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政府備蓄米、フードバンクへ無償交付開始支援対象を拡大、貧困家庭や子ども支援に寄与 海外は?

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政府備蓄米、フードバンクへ

農林水産省は2025年2月から、フードバンクに対して政府備蓄米の無償交付を新たに開始すると発表した。これまで子ども食堂や子ども宅食への交付に限定されていたが、今回の措置でフードバンクも支援対象に含めることで、広範な食料支援が可能になる。

米不足で困っていたフードバンク

フードバンクは、企業や個人から寄付された規格外品や余剰食品を集め、必要とする家庭や団体に無償で提供する活動を行っている。しかし、昨年以降の米不足や米価高騰が影響し、特に米の寄付が減少。支援活動の継続が難しい状況にあった。この現状を受け、農水省はフードバンクへの備蓄米無償交付を決定。団体の前年度食品取り扱い実績の5分の1以内で、最大50トンまで交付する方針を示した。

一方で、交付対象となる団体には条件が課されている。法人格を有し、1年以上の活動実績があり、地方自治体と連携していることが求められるため、小規模で法人格を持たない団体が支援を受けられない可能性がある。この点については、さらなる運用改善が必要だとの指摘がある。

配布先は子ども食堂

また、子ども食堂や子ども宅食への支援も拡充される。交付上限が従来の450キログラムから600キログラムに引き上げられるほか、申請手続きの簡略化が進められる予定だ。現場での手続き負担が軽減されることで、支援活動の効率化が期待される。

日本共産党や農民運動全国連合会(農民連)は以前から政府に対し、備蓄米の積極的な放出を求めてきた。農民連の藤原麻子事務局長は赤旗で、「法人格を持たない小規模団体への支援拡大も必要だ」と述べるとともに、「増え続ける困窮世帯に対応するためには、国が農産物を直接買い上げる形で安定的な食料支援体制を構築すべきだ」と訴えた。

海外の事例が示すフードバンク支援の可能性

フードバンク支援は、食品ロス削減や貧困対策の観点から、各国で重要な社会課題として取り組まれている。ここでは、日本が参考にできる海外の先進事例を紹介する。

アメリカ:全国規模のフードバンクネットワーク「Feeding America」

アメリカでは、「Feeding America」という国内最大のフードバンクネットワークが、年間約53億食を提供している。このネットワークは、200を超える地域のフードバンクと約60,000の食料配布プログラムを有し、製造業者や小売業者、農家からの寄付を一元的に収集して効率的に分配している。特に、連邦政府の「緊急食料支援プログラム(TEFAP)」を活用し、フードバンクの活動を支えている点が特徴的だ。

フランス:食品廃棄禁止法でロス削減を促進

フランスでは、2016年に「食品廃棄禁止法(Loi Garot)」が施行され、400平方メートル以上の大型スーパーマーケットが消費可能な食品を廃棄することを禁止された。この法律により、廃棄予定だった食品がフードバンクや慈善団体に寄付される仕組みが構築され、食品ロス削減と食料支援が同時に進んでいる。一方で、寄付を受ける団体側のキャパシティ拡大が課題として挙げられている。

イギリス:地域に根差したフードバンク「トラスティル・トラスト」

イギリスの「トラスティル・トラスト」は、地域コミュニティと連携しながらフードバンクを運営している。主に個人や企業からの寄付で成り立っているが、地方自治体がその活動を支援するケースも増えている。経済的困窮を背景にフードバンクの需要が高まっており、福祉制度の補完的役割を果たしている。

課題と日本への示唆

これらの事例は、フードバンク支援が持つ可能性を示すとともに、日本の制度設計における課題を浮き彫りにしている。例えば、アメリカのような全国的なネットワークの構築や、フランス型の食品廃棄禁止法の導入が議論されてもよいだろう。また、寄付を受ける団体の能力強化や、行政と地域コミュニティの連携を深める施策も重要だ。日本がこれらの教訓をどのように生かすか、今後の動向が注目される。

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寒天 かんたろう

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ライター歴25年。月刊誌記者を経て独立。伝統的な日本型企業の経営や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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