なぜ独裁が40年も続いたのか」米ファンドが異例の批判
フジテレビをめぐるガバナンス問題で、大株主の米国投資ファンド「ダルトン・インベストメンツ」が3日付で、フジテレビおよび親会社フジ・メディア・ホールディングス(以下フジHD)の取締役相談役・日枝久氏(87)に辞任を要求する書簡を送付したことが朝日新聞によって4日に報じられた。
米ファンドが取締役個人に対してここまで強い言葉で辞任を求めるのは異例。書簡では、日枝氏が「取締役会に完全な支配力を持ち、企業統治が機能不全に陥っている」と厳しく指摘。「なぜ1人の独裁者が40年近くも、この巨大放送グループを支配することが許されてきたのか」と疑問を投げかけている。
フジテレビの「最高権力者」はなぜ辞めない?
日枝氏は1980年代からフジテレビの経営を掌握し、現在もフジHDとフジテレビの取締役相談役を兼務する。過去には代表取締役会長、CEOも務め、フジサンケイグループの頂点に君臨し続けている。
フジのガバナンス問題が表面化するきっかけとなったのは、元タレント・中居正広氏をめぐる騒動だ。この問題を受け、フジテレビの嘉納修治会長(74)と港浩一社長(72)が1月27日に辞任。しかし、日枝氏は依然としてその座にとどまり、影響力を保持しているとみられる。
SNS上では、「スポンサーが戻るための最低条件は、日枝氏がフジサンケイグループ代表を辞めること」といった声が相次ぎ、「仮に辞任しても、子飼いの幹部を通じて影響力を行使し続けるのでは」と懐疑的な意見も多い。
スポンサー離れと株主の不満…経営刷新は避けられないのか
フジHDの大株主である東宝(7%保有)や、文化放送、NTTドコモ(いずれも3%強保有)も、フジの経営問題について厳しい意見を述べ始めている。特に東宝は、「事実関係の調査など適切な対応を求める」と異例の声明を発表。これまで経営陣に強い支持を示していた株主の一部も、方針を転換しつつある。
テレビ業界の危機を語る上で、スポンサー離れは避けられない話題だ。CMの売上が主要な収益源である放送局にとって、スポンサーの信頼を失うことは致命的である。業界関係者の一人は、「このままでは10年は立ち直れない」と危機感を示している。
支配者交代はクーデター方式?フジの歴史が示す異常事態
フジテレビの歴史を振り返ると、経営トップの交代は常に「権力闘争」によって決まってきた。1960年代、フジの創業者である鹿内信隆氏が実力で経営権を掌握し、以降も後継者争いが絶えなかった。1992年には鹿内宏明氏が社内クーデターで失脚。その後、権力を握ったのが日枝氏だった。
「フジには円満な世代交代が存在しない」と言われるほど、過去の支配者は例外なく敗れ去ってきた。今回の混乱を受け、内部から「日枝氏を退陣させる動きが水面下で進んでいる」との情報も流れている。
「このままでは10年は回復不能」 業界関係者が語る危機感
フジテレビの問題は、単なる一企業の内紛ではない。米ファンドの圧力に対し、「外国勢力による日本の放送局への干渉」として警戒する声もある。放送法には、外資規制により外国人株主の影響力を制限する規定があるものの、現実にはダルトンのような投資ファンドが経営に強い発言力を持つことが可能になっている。
1990年代、テレビ朝日が「椿発言問題」でイメージ回復に10年以上を要したように、フジテレビのブランド回復にも長い時間がかかる可能性がある。
現在のフジの状況が続けば、「経営刷新を求める声は今後さらに強まる」との見方が大勢を占めている。
日枝氏の今後の動向に注目
過去に幾度となく「支配者交代」の局面を乗り切ってきた日枝氏。しかし、今回はこれまでとは状況が異なる。世論の反発、スポンサー離れ、株主の圧力という三重苦に直面しており、「このまま続投するのは難しいのでは」との指摘も増えている。
今後、フジテレビはどのような道を選ぶのか。日枝氏が辞任を決断するのか、それともさらに混乱が深まるのか。放送界の行方を左右する一連の動向から目が離せない。
ダルトンの要求を呑んで日枝氏に引き下がってもらう形をとるよりは、フジテレビ内部の社員からの声が大きくなることで、自主的に日枝政権を引きずり下ろす方が、フジテレビの信用回復は早いように思えるがどうだろうか。