設計された環境だった可能性が高いことが明らかとなった。
女性がトイレに立ったのは数分間という短時間であった。だがその隙にA氏らは荷物をまとめ、手際よく退出。石橋氏と女性社員だけを密室に残した形となった。報告書はこの構図について、〈計画性と常習性を感じさせる〉と指摘している。
こうした“密室”の演出には、過去の複数の事案と通底する構造がある。例えば中居氏が関与した「スイートルームの会」においても、参加女性の選定が編成幹部主導で行われ、空間が意図的に閉じられた状態へと移行していた。番組制作という業務の延長線上に見せかけながら、事実上、女性アナを無防備な状態に置く仕組みが構築されていた。
調査報告書はこの“置き去り”の手法について、〈女性社員を危険から守ることよりも、有力な番組出演者への配慮を優先させるA氏の思考パターンを示している〉と、強く批判している。
SNSの反響 失望と怒りが拡散
この報告を受け、SNS上には石橋氏やフジテレビに対する厳しい声が溢れた。
「“芸能界のノリ”で済まされる話じゃない」
「昭和の悪しき遺産を今さら掘り返してるのではなく、“今も”変わっていないことが問題」
「女性を囲って逃げるって、これはただの人権侵害」
中には石橋氏の療養中の身を気遣う声もあるが、圧倒的多数は被害者への共感を示し、「芸能界とテレビ業界の構造に切り込むべきだ」との意見に集約されつつある。
石橋×A氏 過去と現在をつなぐ時間軸
石橋氏とA氏両者は2014年3月に終了した『笑っていいとも!』において接点を持ち、A氏は当時チーフプロデューサーを務めていた。石橋氏はその終了直前にレギュラーとして加わり、番組最後の花を飾った人物として記憶されている。
この接点からわずか数カ月のうちに、「石橋氏との会食」として女性社員が誘導される構図が出現する。過去の信頼関係が、いつの間にか閉じた空間を作り出すための“装置”として利用されていった事実は、メディア業界における人間関係の危うさを象徴している。
「会長案件」だったとんねるずと、引き継がれた文化
石橋氏が所属する「とんねるず」は、1980年代から1990年代にかけてフジテレビの“顔”として絶大な人気を誇った。その人気の背後には、当時編成局長だった日枝久氏の影響力がある。石橋氏自身も日枝氏の後ろ盾を受け、ゴルフや私的な場でも親交を深めていたことが過去の報道でも明かされている。
その日枝氏のもとで出世したのが港浩一氏、そして港氏の部下にあたるのが今回のキーパーソンであるA氏だった。
フジテレビの第三者委が指摘する「文化的な継承」とは、まさにこの系譜を指している。旧来の芸能界的体質、女性軽視、タレント優遇といった“テレビの論理”が、変革されることなく残存していたことは、報告書を読めば明らかだ。
テレビ業界の未来へ向けて
現在、石橋氏は食道がんの治療に専念するため、芸能活動を休止している。報道が公になった今もなお、本人や事務所からは沈黙が続いている。だが、“破天荒”の名のもとに許されてきた言動が、誰かを深く傷つけた可能性がある以上、番組出演者としての責任、あるいは社会的立場にある人間としての説明責任が求められるのではないか。
「楽しくなければテレビじゃない」――かつてフジテレビが掲げたそのキャッチコピーが、今、最も空しく響いている。