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吉備友理恵さん(日建設計) | #ソーシャルグッド雑談

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八木橋パチ プロフィール

「け…建築…建築アイドル??」

「そう。建築アイドル。そっか。私、パチさんに自分のことをちゃんと話したことなかったですね。じゃあ、私が『esquisse(エスキス)』という建築アイドルをやっていた頃のことから話しましょうか。
ちなみに、エスキスは建築業界用語で「設計のコンセプトやスケッチなどを壁打ちする機会」みたいな意味の言葉なんですけど、建築学科でなじみのある言葉で、音の響きがカワイイからそれを名前にしていました。」

「八木橋パチの #ソーシャルグッド雑談」第9回は、日本を代表する大手設計会社「日建設計」でイノベーションと共創を研究している吉備友理恵さんとの雑談です。

ソーシャルグッドな3人。吉備友理恵さん、我有さん、パチさん
(2024年6月29日 新大久保のタイ料理屋さんでお昼ご飯を食べながら)

写真左: 吉備 友理恵(きび ゆりえ)

神戸大学工学部建築学科卒業。東京大学大学院新領域創成科学研究科修了。2017年4月、日建設計入社。社内外のコラボレーションをデザインするイノベーションデザインセンターで活動。2022年、共創をステークホルダーの関係性から構造化していく方法を描いた『パーパスモデル』を出版。2023年、共創の場「PYNT(ピント)」を本社内に設立・運営。

写真中央: 我有 才怜(がう さいれい)

2017年メンバーズ新卒入社。社会課題解決型マーケティングを推進するほか、気候変動への危機感や市民運動への興味から国際環境NGOでも活動中。2023年4月1日、メンバーズ社内に開設された「脱炭素DX研究所」の初代所長に就任。IDEAS FOR GOODと共にWebメディア「Climate Creative」運営中。

写真右: 八木橋 パチ(やぎはし ぱち)

バンド活動、海外生活、フリーターを経て36歳で初めて就職。2008年日本IBMに入社。現在は社内外で持続可能な未来の実現に取り組む組織や人たちとさまざまなコラボ活動を実践し、取材・発信している。脱炭素DX研究所 客員研究員。WORK MILLにて「八木橋パチの #混ぜなきゃ危険」連載中。

我有

私も今日、この場所に来る前に「そういえば吉備さんって、学生時代は何していた人なんだろう?」と思って検索したんです。そうしたら「建築アイドル」が出てきてビックリしたところでした。

吉備

そうですよね。意味分かんないですよね普通(笑)。

でも、私としては大まじめに活動していたんです。当時は今よりももっと社会の建築やまちへの興味が薄いし、その本質が理解されていないと思って。

それで、私が東大院生で、相方が東京藝大で建築を学んでいたので、2人で「建築業界の魅力を発信して、建築と人を近付けよう!」という想いで活動をスタートしました。トレードマークは「頭上建築」でした。

esquisse | TEDxYouth@Kobe
パチ

Wow! これは強烈…。想像のはるか上に来られた感じ。634メートルくらい上に。

吉備

634はスカイツリーですね。この頭上建築は神戸ポートタワーなので108メートルです。
2013年くらいから、その後2018年頃までエスキスで活動していました。

当時、建築分野のキュレーターとしてさまざまな人や組織をつなぐ仕事で起業しようと考えていたんですが、私たち「を」ビジネスに使いたいという話はきても、私たち「と」ビジネスをしたいという話はなかなか見つけ出せなくて。

それで、私は力を磨くためにいったん就職しようと考えて、日建設計に入社しました。
私、最初は日建設計のことがそんなに好きではなかったんですよ。

しかし、苦手意識があるなら実際働かないと失礼、と思ってインターンに行ったら、「きびちゃんのやりたいことはNADじゃない?」と、建築設計の前のコンセプトの企画から運営までを行う新規事業チーム「NAD室(Nikken Activity Design Lab.)現:コモンズグループ」を紹介されて。

それがまさに私がやりたいことを属人化せず体系化した知見で行っていたチームだったので、「このチームで働きたい!」と思ったんです。

そのときは建築ポートフォリオももちろん作っていたのですが、学生団体やアイドルとしての活動などを写真集にして、面接に持ち込みNAD室を志望して、「私はここに居るべきだ!」って売り込んだんです。

結果、新卒採用はしていないチームだったんですけど、無事採用となりました。

実際、学生時代に見えていた日建設計のイメージは表層的で、共創に取り組む今、その技術や経験の奥深さや、社員の公共心の高さに気付かされて、今では会社が好きになっています(笑)。

我有

すごい。私は「日建設計の吉備さん」しか知らなかったけど、そんな歴史があったんですね。今、当時の頭上建築たちはどうなっているんですか?

吉備

家の倉庫にひっそりと眠っていますよ〜。

八木橋パチ プロフィール

パチの心の声

先ほどこの原稿を書くにあたり、吉備さんのアイドル時代のインタビュー記事などをいくつか読んだのですが、人当たり良く周囲を楽しませて敷居を常に低く保つ一方で、がっつり話しだすと本質的な部分にバンバン切り込んでいくというスタイルは、きっと生粋のものなんだろうなと思いました。
そして吉備さんの魅力について考えると、常にそうした二面性というかギャップのようなものがチラついているような気もしました。
我有

「パーパスモデル」はさまざまなプロジェクトや事業に関与するステークホルダーを分類し、それぞれの役割と目的の重なり合いを可視化していくツールですよね。

あのアプローチは他にはないもので、私の周囲でも活用しようと考えている人たちがいます。

パチ

おれもnoteで初めて見たたとき衝撃を受けて、それで「書籍化しないんですか?」みたいなことを当時のTwitterか何かでメッセージしたのが吉備さんとのファーストコンタクトだったんだよね。

プロジェクトの進化と関係性の変化をパーパスモデルで定期的に可視化していくことで、プロジェクト頓挫を防いだり、共創の質を上げていったりできそうだなって思って。

吉備

そうなんですよね。共創って、耳当たりは良い言葉だけど、実際に良い形で進めていくのって難しいんですよね。

その難しさにはいくつかの大きな要因があると思っているんですけど、そのうちの1つにはそれぞれの参加者たちの想いや役割がしっかり共有されず、ふわふわしたまま進んでしまうことが多いせいだと思うんです。

パーパスモデルの利点の1つは、それを基にステークホルダーの話し合いを活性化できることだと思います。

パーパスを中心とした共創プロジェクトの設計図
パーパスモデル | パーパスを中心とした共創プロジェクトの設計図
我有

プロジェクトを進めていると、どうしても結果である「アウトプット」に意識が向きがちですよね。

私はワークショップデザイナーで、ワークショップのファシリテーションをすることも多いのですが、デンマークでフューチャーズ・デザイナーをやっている友人から聞いた「プロセスを信じよ!」という言葉を大事にしています。

結果と同じくらいそこに至るプロセスも大事だし、むしろ真価はそこにあるということも少なからずあるよ、と。

パチ

さっきの吉備さんの「ちゃんと理解する前はつまんねえと思っていた」…って話にも通ずるところがあるね。そして吉備さんがずっと研究し続けている「イノベーション論」みたいなところにも関係する話だとも思う。

多くの人が「アウトプットとしてのイノベーション」にばかり目を取られがちだけど、そこに至るまでにいろいろと大切なものがプロセスの中で生まれていませんか? ってね。

吉備

それから、これはとりわけ営利組織が入った場合ですが、「共創は手間がかかるし稼げないじゃないか」みたいな意見がプロジェクトや事業の進行を止めてしまうこともあります。

これって、マインドの持ち方だと思っていて、収益モデルももちろん大事なんですが、課題が複雑化する中で「一社ではできないことに取り組めることに価値がある」という想いを共有し、どうしたら事業として成り立たせられるか? を試行錯誤する必要があると思います。

私の場合、パーパスモデルの活動を通じてそういう構造がはっきり見えてきたからこそ、次のステップとして、共創ステークホルダーの関係性を生み出し育てていくための「PYNT」という場づくりをしているのかもしれないですね。

我有

実は私、まだPYNT行けていないんですよ…。昨年のイベント参加もオンラインからだったので。早く行きたいです。

吉備

ほんとですよ! 我有さん早く来てくださ〜い。

昨年のPYNTでのイベントの様子
昨年のPYNTでのイベントの様子 | B Corp認証のこれまでとこれから | ハーチ株式会社編 イベントレポ―ト
吉備

もちろん、PYNTができただけであらゆる物事が好転し始めるほど単純な話ではないのだけれど、それでも、人間の活動により生みだされる「社会環境」をどうすれば理想的な方向へと近づけられるのかを、みんなでオープンに試行錯誤できることはとても重要だと思うんです。

今って、「市民は提供されるものを受け入れて利用するか、消費するか、の二択」とか、「金を出す人が意思決定者である」とか、そんな感じに思い込まされているじゃないですか。

でも、私たち一人ひとりは、誰もがバコーンと稼ぎたいと思っているわけじゃない。

「意思ある主体者」として、ちょうどいい暮らしを「コモニング」したい——共有物として作りたい——と思っている人も多いのではないでしょうか。

経済価値だけでない様々な価値交換も織り込んでいく、ちょうどいいルール作りやガバナンスを見つけ出したいですね。パーパスモデルのように、ある程度の仕組み化や方法論化はできると思うので。

八木橋パチ プロフィール

パチの心の声

おれはオフィスで仕事するのが嫌いなのですが、その一番の理由は、オフィスが「社会と分断されている感じ」がするから。
その会社に所属している人だけが集まり、会社の独自ルールをさも「正解」であるかのように振る舞わなければならない——。そんな空気が場を支配しているような気がして、とても居心地が悪いのです。
その点PYNTはすごい!! 会社の中に社会を入れ込んでいます。「すぐそこ」にまで社会との接点が侵出していることで、会社が絶対でも正解でもないというメッセージが常に発信されています。
というわけでおれはPYNTの大ファンで、いつでもPYNTを利用できる「PYNT MEMBERS」という共創パートナー登録をしてもらっていて、月に1度はPYNTでのイベントや飲み会に参加しています。
そしてもう一つ特記しておきたいのは、PYNTに行くたびに、毎回必ずおもしろい日建グループの社員と出会うということ。正直、日建設計のイメージがガラッと変わりました(って、昔の吉備さんと同じですね!)。
日建設計の東京本社ビル内に設けた共創プラットフォーム
PYNT | 日建設計の東京本社ビル内に設けた共創プラットフォーム
我有

吉備さんのアプローチを変化させていくスタイルはすごく興味深くって、これから先どう変わっていくのかにも興味津々です。ご自身では10年後「何もの」になっていると思います?

吉備

何もの…えー(笑)、10年後はわからないなあ。でも、今もやっている「引っ張り役」であることはあんまり変わらないんじゃないかと思います。

ただ、引っ張ると言っても「前に」ってことだけじゃないです。横に引っ張ったり、ときには後ろに引っ張ったり。プロジェクトに引力をあちこちからかける、そんな引っ張り役です。

だって、前にばかり引っ張っていると、プロジェクトそのものも引っ張る側も、結果に捉われてしまいがちになって、「閉じて」しまいがちになるじゃないですか。

だから私は、関わりどころが常に開いて広がっていくように、情報や関係性が閉じてしまわないように、常に開き続けているように引っ張ります。可能性も閉じてしまわないように。

パチ

「横に引っ張る」か。なるほどなぁ。もしかしたら、おれがやっていることもそういうことなのかも。ところで、5年後も吉備さんは日建設計にいると思う?

吉備

それも分からないですね。ありたい未来へ近づくための取り組みをしっかりできている今の環境はすばらしくて、これを変えたいとは思っていないけれど、その環境がいつまでもあるかは分からないじゃないですか。

我有

すごく分かります。私も、やりたいことと自分の強みが重なるところで仕事ができるよう、メンバーズが支援してくれているのを感じているからやっていけているけど、その体制が変わってしまったらきっと…。

パチ

うん。それはおれも同じ。そっか。おれたちってこう見えても案外と似てるところがあるんだね!

八木橋パチ プロフィール

パチの心の声

お店を出て、駅の方へとぶらぶら歩きながら、吉備さんが「去年パチさんがプロデュースしたPYNTでのB Corpイベント、あれは私にとっては結構衝撃的だったんですよね。全員知らない人ばっかりで始まった『ゆるゆる』な準備の進め方でも、骨子と進行がしっかりと固まり、全員が一丸となって当日を迎えられるようになるなんて思ってもいなかったから。」と、去年の思い出話をしてくれました。
自分でも「あれは素晴らしいイベント・デザインだった」と思い出すたびに誇らしく感じるものだったので、吉備さんに改めてそう言ってもらえてすごく嬉しかった。そしてこの雑談を経て、「あれはやっぱり、おれが大好きで信用していて、一緒に何かを共創したくてたまらない人たちとやったイベントだったから、あんなステキな結果につながったんだな」と改めて思いました。
我有さんも吉備さんも、またよろしくね!

さて、それじゃぁ次は誰と雑談しに行こうかな?

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ライター:

バンド活動、海外生活、フリーターを経て36歳で初めて就職。2008年日本IBMに入社し、社内コミュニティー・マネージャー、およびソーシャル・ビジネス/コラボレーション・ツールの展開・推進を担当。持続可能な未来の実現に取り組む組織や人たちと社内外でさまざまなコラボ活動を実践し、記者として取材、発信している。脱炭素DX研究所 客員研究員。 合い言葉は #混ぜなきゃ危険 #民主主義は雑談から #幸福中心設計

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