
SNSで高収入をうたって女性を勧誘し、風俗店に送り込む違法スカウトグループ「アクセス」が、警視庁の徹底捜査により摘発されている。5年間で約70億円もの収益を上げたそのビジネスモデルは、女性を商品のように扱い、逃げられない状況を作り出す巧妙な手口を用いていた。悪質ホストとの関係性も明らかになり、風俗業界全体に波紋を広げている。
本記事では、「アクセス」の違法な手口、警察の摘発の狙い、今後の規制強化の可能性について詳しく解説する。
風俗スカウト「アクセス」の違法ビジネスモデルとは
違法スカウトの仕組み
「アクセス」は、SNSを利用して「高収入バイト」として女性を勧誘し、個人情報を収集。その後、全国の風俗店と繋げ、オークション形式で女性を派遣する違法な手口を確立していた。女性のプロフィールや写真、年齢、バストサイズなどの情報を各店舗に提供し、最も高い報酬を提示した店へ斡旋するシステムだった。
さらに、店舗側とは「売上に応じた紹介料契約」を結び、女性の報酬の約15%を受け取る形で収益を上げていた。紹介料の回収方法は巧妙で、直接銀行振込を避けるため、現金をレターパックで「バーチャルオフィス」に郵送させる仕組みを構築。資金の流れを追跡しにくくするための徹底した工夫が施されていた。
「ネズミ講式」組織拡大の手口
このグループは、いわゆる「ネズミ講式」の手法でメンバーを増やしていた。スカウトは新たに仲間を勧誘することで、自身の報酬が上がる仕組みを採用。新規スカウトが女性を派遣するたびに、上位スカウトにも報酬の一部が支払われるピラミッド型の収益構造となっていた。
この構造により、組織は急速に拡大。スカウトは全国で約300人に達し、関与した風俗店は全国350店以上に及んでいた。特に、若者をターゲットにし、「スマホ一台で稼げる」「月収100万円以上可能」といった勧誘文句を使用。大学生や20代の若者を中心に大量のスカウトを集めていた。
トップクラスのスカウトになると、月収600万円を超える者もおり、まさに違法ビジネスとして確立されていた。収益の拡大を目的として、スカウトを3つのチームに分け、競争を煽ることで営業成績の向上を図るなど、組織的な戦略も巧妙だった。
女性たちを逃がさない脅迫と搾取の実態
ホストクラブとのつながり
「アクセス」の違法行為が発覚したのは、ホストクラブとの関係が明るみに出たことがきっかけだった。2023年11月、歌舞伎町のホストクラブで多額の売掛金を抱えた女性が警視庁に相談。ホストから「消費者金融で借金をして返済しろ」と迫られたことをきっかけに、捜査が進んだ。
この過程で、「アクセス」がホストを通じて女性を風俗店に派遣していた事実が判明。ホストクラブの客である女性に借金を負わせ、返済の手段として風俗店での勤務を強要する手口が浮かび上がった。ホストとスカウトが結託し、女性を意図的に経済的困難に追い込み、逃げ場のない状況を作り出していた。
逃げられない仕組み
また、「アクセス」のスカウトは、女性が風俗店から逃げることを防ぐために様々な脅迫も行っていた。女性の個人情報や写真を握り、「逃げたらSNSで写真を拡散する」と脅迫。さらに、風俗店から脱出しようとした女性に対し、執拗に連絡を取り続けるなどの嫌がらせを行っていたという。
加えて、違法行為がバレないように「摘発逃れマニュアル」を作成し、LINEを通じてメンバーに共有。「未成年者の斡旋はリスクが高い」「脅迫や薬物使用は摘発対象になる」など、警察の動きを先読みした行動マニュアルが存在していた。摘発を逃れるための入念な対策が施されていたことが、捜査の過程で明らかになっている。
被害女性の中には、精神的に追い詰められ、風俗店での仕事を辞められずにいたケースも多い。ホストクラブでの借金、スカウトによる脅迫、さらには逃げ場のない状況を作られ、強制的に風俗業へと送り込まれるという悪質な実態が浮き彫りになった。
警察の調査によると、こうした違法行為に関与した風俗店は全国に広がっており、岐阜・埼玉・東京などの複数のソープランドが摘発されている。今後、さらに関係する店舗や関係者への捜査が進む見込みである。
警視庁による徹底摘発の動き
特別捜査本部の設置と捜査強化
警視庁は2024年1月、生活安全部で16年ぶりとなる特別捜査本部を設置。約70人の捜査員を動員し、「アクセス」の全容解明を進めている。これまでにグループ幹部を含む10人以上を摘発した。
風俗店やホストクラブの摘発強化
警視庁は違法スカウトだけでなく、彼らが女性を派遣していた風俗店やホストクラブの摘発も強化。岐阜県、埼玉県、東京都など全国各地で売春防止法違反に関わる逮捕者が続出している。
今後も捜査は続き、「アクセス」だけでなく、同様の違法スカウトグループへの取り締まりも強化される見込みだ。
まとめ
「アクセス」による違法スカウトビジネスは、女性を搾取し、風俗業界とホストクラブの犯罪ネットワークを支えていた。警視庁の大規模な摘発により、その実態が明らかになりつつある。今後、法規制の強化やさらなる摘発により、同様の違法ビジネスモデルの根絶が求められることだろう。